BL版権物の二次創作ブログです。現在『メイド*はじめました』で活動中です。
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名前:うさこ
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好き:甘々、主人公総受け
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2010/09/21 (Tue)
琥珀は徐々に変っていった。
「おかえりなさい」と言って翡翠を出迎えるようになり、少しだけ笑うようになった。
悪夢にうなされて飛び起きるとき以外は、甲高い悲鳴を上げて泣き叫ぶことも無くなり、逃げることも、暴れることも無くなった。
その代わり、すぐに俯いてごめんなさいと謝るのが癖になり、誰もいない場所で声を殺して泣くようになった。
変っていく琥珀を、翡翠は静かに見守った。
呼び名が「ヒスイ」から「翡翠さん」に変ったときも、敬語を使って話すようになったときも、社会性を身につけた証拠だと思って何も言わずに受け入れた。
どうせ乳母のハルかメイド頭の津田が余計な忠告をしたのに違いないのだ、琥珀が自分から距離をとろうとしているのだとは思いたくなかった。
自分が琥珀の親にはなれないことを、翡翠はこの時点ではっきりと自覚していた。
もし、親だったなら琥珀の変化を喜べたはずだ。
自立への第一歩として、成長していく姿を嬉しく、頼もしく思えたはずだ。
しかし、翡翠はそうではなかった。
外へ向かって琥珀の心が開いていくのを見るのはつらかった。
自分だけの琥珀でなくなるのを見るのはつらかった。
――私は琥珀の親にはなれない。
それがわかっていたから、全ての変化を翡翠はただ黙って見守った。
何も知らない琥珀を、欲望のまま操作するようなことはしたくなかった。
「おかえりなさい」と言って翡翠を出迎えるようになり、少しだけ笑うようになった。
悪夢にうなされて飛び起きるとき以外は、甲高い悲鳴を上げて泣き叫ぶことも無くなり、逃げることも、暴れることも無くなった。
その代わり、すぐに俯いてごめんなさいと謝るのが癖になり、誰もいない場所で声を殺して泣くようになった。
変っていく琥珀を、翡翠は静かに見守った。
呼び名が「ヒスイ」から「翡翠さん」に変ったときも、敬語を使って話すようになったときも、社会性を身につけた証拠だと思って何も言わずに受け入れた。
どうせ乳母のハルかメイド頭の津田が余計な忠告をしたのに違いないのだ、琥珀が自分から距離をとろうとしているのだとは思いたくなかった。
自分が琥珀の親にはなれないことを、翡翠はこの時点ではっきりと自覚していた。
もし、親だったなら琥珀の変化を喜べたはずだ。
自立への第一歩として、成長していく姿を嬉しく、頼もしく思えたはずだ。
しかし、翡翠はそうではなかった。
外へ向かって琥珀の心が開いていくのを見るのはつらかった。
自分だけの琥珀でなくなるのを見るのはつらかった。
――私は琥珀の親にはなれない。
それがわかっていたから、全ての変化を翡翠はただ黙って見守った。
何も知らない琥珀を、欲望のまま操作するようなことはしたくなかった。
「おかえりなさい、翡翠さん」
琥珀がはにかんだ笑顔で出迎えた。
飛ぶような足取りで翡翠に駆け寄ると、メイドがするよりも先に鞄を受け取ってサイドボードの上に抱え上げる。
誰が命じたわけでもなく、誰に教わったわけでもないのに、琥珀はメイドの仕事をしたがった。
とはいっても所詮は子供の真似事で、役に立つよりもむしろ他のメイドたちの邪魔をしていることの方が多かったが、なんとか翡翠の役に立ちたいという必死な思いが伝わってくるので、誰も止めることができなかった。
翡翠は一度だけ「琥珀は私の家族なのだから、使用人の真似なんかする必要はないんだよ」と言ったことがあるが、そのときの琥珀のがっくり力を落した様子を見て言うのを止めた。
家の中での役割を見つけることで、琥珀は自分の存在意義を確認しているのかもしれない。
ここにいてもいいですか、と琥珀はいつも不安に揺れる瞳で周囲をうかがっている。
