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  名前:うさこ
  萌属性:血縁、年の差、アホ子受、ワンコ攻
  好き:甘々、主人公総受け
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『り、りょ、諒?! ど、ど、ど、どうしたの?!』
エントランスのインターフォン越しに聞こえた裕太の声は、完全に裏返っていた。
黙って引っ越したマンションに、俺が突然現れたことで、かなり動転しているらしかった。
「どうしたじゃないよ、裕太。お前こそ、どうして学校休んだよ、全然元気そうじゃんか」
俺は担任から預かったプリントを、カメラへ向かってちらちらと振って見せながら、そう答えた。
『あう……そ、れは、あの……』
おかしな具合に言いよどんだ裕太の様子に、俺はまさかずる休みじゃないだろうな、と眉をしかめた。
「……裕太、俺、こんな所で言い合いしたくないから、とりあえず、中、入れてくれる……?」
今日の欠席のことも、引っ越しを隠していたことも、俺が裕太に問い質したいことは山ほどあった。
だけど、こんな玄関ホールでヒステリー女みたいに、キーキー喚いて、衆目を集めるのはさすがに恥ずかしかったから、俺は冷静にそう要求した。
『えええっ!! な、な、中、入るの?!』
ところが、裕太の返事は、そんな俺の理性にヒビを入れる、予想外の拒否反応だった。
「なんだよ、それ……プリント、ポストに入れて帰れって言うわけ?」
我知らず、つんつんと尖がった声に、俺は自分がひどく傷ついているのを感じた。
『いや、いや、いや! そうじゃなくって、えーっと……そうだ、お、俺が、下に行くから……』
裕太が提案した、そんな妥協案にも、俺は納得しなかった。
「……俺に見られたら、なんかまずいことでもあるわけ?」
じっとりと低くなった俺の声は、まるで夫の浮気現場を押さえた鬼嫁のそれみたいに、恨みがましく聞こえただろう。
こんなの、自分でもみっともないと思ったが、裕太の拒否と狼狽が、俺の苛立ちに拍車をかけていた。
『う、う……わ、わかったよ……今、開けるから、上がってきて……』
いかにもしぶしぶと言った調子の裕太の口調から、俺に来て欲しくないと思っているのが、ありありと感じられた。
だけど俺は、絶対に許さないと、一人でこぶしを固めた。

「で、裕太。今日は何で、学校休んだわけ?」
俺を迎えた裕太は、起き抜けらしくパジャマ姿のままだった。
「あの……朝、だるくて起きられなかったんだよ……」
幼馴染の気安さで、じろじろと無遠慮に室内を眺め回す俺の背中に向かって、裕太はそう言い訳した。
「ふーん、だるくてねえ……」
裕太があんまり俺を中に入れたがらないから、ひょっとしたらアイツに何か無理やりおかしなことでもさせられてるんじゃないかと心配していたが、どうやらそれは杞憂だったようだ。
おそらく高級な部類に入るだろう、このマンションの一室は、いたって清潔で、安全で、快適そうに見えた。
そしてなにより、裕太にちゃんと、アイツとは別の、個室が与えられていることに、俺は心の底から安堵した。
「りょ、諒……? あの、ホント……本当に、ズル休みとかじゃないんだよ……?」
部屋のチェックに夢中になって生返事しかしない俺の態度は、裕太からすると、言い訳は聞かないという、厳しさの表明に思えたのかもしれない。
裕太は、オロオロと落ち着かなげにに弁解を繰り返した。
「昨日、お風呂で……あの、ちょっとのぼせちゃって……だから……」
すっかり困惑しきった様子の裕太に、俺はふーっと息を吐いて、肩をすくめた。
「まあ、別にもう、それはいいよ」
これ以上、この問題で裕太を追い詰めても仕方がなかった。
俺には、それよりももっと重要な、絶対に問い質さなくてはならない、本題があった。
「それよりさ、裕太……」
俺は学習デスクとして使われているのだろう、磨き上げられたナラ材の手触りも滑らかな書斎机の上に、つつつと指を滑らせた。
食卓も勉強机も兼用だった、あの古いアパートの小さな折脚テーブルとは比べ物にならないほど、この一枚板の天板は頑丈で、そして高級そうだった。
「……なんで俺に、引っ越し……黙ってたわけ?」
もったいぶった仕草で、ゆったりと振り返った俺と目があうと、裕太の肩がビクリと震えた。
「な、なんでって……その、ご、ごめん……」
じっとりと、今度は絶対に言い逃れさせないという、意志を込めた俺の視線に、裕太はショボショボと、叱られた子供のように下を向いてしまった。
「別に謝って欲しいなんて言ってないだろ、理由を聞いてるんだよ。俺に引越しを隠してた理由を」
自惚れかもしれないけど、裕太にとって俺は、けっこう親しい部類に入ると自負していた。
なのにどうして、こんなに重要なことを秘密にしていたのか。
俺にはそれが、裕太が裏切ったんだ、というように感じられて、酷くショックだった。
「隠してって、別にそんな、隠してたわけじゃないよ……ただ、ちょっと言いそびれてただけで……」
ピカピカにコーディングされた床に必死で傷を探そうとしているみたいに、裕太は深く俯いて、キョロキョロとせわしなく視線をさ迷わせた。
「言いそびれて? 先生に聞いたけど、お前、引っ越したの二ヶ月も前だって話じゃないか、その間ずっと、言いそびれてたわけ?」
そんな底の浅い、その場しのぎの言い逃れに騙されるとでも思うのと、俺はフンと鼻で笑った。
「だ、だから……そのうちにと思ってたんだけど、なんか、だんだん、言いにくくなって……ほら、諒って、兄ちゃんのこと嫌いだろ、だから……」
その裕太の言い方に、俺は少しカチンと来た。
裕太に言われるまでもなく、アイツに関することとなると、俺の沸点が途端に低くなることは、自分でも良く分かってる。
分ってるけど、それは俺が裕太を心配しているからなのに、なんでそんな言い訳の理由に使われなきゃならないんだと、俺はムカムカした。
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