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BL版権物の二次創作ブログです。現在『メイド*はじめました』で活動中です。
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自己紹介

  名前:うさこ
  萌属性:血縁、年の差、アホ子受、ワンコ攻
  好き:甘々、主人公総受け
  嫌い:イタい子
  イチオシ:安元洋貴ボイズ

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「僕が思っていた以上に、世の中には変態が多いみたいだね。まったく、ソドムとゴモラが再び神の怒りに触れる日もそう遠くないね」
それが、この依頼を聞いたときの、僕の率直な感想だった。
「そど……もご?」
聞きなれない言葉に目をしばたたかせたこの組員は、いかつい鬼瓦みたいな風貌に似合わず、根は真面目だし、忠誠心も高い。
汚い仕事も嫌がらずにやるから、中々使い勝手の良い男なんだけど、僕の話し相手になるには少々頭が足りない。
「なんでもないよ、こっちの話」
僕に投げ掛けられた疑問の視線は、その一言でばっさりと切り捨てた。
鬼瓦相手に、ここで旧約聖書の解説を始めるほど僕は酔狂ではない。
そして僕のこういった物言いに、ウチの組員たちは皆慣れている。
この鬼瓦男も「はあ、そうですか」と別段気に留める事も無く、それで納得したようだ。
まあ、これぐらい単純な頭でないと、ヤクザの組員なんてとても勤まらないだろうが。
「それで、あの、坊ちゃん。どうでしょうか、この話」
タタミに正座して、ソファに座る僕を不安げに見上げてくる鬼瓦面を僕はチラリと横目で見た。
僕の機嫌を損ねないようにと思って、こうして下手に出ているのだろう。
けれど、こういう卑屈な態度をとられると、余計に僕の中の悪い虫が刺激される。
まあ、別にこんな鬼瓦を虐めてもつまらないから、無視するが。
僕がそんな事を考えているとは思いもよらないだろう組員は、その沈黙をどう捕らえたのか、今度は両手を突いて頭を下げた。
「お願いします。なんとか考えて頂けませんか」
この鬼瓦に何と答えるべきか、僕は正直迷っていた。
当然こんなむさ苦しい男の哀願に、心動かされたわけではない。
僕の逡巡はもっと現実的な問題だった。
「うーん、そうだねえ。本来一考の余地無く断る所なんだけど、他ならぬ芳賀社長直々のお願いかあ……困るなあ」

藍川君主演の人気シリーズ第三作目を撮り終えて、二週間が過ぎた。
水牛の皮を僕好みの色に染めさせて作った、気に入りのソファの上。
ようやく体調が回復した藍川君は、今日も焦点の合わない目でぼんやりとくうを見詰ている。
「ねえ、藍川君。君に出張公演の依頼が来ちゃったんだけど、どうしようか」
隣に腰掛けた藍川君の腰をぐいと抱き寄せると、僕は彼にそう問いかけた。
こうして返事など無いことを分かりきった上で、藍川君にあれこれと話し掛けるのは、考え事をする時の、僕の新しい癖みたいなものだ。
こうしていると不思議と考えがまとまって良い結論を導き出せたりするのだ。
だがそういった僕のやり方を理解できないだろう目の前の鬼瓦男は、また僕が気味の悪い遊びでも始めたとでも思ったのか、困惑しきった様子で口を開いた。
「あの……坊ちゃん。芳賀の社長には表でも裏でも長年世話になってるもんで、ここでムゲに断ると色々と都合が……」
「そうだねえ」
僕は藍川君の柔らかい髪を撫でながら生返事をする。
「またすぐに都の入札もありますし……」
「ああ」
「この間も、麻布の住民運動の件で世話になったばっかりですし……」
「うん」
「次の区議選でも人を頼むことになると思いますし……」
あれも、これもと具体的な例を挙げ始めた鬼瓦を、僕は手を振って黙らせた。
「そういうことは僕も良く分かってるよ。でも今考えてるのはそう言う事じゃないんだ、そう言う事じゃなくて……僕は、彼を屋敷の外に出したくないんだよ」
すると僕の台詞をどう解釈したのか、鬼瓦は喉に餅でも詰まらせたように目を白黒させて、ぐっと喉を鳴らした。
「は、はあ。確かに、坊ちゃんがソイツを、その、すごく大切にしてるってのは、良く分かってるんですが……そこをなんとか、こらえて頂いて」
気まずい様子で視線を泳がせて、突然そんな事を言い出した男の顔を、僕は思わず、まじまじと見詰めてしまった。
心なしか耳が赤くなっているように見える。
「あっははは、いや、違うよ、そう言う事じゃない」
僕はその見当はずれな意見に我慢しきれず、盛大に噴出した。
「す、すいません。オレは学が無いもんで、坊ちゃんみたいな高尚な楽しみ方ってヤツは、どうにも難しくて」
組員はうつむいて、今度はしどろもどろになって言い訳を始める。
「はははっ、だから違うってば」
僕はおかしな思い違いをしている、この組員にも良く分かるように、藍川君の腕を強く引いて膝の上に引き倒すと、その細い首を一掴みにして見せた。
「ほら、家の中だったら彼一人ぐらい、生かすも殺すも僕の自由にできる。だけど、外に出して騒がれでもしてごらんよ。ちょっと厄介なことになるだろう。僕が心配してるのはそういうことだよ」
「ああ、なるほど」
組員の男は鬼瓦面をあらかさまにほっとさせて、ようやく合点が行ったと大きくうなずいた。
「ですが坊ちゃん。コイツもすっかりイカレちまって、人形みたいに大人しいじゃないですか。別に外に出したところで面倒なことなんて起きっこありませんよ。そもそも、自分が何処にいるのかも分かってないんじゃないですかね」
ようやく自分にも理解できる話になったとでも思ったのか、男は勢い込んで僕を説得してくる。
「ふうん、お前はそう思うんだ」
そんな男の方には視線をやらず、僕は無抵抗で横たわった藍川君の瞳を覗き込んだ。
首に掛けた手にぐっと力を込める。
藍川君の反応は無い。
「えっ! 違うんですか?」
組員は僕が言ったことに心底驚いたように、頓狂な声を出した。
「さあて、どうだろうね。僕は時々藍川君のコレは佯狂なんじゃないかと思うときがあるんだけど」
無抵抗のまま僕の膝に頭を乗せた藍川君の唇が、薄く開いた。
その隙間から酸素を求めるように、ちろりとピンクの舌が覗く。
それを見た僕の下腹部に熱い血が集まった。
「ようきょ、ですか……?」
「いや、いいよ。分かった」
こうなったら、もうこれ以上鬼瓦面に付き合っている気分じゃない。
「それじゃあ一度だけ、時間も場所もこちらの指定に従ってもらうという条件が飲めるなら、と芳賀さんに返事をしておいて」
僕はそう言うと顎をしゃくって組員に部屋を出て行くように促した。
「ありがとうございます! 坊ちゃん」
男は深く頭を下げると、型通りに挨拶して静かに障子戸を閉めて立ち去った。
「ころ……し、てぇ……」
切れ切れに漏れる藍川君の声が僕の血を煽る。
「殺してあげるよ、そのときが来たら、ね……」
僕はそう囁いて、藍川君の濡れた舌に深く噛み付いた。
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