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『クレプシドラ』感想二回目からは個別キャラについて語りたいと思います。
まず最初は、去り行く過去、瀕死の司祭アダムと、来たりし運命、新生司祭のイブです。
(注意)
ネタバレ全開です、ゲーム未プレイの方は注意してください。

さて、この『クレプシドラ』、主人公はもちろん、おしゃまな女の子「イブ」なんですが、実はその裏に、「アダム」という影の主役が存在しているんだ……と、言ったなら、ひょっとしてファンから石を投げられるでしょうかw
でも、実際このお話は、自分の死期を悟ったアダムが、次代の司祭候補として、イブを教会に呼び寄せることから始まるのですよ。
つまり、アダムが存在しなければ何もスタートしていなかったということで……「彼こそが影の主役なんだっ!」と、思わず握りこぶしで叫んでしまう私の気持ち……分かってもらえるでしょうか。
まあ、とはいっても本当のところ、それは私の勝手な確信であって、アダムは正式な攻略キャラでもなく、出番もそう多くは無い、ただの脇キャラなんですがねw
でも、何故か非常に心惹かれるものを感じるんですよ、このアダムには。
本当に、アダムが存在しなかったら、私はこれほどこのゲームを好きにはならなかっただろう、と思いますもん。
そう、何を隠そうこのアダムこそが、『クレプ~』中で、わたしの一番お気に入りのキャラなんです!
*
アダムは、教会(クレプシドラ)の12代目司祭(ソーテリア)を務める……と、まあ要するに「一番偉い人」なんですが、今は一人で歩くことも困難なほど力をなくしています。
ただ、それは病気なのではなく、もう寿命が近いんですね。
彼は瀕死なんです。
ゲームの冒頭から、いきなり死にかけてますw
背中を覆う長い黒髪は、絹糸を流したかのような真っ直ぐストレートで、その美しい髪を中央で分けた額は、死人のように青白く血色がありません。
普段、伏目がちな目をたまに開いても、その瞳には光が無く、まるで死んだ魚のようです……が、綺麗。
わたしがこのゲームの中で、一番「キレイだ!」と思ったのは、本命のディスやアルジェンでは無く、アダムエンドでアダムが「さあ、おとぎ話はおしまいです」と言ったシーンの、流し目スチルなんです。
これ一発で、わたしはアダムに惚れましたw
そよと揺らいだ黒髪、血の気の無い顔、薄く引かれた酷薄そうな唇と、光の無い瞳……もう、アダム様……ハアハアですw
*
さて、そんなアダムの声を担当してらっしゃるのが、岡林史泰さん……という方らしいんですが、私は存じ上げませんで、今回が初聞きでした。
ひょっとして、新人さんなのかな、と思います。
アダムというのは、教会の頂点を治める絶対者でありながら、半死人で無気力無感動。
でも、そんな能面のように動かない表情の奥底には、消え行く者の怒りと悲しみが渦巻いている……という非常に複雑なキャラクターですので、きっと演じるのが難しい役なんだろうと思います。
だからでしょう、聞いていて、力加減を間違っているというか、「ちょっとそれは違うかなぁー」って、感じる時が何度かありました。
なんというか……力みすぎ……というんでしょうか。
「すごく頑張って演技してるんだな」っていうのは、良く分かるんですが、どうにも……こう……、きて欲しいと思うところに来なくて、来なくていいところできてしまうという……なんとも、表現が難しいのですが……分かってもらえるでしょうか、そういう「あー、そこじゃないよー」って感じ。
うーん……やっぱり、「力加減を間違ってる」というのが、一番近い感じがします。
でも、抑えに抑えた演技の中から、チラリと、ほんの僅かに感情の揺れを覗かせる……なんて、そんなのきっとベテランさんでも難しいですよね。
そういうのが得意な役者さんといえば……誰でしょう?
例えば、森川智之さんとか、浜田賢二さん……あ、それは私が個人的に好きなだけかw
そうだな……えーっと、この『クレプシドラ』の中からなら、石田彰さんとか、成田剣さんだったらきっと、素晴らしい表現を見せてくれたと思うんですが、どうでしょう?
