BL版権物の二次創作ブログです。現在『メイド*はじめました』で活動中です。
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2007/10/25 (Thu)
「ねえ、藍川君。とうとう君に懸賞金が付いたよ。情報提供者に最高一千万円だってさ」
僕は藍川君に向かって、一枚のチラシをかざして見せた。
これは三本目の藍川君主演作を披露しに行った啓寿の家で、さっき受け取ってきたものだ。
「これが君一人の値段だとすると、高いと思う? それとも安すぎかな?」
僕のふざけた問いかけにも、藍川君はいっさい反応しない。
自分の目の前をチラチラ動く一枚の紙切れなど、まるで目に入っていないかのようだ。
こうして僕が腕の中に抱いているとき、藍川君の瞳はここではない、どこか遠くの場所をぼんやりと見詰めている。
僕は藍川君に向かって、一枚のチラシをかざして見せた。
これは三本目の藍川君主演作を披露しに行った啓寿の家で、さっき受け取ってきたものだ。
「これが君一人の値段だとすると、高いと思う? それとも安すぎかな?」
僕のふざけた問いかけにも、藍川君はいっさい反応しない。
自分の目の前をチラチラ動く一枚の紙切れなど、まるで目に入っていないかのようだ。
こうして僕が腕の中に抱いているとき、藍川君の瞳はここではない、どこか遠くの場所をぼんやりと見詰めている。
『天国屋御曹司行方不明 事件に巻き込まれた可能性』
その見出しと共に、藍川君の顔写真が朝刊の一面を大きく飾ったのは、彼の記念すべき主演題一作目の撮影を終えてから、まだ一ヶ月も経たない頃だった。
普通、警察は事件性が明らかでない限り、行方不明者の捜索なんかはしない。
せいぜい身元不明の死体が出たときに、それらしい人物の捜索願が出ていないかチェックするぐらいだ。
僕はそれを良く知っていたから、気安くコトを運んだ訳だが、どうやら今回は何時もと同じようにはいかなかったようだ。
*
その日も僕は、藍川君を自分の隣に座らせ、一緒に朝食を取っていた。
僕は粥を一匙すくうと、それをゆっくりと、藍川君の半開きになった唇の隙間へと流し込んだ。
藍川君がそれを嚥下するのを待つ間、僕は傍らに置かれた新聞に目をやった。
「へえ、君ってあの天国屋百貨店のオーナー一族の末弟だったんだ……藍川君て小市民的でみすぼらしかったから、そんなお金持ちの御曹司だったなんて、ちっとも気が付かなかったよ」
僕はその記事を読んで初めて彼の素性を知った。
啓寿の部屋で彼を一目見た瞬間から、「なんて気に食わない子だろう、どうにかして地獄へ引き摺り下ろしてやりたい」という考えにばかり夢中になって、その辺りをすっかり失念してしまっていたようだ。
「ふふ、僕もまだまだ人を見る目が無かったって事かな、最初からそれを知ってたら、もうちょっと慎重にやったんだけどね、少しだけ失敗しちゃったかな」
*
僕がどんなに話しかけても、藍川君は返事なんかしない。
というより、そもそも僕がやることには一切反応しない。
だから彼に食事をさせるのはいつも一苦労だ。
こうして一匙づつ粥を食べさせるやり方だと、椀一杯食べさせるのに優に一時間はかかる。
まあ僕は元々朝食はゆっくり取るタイプの人間だから、そんな些細なことなど気にはしていないが……。
*
本当のところ、藍川君は僕が傍にいなければ、自分一人で食事を取ることぐらい出来る。
でも僕はそれが分かっていながら、あえてそれをさせない。
彼がこんなふうに給仕させられるのを、心底嫌がっていると知っているから、僕は必ずそうすると決めているのだ。
また一匙すくって、藍川君の口へ含ませる。
「ふーん、藍川君ってお兄さんが居たんだね、インタビューが載ってるよ。おやおや、お母さんが心配のあまり倒れちゃったんだって」
『兄』と聞いたとき藍川君の瞳が少し揺れた気がした。
「藍川君の事、お兄さんが探してるってさ」
もう一度試してみたが、もう彼は反応しなかった。
その見出しと共に、藍川君の顔写真が朝刊の一面を大きく飾ったのは、彼の記念すべき主演題一作目の撮影を終えてから、まだ一ヶ月も経たない頃だった。
普通、警察は事件性が明らかでない限り、行方不明者の捜索なんかはしない。
せいぜい身元不明の死体が出たときに、それらしい人物の捜索願が出ていないかチェックするぐらいだ。
僕はそれを良く知っていたから、気安くコトを運んだ訳だが、どうやら今回は何時もと同じようにはいかなかったようだ。
*
その日も僕は、藍川君を自分の隣に座らせ、一緒に朝食を取っていた。
僕は粥を一匙すくうと、それをゆっくりと、藍川君の半開きになった唇の隙間へと流し込んだ。
藍川君がそれを嚥下するのを待つ間、僕は傍らに置かれた新聞に目をやった。
「へえ、君ってあの天国屋百貨店のオーナー一族の末弟だったんだ……藍川君て小市民的でみすぼらしかったから、そんなお金持ちの御曹司だったなんて、ちっとも気が付かなかったよ」
僕はその記事を読んで初めて彼の素性を知った。
啓寿の部屋で彼を一目見た瞬間から、「なんて気に食わない子だろう、どうにかして地獄へ引き摺り下ろしてやりたい」という考えにばかり夢中になって、その辺りをすっかり失念してしまっていたようだ。
「ふふ、僕もまだまだ人を見る目が無かったって事かな、最初からそれを知ってたら、もうちょっと慎重にやったんだけどね、少しだけ失敗しちゃったかな」
*
僕がどんなに話しかけても、藍川君は返事なんかしない。
というより、そもそも僕がやることには一切反応しない。
だから彼に食事をさせるのはいつも一苦労だ。
こうして一匙づつ粥を食べさせるやり方だと、椀一杯食べさせるのに優に一時間はかかる。
まあ僕は元々朝食はゆっくり取るタイプの人間だから、そんな些細なことなど気にはしていないが……。
*
本当のところ、藍川君は僕が傍にいなければ、自分一人で食事を取ることぐらい出来る。
でも僕はそれが分かっていながら、あえてそれをさせない。
彼がこんなふうに給仕させられるのを、心底嫌がっていると知っているから、僕は必ずそうすると決めているのだ。
また一匙すくって、藍川君の口へ含ませる。
「ふーん、藍川君ってお兄さんが居たんだね、インタビューが載ってるよ。おやおや、お母さんが心配のあまり倒れちゃったんだって」
『兄』と聞いたとき藍川君の瞳が少し揺れた気がした。
「藍川君の事、お兄さんが探してるってさ」
もう一度試してみたが、もう彼は反応しなかった。
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