BL版権物の二次創作ブログです。現在『メイド*はじめました』で活動中です。
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2007/11/30 (Fri)
(にーた……)
公園を出た裕太は、きょろきょろと辺りを見回すと、とりあえず目に入った中目黒保育園の方へと進んだ。
それは、自宅からも、裕太の通う祐天寺幼稚園からも離れてしまう、まったくの逆方向だったが、当然裕太にはそんなことは分らなかった。
そして、休日で門の閉められた保育園の前から、長泉院を通り過ぎ、四辻に出た裕太は、今度もまた、自宅や幼稚園に近い永隆寺方向ではなく、人の流れに乗せられるまま、それとは反対の山手通りの方へ角を曲がった。
*
消えてしまった周平を探がそうと、一人で街へ出た裕太だったが、いまや完全に道を失っていた。
しかし当の本人である裕太だけは、そのことに気が付いていなかった。
公園を出た裕太は、きょろきょろと辺りを見回すと、とりあえず目に入った中目黒保育園の方へと進んだ。
それは、自宅からも、裕太の通う祐天寺幼稚園からも離れてしまう、まったくの逆方向だったが、当然裕太にはそんなことは分らなかった。
そして、休日で門の閉められた保育園の前から、長泉院を通り過ぎ、四辻に出た裕太は、今度もまた、自宅や幼稚園に近い永隆寺方向ではなく、人の流れに乗せられるまま、それとは反対の山手通りの方へ角を曲がった。
*
消えてしまった周平を探がそうと、一人で街へ出た裕太だったが、いまや完全に道を失っていた。
しかし当の本人である裕太だけは、そのことに気が付いていなかった。
口をへの字に結び、泣きべそをかきながら一人で街をさまよう幼児を見て、当然声をかける大人が何人もいたが、裕太は決してその誘いには乗らなかった。
裕太は、迷子になった兄を自分が探してあげなくては、と言う使命感に燃えて、見知らぬ街を一人で歩き続けた。
初めて見る風景に不安がよぎれば、いや迷子になった周平のほうがもっと不安なはずだと、自分を励まし、一人ぼっちが寂しいと思えば、いや迷子になった周平のほうがもっと寂しいはずだと、自分を鼓舞した。
そして、もう歩けないと、弱音を吐きそうになると、周平の残していった青いパーカーを顔に押し付けて、その香りをかいだ。
そうしてしばらくじっとしていると、再び一歩を踏み出す力がわいてきた。
(にーた……いいこで、まってて)
*
山手通りに架かった大きな歩道橋を越えるのは、幼い裕太にとっては酷く勇気のいることだった。
長い階段は、空にまで続いているように高く見えたし、そもそも裕太は、階段を一人で上ったことが無かった。
転ぶと危ないからと、いつも誰かが手を引くか、抱っこをして上ってくれていた。
しかし、いま裕太は一人だった。
一人でこの山を越えて見せるしかなかった。
砦のようにそびえ立つ歩道橋を前に、裕太は周平のパーカーを握り締めて、怖気づいた心を奮い立たせた。
(ゆーた、がんばれ、ゆーた)
裕太はいつも兄がそうしてくれるように、自分の頭をくしゃくしゃとかき混ぜた。
そして、頭上にある手すりに手を伸ばし、小さな手のひらでは掴みきれないそれを、精一杯の力で握って、慎重に一歩づつ足を進めた。
*
やっとのことで歩道橋を渡りきって、山手通りを越えた裕太だったが、それでもうほとんどの力を使い果たしていた。
裕太は、西に傾いた太陽から逃れるように、歯を食いしばって、東へ東へと進んだが、それも目黒川に行き当たったところが限界だった。
裕太は目の前に架かった田道橋を横に避けると、とうとう、川岸に植えられた桜の木の根元にしゃがみ込んでしまった。
橋を渡って向こう側へ行く気力はもう残ってはいなかった。
おそらく、生まれてから一度も、これほど長く歩いたことは無かっただろう。
裕太の足はまるで茨を踏んだかのように痛み、しゃくりあげる声にも、もう力が無かった。
(にーた、かわいそう。きっと、ないてる……ゆーたが、みつけてあげなきゃ……)
裕太は膝を抱えて体を丸めた。
夏の間に伸びた下草が、その小さな体を覆い隠した。
(……ゆーたが、みつけてあげなきゃ……)
裕太の閉じた瞳から止め処もなく溢れる涙は、胸に抱きしめた周平のパーカーが、全て、吸い込んだ。
裕太は、迷子になった兄を自分が探してあげなくては、と言う使命感に燃えて、見知らぬ街を一人で歩き続けた。
初めて見る風景に不安がよぎれば、いや迷子になった周平のほうがもっと不安なはずだと、自分を励まし、一人ぼっちが寂しいと思えば、いや迷子になった周平のほうがもっと寂しいはずだと、自分を鼓舞した。
そして、もう歩けないと、弱音を吐きそうになると、周平の残していった青いパーカーを顔に押し付けて、その香りをかいだ。
そうしてしばらくじっとしていると、再び一歩を踏み出す力がわいてきた。
(にーた……いいこで、まってて)
*
山手通りに架かった大きな歩道橋を越えるのは、幼い裕太にとっては酷く勇気のいることだった。
長い階段は、空にまで続いているように高く見えたし、そもそも裕太は、階段を一人で上ったことが無かった。
転ぶと危ないからと、いつも誰かが手を引くか、抱っこをして上ってくれていた。
しかし、いま裕太は一人だった。
一人でこの山を越えて見せるしかなかった。
砦のようにそびえ立つ歩道橋を前に、裕太は周平のパーカーを握り締めて、怖気づいた心を奮い立たせた。
(ゆーた、がんばれ、ゆーた)
裕太はいつも兄がそうしてくれるように、自分の頭をくしゃくしゃとかき混ぜた。
そして、頭上にある手すりに手を伸ばし、小さな手のひらでは掴みきれないそれを、精一杯の力で握って、慎重に一歩づつ足を進めた。
*
やっとのことで歩道橋を渡りきって、山手通りを越えた裕太だったが、それでもうほとんどの力を使い果たしていた。
裕太は、西に傾いた太陽から逃れるように、歯を食いしばって、東へ東へと進んだが、それも目黒川に行き当たったところが限界だった。
裕太は目の前に架かった田道橋を横に避けると、とうとう、川岸に植えられた桜の木の根元にしゃがみ込んでしまった。
橋を渡って向こう側へ行く気力はもう残ってはいなかった。
おそらく、生まれてから一度も、これほど長く歩いたことは無かっただろう。
裕太の足はまるで茨を踏んだかのように痛み、しゃくりあげる声にも、もう力が無かった。
(にーた、かわいそう。きっと、ないてる……ゆーたが、みつけてあげなきゃ……)
裕太は膝を抱えて体を丸めた。
夏の間に伸びた下草が、その小さな体を覆い隠した。
(……ゆーたが、みつけてあげなきゃ……)
裕太の閉じた瞳から止め処もなく溢れる涙は、胸に抱きしめた周平のパーカーが、全て、吸い込んだ。
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