いえ、もちろんこの二人の声質がまったく違っているのは、良く分かってますよ。
でも、お二人ほどの実力者なら、アダムに必要な「抑えながら感情を表す演技」を見事にやってのけてくれただろうと、そう思うのですよ。
あ、そういえば、岡林さんの声質は、柔らかくまろみのある感じで、すごく好きでした。
*
そうそう、それから、アダムの一人称が「私(わたくし)」だというのも、けっこう萌えました。
謎ナゾ謎……と、謎だらけの『クレプ~』の中でも、取り分け思わせぶりな台詞を連発する、アダムの一人称が「わたくし」って……いいじゃありませんかw
なんか、雰囲気ありますよね。
だいたい、アダムというのは、言葉の一つ一つが意味深なんですよ。
――貴方は私であり、私は貴方でもある
――今まで彼らと交わした愛も絆も、いずれ貴方へと遷り行く
――その体を十字身として捧げる生き方を、決して後悔せぬ為に
…………って、なんですか、それは!
もう、私を釣ろうとしてるとしか思えませんっ!
萌えさせて、ハアハアさて、妄想を暴走させようとしてるんですねっ!
そうなんですね!
くっ……、さすがは影の主役アダム、なかなかやるな…………w
*
さてと、そんな影の主役アダムに呼び寄せられた、本当の主役イブですが、彼女は教会に来る以前の記憶をすっかり失っています。
アダムの意味深な台詞から推測するに、どうやら「ハートシーク」という、人の心を読む力を与えられると同時に、記憶を封じられてしまったようです。
アダムはそれを「私が貴方にかけた呪い」と呼び、「私が生きている間なら、呪いを解き引き返すことが出来る」と、またまた思わせぶりなことを言ってくれています。
ただし、イブは幼児と言っていいぐらいの小さな女の子なので、そんな難しいこといわれても、何にもわからないんですけどねw
*
さて、13番目の司祭(予定)として教会に呼ばれたイブですが、この「13」という数字がまた意味深ですよね。
「13」というのはキリスト教圏における忌み数の代表のようなものです。
13番目の弟子ユダが、13日の金曜日に、13枚の銀貨でキリストを売った……なんて話があるように、「13」は西欧において、死と裏切りの不吉な象徴なのです。
*
この『クレプ~』は、キリスト教(東方正教会+ローマ・カトリックかな?)的世界観を色濃く反映している作品なので、当然ながらこの「13」という数字も、意図的に使われているのだと思います。
ということは、イブは誰かを裏切ることになるんでしょうか……?
そういえば、旧約聖書、楽園追放の解釈には、「イブの誘惑によってアダムが堕落したのだ」という見方がありますよね。
「13」番目の司祭が「イブ」だなんて……。
こ、これは…………深いですね。
深すぎて、もうこれ以上は私の手におえませんw
誰か、キリスト教に詳しい人の意見を聞いてみたいものです。
*
イブはゲーム中は小さな女の子ですが、唯一イブエンドの2でだけ、立派な女性へ成長した姿が見られます。
ただし、そのエンド、どうやらアダムのお葬式の日でもあるようなんですよ。
つまり、アダムの死んだ日が、イブの司祭就任日になるというわけですね。
そんな爛れた愛憎劇に激しく萌えてしまう私は……やっぱり、病気なんでしょうw
*
大きなイブも、小さなイブも、声を担当してらっしゃるのは、いのくちゆかさん。
最初聞いたときは、あまりに高い声がキンキン頭に響いて苦痛だったんですが、もうすっかりなれましたw
今では、あーイブちゃんかわいいねぇー、ってニコニコしてます。
特に水先の生き返りエンドで「そっちだめ、こっちなの」って、スーツの裾を引っ張るシーンが大好きです。
なんか、癒されますw
そういえば、イブの真正面顔があんなに大きく出てくるのは、あの場面だけじゃないでしょうか。
イブが思ったよりも幼い感じだったんで、ちょっと驚いた記憶があります。
*
イブもアダムも好きなキャラクターなので、まだまだ言い足りないことがある気もするんですが……、そんなこと言っててたら、きりがありませんよねw
というわけで、「アダムとイブは意味深な関係」ということで、ここで一旦終わらせます。
長々お読みいただきありがとう御座いました。
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