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  名前:うさこ
  萌属性:血縁、年の差、アホ子受、ワンコ攻
  好き:甘々、主人公総受け
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「裕太、お前、今朝、滝沢と何はなしてたの」
いつも通り、裕太と二人で机を並べて昼食を取っていた諒は、なるべく詰問調にならないように注意しながら、そう質問した。
裕太の様子が何だかおかしいのは、絶対に滝沢のせいにちがいないと、諒は確信していた。
「何って、別に……ただ、女の子の……」
そこまで言いかけて、裕太はハッと口を押さえた。
今朝裕太が滝沢と話していたことといったら、女の子は机と一緒だとか、つきあいに飽き飽きしてるとか、そういう、諒が聞いたら卒倒しそうな内容ばかりだった。
「女の子の?」
諒の、言い逃れは許さなぞと言わんばかりの強い視線に、裕太は思わず目を伏せた。
俯いて黙りこんでしまった裕太を見ると、諒は手にした箸をパシリと音を立てて机の上に置いた。

「……なあ、裕太。俺だって何度も同じこと言いたくないけど――」
姿勢を正して、大きく深呼吸した諒は、まずそんな母親じみた台詞から小言を始めた。
「じゃあ、言わなきゃいいのに」なんて口答えが出来るほど、度胸も根性もない裕太は、ただ黙って箸を動かし続けた。
「――アイツはまともな人間じゃないんだから、相手にしちゃだめだ。お前みたいのなんか、簡単に手玉に取られて、痛い目見るのが落ちなんだから」
いつも歯に衣着せない物言いをする諒だったが、それにしたって、今の言い方は酷すぎるじゃないかと、さすがの裕太も反発したくなった。
「そ、それは、いくらなんでも、言いすぎだよ、諒。言っていいことと、悪いことが……」
裕太の精一杯の反論も、諒のしょうがないなと言わんばかりのため息に、簡単にかき消された。
「あのなあ、これぐらい強く言わないと、裕太にはわかんないんだろ。だから、言ってるんだよ。騙されてからじゃ遅いんだからな」
「だ、騙すって……滝沢は友達……」
裕太には、諒の言わんとすることがさっぱり分らなかった。
「だから、アイツは友達にしていい人間じゃないって言ってるの」
「な、なんで……」
裕太の物分りの悪さに、諒は次第に苛立ちを隠せなくなってきていた。
「なんで? そんなのアイツ見てたらわかるだろ! あんな、だらしない、いつも女の子をとっかえひっかえ――」
オクターブ高くなった諒の声が、そこでぷつりと途絶えた。
そのまま眉間にしわを寄せて一瞬諒は沈黙したが、次の瞬間、裕太にきっと非難するような視線を向けた。
「まさか、裕太……女の子の話って、おまえ、アイツとそんな話してたんじゃないだろうな? ダメだぞ! 滝沢のやり方、真似しようなんて……!」
激高する諒を、だたぽかんと口を開けて見ていた裕太だが、そんなとんでもない勘違いをされては、さすがに黙ってはいられなかった。
「ええ!? ち、ちがうよ! 俺がそなこと出来るはずないだろ! それは、俺じゃなくて――」
恐ろしい誤解をなんとしても解かなくてはと焦りすぎた裕太の口から、本来言う必要のない言葉までが、ポロリとこぼれ出た。
裕太はすぐに自分の失敗に気が付いて、喉から出掛かった音を飲み込むようにパクリと口を閉じたが、聡い諒がそれを聞き逃すはずがなかった。
「……俺じゃなくて……? ――じゃあ、誰、なんだ?」
怒りに昂揚して赤くなっていた諒の顔が、今度は次第に白く変わって行った。
「……あ、あう……あの……その……」
諒が滝沢と同様、いや、おそらくそれ以上に嫌っている周平の名前を、裕太がここで口に出来るはずがなかった。
「――アイツだな? また、アイツが何かやったんだな? この間みたいに、女が乗り込んできたのか?」
それは一応疑問の形をとってはいたが、諒の頭の中では既に結論となっているようだった。
「違う、違う! 違うから! そんなんじゃないから!」
また早合点で、勝手に話を進めようとする諒に、裕太はぶんぶんと音がするほど激しく頭を振った。
「そうなのか?」
必死の形相で否定する裕太に、諒は目を細めて首を傾けた。
裕太は、周平を庇って嘘を付こうとしているのではないかと、諒が疑っているのが分った。
「そうだよ! 兄ちゃんは、もう女の人となんか付き合ってないんだから、そんなことあるわけない!」
付き合っていないどころか、もう一生結婚しないと、周平は裕太に約束していた。
しかしそれは、たとえ幼馴染の諒であっても教えることの出来ない二人だけの秘密だったから、裕太は兄の潔白をそういう言い方で証明するしかなかった。
「……はあ? 何言ってんの裕太。そんな訳ないだろ、アイツ女切れたことないの、お前だって知ってるだろ」
諒は、裕太がまたトンチンカンなことを言い出したぞ、と言わんばかりの口調だった。
「だ、だけど……でも本当に――」
裕太は全てを口に出来ないもどかしさに唇をかんだ。
「それは、裕太が気が付いてないだけ、上手く誤魔化されてるんだよ。アイツはお前を騙して丸め込むのなんか、得意中の得意なんだから」
滝沢以上にね、とはき捨てるように言った諒に、裕太はもう黙り込むしかなかった。
何が本当で、何が本当でないのか、何を口にしても良くて、何を口にしてはいけないのか、裕太の、そう広くはない脳の処理空間は、もうパンク寸前だった。
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