短編｜周平×裕太（5）つぼみ・続[裕太視点（3）]

後ろからそっと抱き込まれて、「今日はいいか」と囁かれた。
一回も「ヤだ」なんて言ったことないのに、「いいよ」って……「いつでもしていいよ」って、何度も言ってるのに、それでも兄ちゃんは毎回、同じ事を繰り返すんだ。
オレは理由が分らなくって、「どうして毎日同じこと聞くの」って質問したら、笑われた。
「裕太と、心も繋がりたいからだよ」って頭を撫でられて、オレはなんだか恥ずかしくなった。
「オレだって高校生なんだから、そんなことぐらいもうわかってる」って、ちょっとむきになって反論したら、兄ちゃんは、やっぱりおかしそうに笑った。
まるで「子供でしょうがないな」って言われてるみたいな気がして、ぷうっと膨れると、兄ちゃんは黙ってオレの手を取った。
そうして、手のひらから肘の内側に向かって、ベロって、アイスクリームを舐めるみたいに、舐め上げた。
オレが思わず「くすぐったい」って身をよじっると、兄ちゃんは優しい目をして、「やっと笑ったな」って言った。

兄ちゃんとするのは好きだ。
だって、気持ちいいから。
キスされて、大きな手がするすると体を撫で始めると、オレはもうそれだけで、息が上がってくる。
アパートにいたときの癖で、つい「ンッ」って声を殺すと、兄ちゃんは「我慢しなくていい」って言う。
でも、やっぱり恥ずかしいから唇を噛んでると、今度は無理やり口の中に指を入れられる。
そうやって強引に口を開かされて、「声を出しなさい」って言われる。
じゃないと、変なところに力が入って、怪我しちゃうんだって。
オレは奥まで指を咥えさせられてるから、「あーうー」って赤ん坊が泣くみたいな、変な声しか出せない。
けど兄ちゃんは、それを聞くといつも嬉しそうに、「裕太は可愛いな」って言うんだ。
そうして、閉じられない唇の端から唾液が零れると、まるで待ってたみたいに、それを美味しそうにすするんだ。