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BL版権物の二次創作ブログです。現在『メイド*はじめました』で活動中です。
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  萌属性:血縁、年の差、アホ子受、ワンコ攻
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「――で、でも…………」
裕太は、それでもなお俺に抵抗しようと必死で言葉を探していた。
(諒のやつ、また裕太に余計な知恵を付けやがって)
俺は内心で舌打ちした。
あの楽天的な裕太が、俺が会社から帰ったことにも気が付かないほど、深く考え込んでいたから、これは何かあったんだろうとは思ったが、まさかまた諒に余計なことを吹き込まれてきたとは。
俺は子供の頃から何かといっては裕太に付きまとうあの目障りな顔を、苦々しく思い浮かべた。
(本当にアイツは蛇のような餓鬼だ。エデンの園で苦しみを知らずに生きていた無垢な人間に向かって、林檎を食べろとそそのかした蛇そのものだ)
唾を吐きたくなるほどの不快感が心の中を渦巻いていたが、そんな悪感情を裕太には悟られないよう、俺は細心の注意を払って優しい声を作った。
「裕太、兄ちゃんの言うことが信じられないのか?」
いつもだったら俺がここまで言えば、裕太はすぐに降参しているはずだが、今日はどうやら様子が違う。
かわいそうに、諒に言われたことがよほどこたえたのだろう。裕太は俺と目が合わないよう視線をさまよわせながらも、小さな声で反論した。
「あ……でも……兄ちゃんは、ときどき嘘……付く、から……」
おそらく、ありったけの勇気を振り絞ったであろう、裕太のその一言は、一瞬で俺を凍りつかせた。

ソファで膝を抱えていた裕太が、心配して声をかけた俺に向かって「なんでもない、関係ない、放って置いて」なんていう口を利いたときでさえ、すねてそっぽを向いた横顔が愛らしいぐらいにしか思わなかった俺だが、この言葉は聞き捨てにすることはできない。
裕太が――俺のかわいい弟が、兄であるこの俺を疑うなんてことがあっていいはずがない。
「裕太、俺がいつお前に嘘をついた」
俺が発したその一言で、自分の周りを包んでいる空気が急に冷え込んだことに、さすがに鈍い裕太もすぐに気が付いたようだ。
ヒュっと喉を鳴らすと、顔を青くしてうつむいてしまった。
「裕太、どうした、答えられないのか」
その細い両肩を掴んだ手にぐっと力を込めると、不安に耐え切れなくなったのだろう、裕太は自分の唇を触りだした。
裕太自身は無意識で気が付いていないが、この動作が出るときは、かなり精神的に追い詰められているときだ。
普段だったらもちろん、かわいい裕太を俺が追い詰めるなんてことをするはずがない。
しかし――諒にそそのかされたからとはいえ、さっきの言葉をなかった事で済ませてやるわけには行かない。
俺はすぐにでも「もう怖がらなくていい」と裕太を抱きしめてしまいそうな自分を、そう戒めた。
「――ン」
そのとき吐息のように吐き出された裕太の言葉を、俺は瞬間捕まえ損ねて聞き返した。
「なに?」
「……ミカン……は、嘘じゃ、ないの……?」
ほとんど震えながら顔を上げた裕太が、一体何のことを言っているのか俺はとっさに考え付かなかった。
(なんだって、ミカン? 食べ物で裕太とやりあったことなんか――) 
そこまで考えてようやく俺は一つの光景を思い出した。
(そうだ、裕太が始めて飼ったペット。直射日光が当たる窓際に置かれたせいで、弱って死んでしまったあのオレンジ色の金魚がたしか「ミカン」という名前じゃなかったか?)
一生懸命世話をしていた金魚が、プカプカと水面に浮かぶ姿を見たら、裕太はさぞショックを受けるだろうと、俺は裕太が学校から帰ってくる前に水槽を片付け、一匹の鯉を庭の池に放した。
裕太はあの小さな金魚を、錦鯉の子供だと信じていたから。
裕太は多分その話しをしているのだ。
「裕太……あれは嘘じゃないだろう?」
空の水槽を見て泣くまいと唇を噛んだけなげな様子、抱き上げた俺の首にしがみついた小さな体の重み、そして池を泳ぐ鯉を見た瞬間の花咲くような笑顔。
俺はずいぶんと昔の話しを持ち出してきた裕太に苦笑しながらも、二人の懐かしい思い出に確かな絆を感じて胸が温かくなった。
「そうだろう、裕太? あれは、嘘なんかじゃなかったはずだ」
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