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BL版権物の二次創作ブログです。現在『メイド*はじめました』で活動中です。
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  名前:うさこ
  萌属性:血縁、年の差、アホ子受、ワンコ攻
  好き:甘々、主人公総受け
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――人間の体って、何から出来てるか知ってる?
まだ小学校に上がったばかりの裕太に向かって、真顔でそんなことを聞くような……今から十年も前の京屋惣太郎は、そういう、少し変わったところのある男だった。
*
夏休みの藍川邸は例のごとく、長期旅行に出かけた両親は不在で、残された子供達の、周平はいたって上機嫌。六つになったばかりの裕太も、最初は母親を恋しがってぐずぐずしていたが、三日目にはもうすっかり落ち着いて、普段通りの生活を取り戻していた。
*
親の留守中、家が子供の溜まり場になるのは、どこにでも良くある話だろう。
しかし、「溜まり場」といっても、そこは周平自ら「付き合うに相応しい」と判断した友人の、さらに自宅にまで上げるような、特別な者達のことだから、敷屋を、深夜0時の渋谷センター街と混同するような、頭の悪い人間は一人も居なかった。
「類は友を――」の格言通り、三々五々、思い思いの手土産を持って、祐天寺の屋敷に集まってくる友人達はみな、周平と良く似た……多少エリート意識が鼻につかないでもない……個性と、年に似合わぬ風格の持ち主ばかりだった。

「ねえ、裕太君は、人間の体って、何から出来てるか知ってる?」
突然難しい質問をされて、裕太は目をパチパチさせた。
周りで聞いていた三人の男は、裕太のかわいらしい反応と、京屋の不可解な唐突さに、ぷっと吹き出した。
「なんだよそれ、新しい謎かけか?」
どんぐり眼の男が、ソファから身を起こした。
頭を回すと、カットソーから突き出した太い首がぱきぱき鳴った。
「いや、これはなかなか、深遠な問いだぞ」
黒縁眼鏡の男が、TV画面から視線を上げた。
長めの髪が、額にそってきっちりと固められていた。
「よせよ、裕太君がびっくりしてるだろ」
茶色い髪の白い顔男が、身を乗り出した。
ポロシャツの胸元から、飾りでない十字架が覗いた。
「賑やかだな」
どっと座が盛り上がったとき、ちょうど周平が応接間へ戻った。
グラスとスプーンを受け取りながら、どんぐり眼の男が、シシッと意地の悪い笑みを浮かべた。
「ああ、京屋がまた馬鹿なことを言い出したんだ」
「お、言ったな。じゃあ、お前、答えてみろよ」
「そんなの決まってる。水とタンパク質」
「残念でした」
「あん? じゃあ、水とタンパク質と、脂質」
「だから、違うって。考え方を変えろよ」
「おい京屋……「愛」と「勇気」とか言い出したら、お前、あの池に放り込むからな」
太い首をめぐらせて、男が顎をしゃくった。
庭に面したガラス窓の向こうに、黒く光る凪いだ水面が見えた。
いーっ、と芝居がかった仕草で京屋が白い歯をむいた。
「俺はアンパンマンかよ、変な心配するな」
「シモネタもなしだ」
「ここには裕太君がいるんだぞ、周平に殺されるわ」
ワイワイと騒がしい男達を尻目に、周平は裕太の隣に腰を降ろした。
何ごとかを考え込んでいる裕太を黙って見下ろすと、土産に貰ったアイスクリームの蓋を開けて、スプーンを添えて差し出した。
「どうした、裕太、何を考えてるんだ?」
「うーん……あのねぇ、兄ちゃん。ニンゲンって何で出来てるの?」
「ニンゲンが――何?」
「ニンゲン、人間の体。やっぱり、ごはんで出来てるの?」
スプーンをくわえながら、コトリと首をかしげた裕太に、京屋が振り返って聞いた。
「裕太君、なんでそう思うの?」
「えーっとね、だって、ちゃんとご飯食べないと大きくなれないって、みんな言うから」
おぉーなるほど、とその場に居た全員が頷いた。
「一面の真理だな」
眼鏡を押し上げた男に、白い顔の男が十字架を握って同調した。
「ああ、人はパンのみにて生くるにあらず――ということはつまり、パンでも生きているということだからな」
「いや、ちょっと待て、それは論点がずれてるだろ」
「何故だ、つまりこの命題の本質は――――」
勝手に議論を始めてしまった二人を放ったらかして、京屋は裕太に顔を近づけた。
「そうか、ご飯か……、じゃあ甘いものが好きな裕太君は、砂糖で出来てるのかな?」
「えー?」
目を丸く開いた裕太の頬を、京屋はぷにぷにと指で突いた。
「うーん、ここら辺は、いま食べてるアイスかな」
「そうなの?!」
「うん、きっとね。どんな味だろ、ちょっと味見してもいい?」
「だ、だめ!」
アイスクリームのカップに手を伸ばされて、裕太はソファーの上に飛び上がった。
さっと周平の背中に隠れてしまった裕太に、京屋は歯を見せて笑った。
「なーんてね」
「裕太、京屋は冗談で言ってるんだよ」
「……」
「さあ、誰も裕太のアイスを取ったりしないから」
背後に隠れてしまった裕太を、周平が後ろ手でなだめた。
「ちゃんと座って食べなさい」
「……」
「ごめん、ごめん、おニイさんが悪かった」
「……あの」
「大丈夫だよ、裕太君、本当に取らないって」
「違うの……あの、あのね…………惣ちゃん」
「うん? なに、裕太くん」
「一口なら、あげても良い、よ……?」
裕太は、周平の後ろからオズオズと顔を出した。
「くれるの?」
「うん、ちょっとだけ……味見するだけなら……」
裕太は、手の中ですっかり柔らかくなってしまったアイスクリームを一匙すくうと、零れないよう、慎重な手つきで京屋の前に運んだ。
「はい、惣ちゃん、あーんして」
裕太に勧められて、京屋はチラリと周平をうかがった。
周平の目は、絶対に許さない、断れ、と指令を送っていた。
「……」
無言で圧力をかける周平に、京屋はパチンと片目を閉じた。
そして、裕太の小さな手を掴むと、あーん、と言いながら自分の口元まで運んだ。
「これが、裕太君のほっぺたの味かぁー」
ぎっ、と恐ろしいほど釣りあがった周平の目から視線を逸らして、京屋は白々しく言った。
「うーん、おいしいなぁー」
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