そんな琥珀の気持ちが落ち着くのなら、好きにさせればいいと翡翠は思ったのだ。
「ありがとう、琥珀」
小さな頭を包み込むようにして撫でると、琥珀はにっこり笑って頷いた。
書斎の中央に置かれたティーテーブルの上には、琥珀が直前まで練習していたらしい漢字のドリルが広げたままになっている。
「どこまで進んだのか、見てあげようね」
翡翠はソファーに腰掛けると、琥珀を手招きし膝の上に抱え上げた。
薄い腹部に腕を回し、一緒にドリルを覗き込む。
「もう二年生まで来たんだ。すごいね、琥珀は頭がいいんだね」
翡翠がほめると、琥珀は恥ずかしそうに前髪を引っ張って顔を隠そうとする。
幼いくせに、どこか艶めいて見えるその仕草に、翡翠の口からため息が漏れた。
誘われるまま真っ直ぐな黒髪に鼻先を埋め、こめかみの薄い皮膚に口付けると、琥珀はくすぐったそうに首をすくめた。
「頑張って勉強したご褒美だよ」
細い体を支える腕にぎゅっと力をこめて囁く。
琥珀は頬を染めて俯いたが、やがておずおずと顔を上げ、少し伸び上がって翡翠の顎に唇を付けた。
「琥珀?」
驚いて目を見開いた翡翠に、琥珀はやはり赤くなった顔で下を向いた。
「ごめんなさい」
「どうして謝るの」
「だって、翡翠さん嫌だったでしょう」
「嫌なはずない。うれしいよ、私は琥珀にキスしてもらえてうれしい」
目を細めて笑うと、琥珀はほっとした様子で翡翠に笑い返した。
「僕も」
「琥珀も?」
「僕も、翡翠さんにキスしてもらえるとうれしいです」
天使の顔で笑う琥珀に、翡翠は目がくらみそうだった。
琥珀がはにかんだ笑顔で出迎えた。
飛ぶような足取りで翡翠に駆け寄ると、メイドがするよりも先に鞄を受け取ってサイドボードの上に抱え上げる。
誰が命じたわけでもなく、誰に教わったわけでもないのに、琥珀はメイドの仕事をしたがった。
とはいっても所詮は子供の真似事で、役に立つよりもむしろ他のメイドたちの邪魔をしていることの方が多かったが、なんとか翡翠の役に立ちたいという必死な思いが伝わってくるので、誰も止めることができなかった。
翡翠は一度だけ「琥珀は私の家族なのだから、使用人の真似なんかする必要はないんだよ」と言ったことがあるが、そのときの琥珀のがっくり力を落した様子を見て言うのを止めた。
家の中での役割を見つけることで、琥珀は自分の存在意義を確認しているのかもしれない。
ここにいてもいいですか、と琥珀はいつも不安に揺れる瞳で周囲をうかがっている。
そんな琥珀の気持ちが落ち着くのなら、好きにさせればいいと翡翠は思ったのだ。
「ありがとう、琥珀」
小さな頭を包み込むようにして撫でると、琥珀はにっこり笑って頷いた。
書斎の中央に置かれたティーテーブルの上には、琥珀が直前まで練習していたらしい漢字のドリルが広げたままになっている。
「どこまで進んだのか、見てあげようね」
翡翠はソファーに腰掛けると、琥珀を手招きし膝の上に抱え上げた。
薄い腹部に腕を回し、一緒にドリルを覗き込む。
「もう二年生まで来たんだ。すごいね、琥珀は頭がいいんだね」
翡翠がほめると、琥珀は恥ずかしそうに前髪を引っ張って顔を隠そうとする。
幼いくせに、どこか艶めいて見えるその仕草に、翡翠の口からため息が漏れた。
誘われるまま真っ直ぐな黒髪に鼻先を埋め、こめかみの薄い皮膚に口付けると、琥珀はくすぐったそうに首をすくめた。
「頑張って勉強したご褒美だよ」
細い体を支える腕にぎゅっと力をこめて囁く。
琥珀は頬を染めて俯いたが、やがておずおずと顔を上げ、少し伸び上がって翡翠の顎に唇を付けた。
「琥珀?」
驚いて目を見開いた翡翠に、琥珀はやはり赤くなった顔で下を向いた。
「ごめんなさい」
「どうして謝るの」
「だって、翡翠さん嫌だったでしょう」
「嫌なはずない。うれしいよ、私は琥珀にキスしてもらえてうれしい」
目を細めて笑うと、琥珀はほっとした様子で翡翠に笑い返した。
「僕も」
「琥珀も?」
「僕も、翡翠さんにキスしてもらえるとうれしいです」
天使の顔で笑う琥珀に、翡翠は目がくらみそうだった。
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