BL版権物の二次創作ブログです。現在『メイド*はじめました』で活動中です。
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2007/12/01 (Sat)
春には満開の花を咲かせて、目黒川一体を薄桃色に染め上げる桜の木も、八月の今は、残暑の名残に大きく茂らせた緑の葉を、ただ静かに風にそよがせているだけだった。
その太い幹の根元に、幼い子供が一人、寄りかかって眠っていた。
複雑に隆起した根っこの狭間に、小さい体をすっぽりと収めて眠るその姿は、夕日に照らされて影を強くした街の中で、まるで桜の木の一部であるかのように、自然に溶け込んで見えた。
だから、迫る夕闇の中、家路を急ぐ人々が、そうして静かに眠る裕太の姿を見落としてしまっても、それは仕方が無いことだった。
ときおりビルの間を吹き抜けてゆく風が、裕太の所在を知らせるように、地面を覆った夏草を揺らしたが、その気まぐれな仕業も、足早に歩く人々の目を、裕太に向けさせることは出来なかった。
だから、そうして泣き疲れて眠っている裕太を、周平が見つけられたのは、本当に奇跡的な……それこそ、運命とも呼べるような偶然が、折り重なった結果だった。
その太い幹の根元に、幼い子供が一人、寄りかかって眠っていた。
複雑に隆起した根っこの狭間に、小さい体をすっぽりと収めて眠るその姿は、夕日に照らされて影を強くした街の中で、まるで桜の木の一部であるかのように、自然に溶け込んで見えた。
だから、迫る夕闇の中、家路を急ぐ人々が、そうして静かに眠る裕太の姿を見落としてしまっても、それは仕方が無いことだった。
ときおりビルの間を吹き抜けてゆく風が、裕太の所在を知らせるように、地面を覆った夏草を揺らしたが、その気まぐれな仕業も、足早に歩く人々の目を、裕太に向けさせることは出来なかった。
だから、そうして泣き疲れて眠っている裕太を、周平が見つけられたのは、本当に奇跡的な……それこそ、運命とも呼べるような偶然が、折り重なった結果だった。
例えば、もし周平が、落ち着いて状況を判断できるだけの冷静さを保っていたなら、一人で信号を渡ったことも無い裕太を探すために、四車線もある大きな幹線道路を越えようとは思わなかっただろうし、もし裕太が周平の残していったパーカーを、後生大事に抱えて歩かなければ、川沿いを狂人のように駆ける周平の眼に、その青い光が届くことも無かっただろう。
*
だが、まさにその瞬間、周平が目黒川の護岸を駆け抜けようとしたその時、奇跡か、偶然か、あるいは運命によってか、裕太の抱きしめた青いパーカーのループエンドが、ビル風に葉を揺らした桜の木漏れ日を反射した。
そして、その一条の閃光が、並木道を喪神して走る周平の視界に、突き刺さった。
*
「裕太!」
周平は、まろぶように立ち止まると、叫びすぎてほとんど潰れたようになったかすれ声で、その名前を呼んだ。
そうして、自分の目の前にいるのは、狂気の見せる幻ではないのかと、疑いながら、それでも、夢ならどうか覚めないでほしいと願うように、一歩ずつ、慎重に、裕太へと近付いた。
裕太は、桜の木に守られるようにして、眠っていた。
周平は、涙の後が残る裕太の頬に、おそるおそる手を伸ばした。
その指先は疲労と、興奮と、そして感動のために震えていた。
「ゆう、た……」
周平はもう一度、そっと名前を呼んだ。
いや、あるいはそれは言葉にもならない、ただの呻きだったかもしれない。
しかし、裕太の耳には、ちゃんと己を呼ぶ声として届いた。
裕太は、その声に誘われるまま、ゆっくりとまぶたを持ち上げた。
「ん……」
泣き過ぎて腫上がったまぶたを、重そうに開けた裕太は、その視線の先に、捜し求めた周平を発見し、にっこりと笑った。
そうして、周平の泣き出しそうな顔を見て、優しく諭した。
「にーた、もう、ひとりで、かってにあるきまわって、まいごになっちゃ、だめだよ?」
途端に周平は、糸が切れた人形のように、裕太の上に倒れこんだ。
裕太の体は、覆いかぶさった周平の影にすっかり隠れてしまうほど、小さかった。
しかし、その小さな体を腕に抱きながら、周平は、いま自分は世界の全てを抱いているのだと、感じていた。
*
だが、まさにその瞬間、周平が目黒川の護岸を駆け抜けようとしたその時、奇跡か、偶然か、あるいは運命によってか、裕太の抱きしめた青いパーカーのループエンドが、ビル風に葉を揺らした桜の木漏れ日を反射した。
そして、その一条の閃光が、並木道を喪神して走る周平の視界に、突き刺さった。
*
「裕太!」
周平は、まろぶように立ち止まると、叫びすぎてほとんど潰れたようになったかすれ声で、その名前を呼んだ。
そうして、自分の目の前にいるのは、狂気の見せる幻ではないのかと、疑いながら、それでも、夢ならどうか覚めないでほしいと願うように、一歩ずつ、慎重に、裕太へと近付いた。
裕太は、桜の木に守られるようにして、眠っていた。
周平は、涙の後が残る裕太の頬に、おそるおそる手を伸ばした。
その指先は疲労と、興奮と、そして感動のために震えていた。
「ゆう、た……」
周平はもう一度、そっと名前を呼んだ。
いや、あるいはそれは言葉にもならない、ただの呻きだったかもしれない。
しかし、裕太の耳には、ちゃんと己を呼ぶ声として届いた。
裕太は、その声に誘われるまま、ゆっくりとまぶたを持ち上げた。
「ん……」
泣き過ぎて腫上がったまぶたを、重そうに開けた裕太は、その視線の先に、捜し求めた周平を発見し、にっこりと笑った。
そうして、周平の泣き出しそうな顔を見て、優しく諭した。
「にーた、もう、ひとりで、かってにあるきまわって、まいごになっちゃ、だめだよ?」
途端に周平は、糸が切れた人形のように、裕太の上に倒れこんだ。
裕太の体は、覆いかぶさった周平の影にすっかり隠れてしまうほど、小さかった。
しかし、その小さな体を腕に抱きながら、周平は、いま自分は世界の全てを抱いているのだと、感じていた。
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