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BL版権物の二次創作ブログです。現在『メイド*はじめました』で活動中です。
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自己紹介

  名前:うさこ
  萌属性:血縁、年の差、アホ子受、ワンコ攻
  好き:甘々、主人公総受け
  嫌い:イタい子
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「は? いま羽田って……それは……どういうことですか、お母さん」
周平は、勤務中に掛かってきた、唐突な電話の内容に、携帯電話を握ったまま、思わず固まった。
現在母親は、福岡に転勤になった父親と一緒に九州にいるはずだ。
それが何の連絡もなく、突然「羽田に着いたから迎えに来て」だから、周平が驚くのも当然だった。
『だって、周平のマンション、母さん行ったことないんだもん、場所が分らないの。だから迎えに来て』
そのすねた口調から、ぷっと頬を膨らませる母お得意の表情が、電話口から見えるようだった。
周平は頭痛をこらえるように、額に手をあてると、大きくため息をついた。
「お母さん……俺は仕事中なんです、迎えにはいけません。とりあえず、タクシーで池袋の天国屋本社まで来てください……いくらお母さんでも、空港を出てタクシーを拾うぐらいは、自分できるでしょう?」
これ以上、電話で問答しても埒が明かないと思った周平は、早々に話しを切り上げ「本社に着いたら受付で自分を呼ぶように」と念を押して通話を切った。
*
なぜ突然こちらに戻ったのか、一人で来たのか、泊まる場所はどうするつもりか……。
問い質したいことは山ほどあったが、母親から詳しい事情を聞きだすのは、仕事を終えた後になりそうだった。
今日は12月24日。
周平と裕太が二人で暮らし始めて最初のクリスマスイブは、母親の乱入によって、聖夜とは程遠い、騒がしい夜になりそうだった。
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春には満開の花を咲かせて、目黒川一体を薄桃色に染め上げる桜の木も、八月の今は、残暑の名残に大きく茂らせた緑の葉を、ただ静かに風にそよがせているだけだった。
その太い幹の根元に、幼い子供が一人、寄りかかって眠っていた。
複雑に隆起した根っこの狭間に、小さい体をすっぽりと収めて眠るその姿は、夕日に照らされて影を強くした街の中で、まるで桜の木の一部であるかのように、自然に溶け込んで見えた。
だから、迫る夕闇の中、家路を急ぐ人々が、そうして静かに眠る裕太の姿を見落としてしまっても、それは仕方が無いことだった。
ときおりビルの間を吹き抜けてゆく風が、裕太の所在を知らせるように、地面を覆った夏草を揺らしたが、その気まぐれな仕業も、足早に歩く人々の目を、裕太に向けさせることは出来なかった。
だから、そうして泣き疲れて眠っている裕太を、周平が見つけられたのは、本当に奇跡的な……それこそ、運命とも呼べるような偶然が、折り重なった結果だった。
(にーた……)
公園を出た裕太は、きょろきょろと辺りを見回すと、とりあえず目に入った中目黒保育園の方へと進んだ。
それは、自宅からも、裕太の通う祐天寺幼稚園からも離れてしまう、まったくの逆方向だったが、当然裕太にはそんなことは分らなかった。
そして、休日で門の閉められた保育園の前から、長泉院を通り過ぎ、四辻に出た裕太は、今度もまた、自宅や幼稚園に近い永隆寺方向ではなく、人の流れに乗せられるまま、それとは反対の山手通りの方へ角を曲がった。
*
消えてしまった周平を探がそうと、一人で街へ出た裕太だったが、いまや完全に道を失っていた。
しかし当の本人である裕太だけは、そのことに気が付いていなかった。
(誘拐、されたんだ……)
周平は自分が辿り着いた結論に、目の前が真っ暗になった。
裕太はまだ三歳になったばかりで、少し長く歩かせると、すぐに「抱っこ」「おんぶ」とぐずりだす甘えん坊だった。
そんな裕太が一人で、これほど探しても見つけられないほど、遠くへ行けるはずがなかった。
(俺が、目を離したから……俺が、裕太の手を離したから……)
周平は自分の軽率な行動がもたらした恐ろしい結果に、芯から体を震わせた。
あの幼い弟の身に、いま何が起きているのかを想像すると、全身から血の気が引いた。
周平は裕太が残した小さな砂山を前に、がっくりと膝を付いた。
(ごめん裕太……ごめん……)
紅に染り、人影の消えた公園で、周平は一人、肩を震わせた。
(ひょっとしたら一人で帰ったのかもしれない)
裕太の姿が公園内に見当たらなかったとき、まず一番最初に周平が考えたのはそのことだった。
中目黒にあるこのなべころ坂緑地公園は、祐天寺の自宅からは少し離れていたが、裕太が通う祐天寺附属幼稚園からは近かった。
ぐっと奥歯をかみ締めて不安に脈打つ心臓を落ち着かせ、周平は勤めて冷静であろうと努力した。
(裕太だって、もう今年の春から幼稚園に通ってるんだ、それぐらい出来ても不思議じゃない)
落ち着いてそう判断すると、周平はサッと身を翻して駆け出した。
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