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BL版権物の二次創作ブログです。現在『メイド*はじめました』で活動中です。
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自己紹介

  名前:うさこ
  萌属性:血縁、年の差、アホ子受、ワンコ攻
  好き:甘々、主人公総受け
  嫌い:イタい子
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「冗談だよ」
まったく冗談ではない調子で周平は言った。
「じょ、冗談……なの?」
裕太は、はあっと気が抜けたような声を上げた。
自分よりも遥かに大きい周平の体を路上の影に押し込んだ裕太は、ぜいぜいと、肩で息をしながら、脱力してその場に座り込みそうになった。
「そう……本当は、お前を鍵のかかる宝石箱に入れて、大事にしまっておきたい。誰にも取られないように、傷つかないように……一生、閉じ込めておきたい」
周平が、ぐっと腕を掴んで、裕太の体を引き寄せた。
顔を近づけてくる周平に、裕太は何とか二人の距離を保とうと、腕を突っ張って抵抗した。
「ちょ、ちょっと、兄ちゃん……やめてよ、また冗談っ」
「……さあ、それはどうかな…………でも、お前をずっと、大切に、守ってやりたいと思ってるのは、本当だよ」
意外なほどひっそりとした調子の声に、裕太は思わず顔を上げた。
頭上から漏れるLED看板のオレンジ色の光に横顔を照らされた周平の瞳は、裕太にはとてもその真意を読み取れないほど、静かに深い色をたたえていた。
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「裕太、そんなに怒るなよ。兄ちゃんが悪かったから」
腕を掴んで先を行く裕太に大人しくつき従いながら、周平は謝罪を繰り返した。
最初のうちは、弟に手を引かれて歩くという珍しい状況を楽しんでいた周平だったが、しかし今は、自分の声など聞こえないと言う風に俯いたまま、ずんずんと必死になって前を歩く裕太が、かわいそうに思えてきた。
裕太の手のひらは、掴んだ周平の手首を一回りもできないほど、小さかった。
夜になって眩しいほどに輝く繁華街の中、喧騒を楽しむ人々の波を掻き分ける裕太の背中は、その圧力に押しつぶされそうなほど頼りなく見えた。
周平は裕太と二人でいるときには、仕事の話は滅多にしない。
聞けば答えてはくれるが、それも裕太に分る範囲を、ごく簡単に、噛み砕いて説明するだけで、組織だとか、経営だとか、そういった難しい話は絶対にしない。
天国屋グループは一族支配の固い結束で成り立っている同族企業だから、家族や親戚が集まれば、必ずそういった話になる。
だが、何も分らない裕太は、どんな話題にも遅れることなく付いていく周平の隣で、一人、お茶とお菓子に専念するのが慣例だった。
「除け者にされているみたいでつまらない」と不満を漏らすと、周平はいつも笑って「それじゃあ、もっと楽しい話をしよう」と、裕太にも分るような、学校や、季節や、食べ物の話に話題を切り替える。
「理解できるよう勉強しろ」とは決して言わない。
むしろ周平は、裕太にそういうことを知ってほしくないと思っているふしがある。
「お前にはまだ早い」「もっと他に学ぶべきことがあるだろう」と言われてしまえば、知識のない裕太は「そんなものかな」と納得するしかない。
*
あの「現場主義」「実力主義」を貫く祖父自ら「私の跡継ぎ」と公言するぐらいだから、周平は親族の中でも秀抜なのだろう。
しかし、それも裕太には良く分らない。
「営業企画部」が何の仕事をしている部署なのか、その中で「主任」というのがどういった立場にあるのか、この間周平が言った「来春から係長になる」という言葉の意味も……裕太には何も分らない。
ただ、「一緒に居る時間が少なくなるかもしれない」といって、ごめんなと謝った周平が、酷く辛そうだったと……裕太分ったのは、それだけだった。
だから裕太は「大丈夫だよ」「心配ないよ」と、殊更明るく振舞って見せた。
本当は、「主任」と「係長」では、何が違うのかも良くわかってはいなかったけど。
周平を元気付けようと、一生懸命笑って見せた。
いつも、自分の為に何もかもを犠牲にしようとする周平に、何かしてあげられることがあればいいのだけれど、そう思った裕太にできる、それが精一杯だった。
「あれ、これって……」
天国屋本社ロビーで周平の仕事終わりを待っていた裕太は、ふと目に入った、ブローシャーを手に取った。
打ち合わせ用のソファーセットの脇に並べられたその小冊子には、『天国屋池袋本店メンズ館グランドオープン』という端正なゴシック体のロゴと共に、見覚えのある横顔が大きく印刷されていた。
「滝沢……だよな……」
ぱらぱらとめくると、カジュアルからフォーマルまで、さまざまな衣装を身に付けた翠目の男性モデルが、コントラストの強い印象的な写真で中を飾っていた。
裕太は、最終ページの右隅に小さく書かれた『REN TAKIZAWA』の文字を、人差し指でなぞった。
「ウチの仕事もしてるんだ……」
紙の上から鋭い視線を向ける滝沢と、裕太はしばらく見つめあった。
「学校じゃあ、遅刻ばっかりしてる、いい加減なヤツなのに……こんなの、全然別人みたいだ……」
裕太はブローシャーを棚には戻さず、きゅっと絞るようにして握った。
天国屋グループの藍川裕太と、楽才学園一年生の藍川裕太とが別であるように、クラスメイトとしての滝沢と、モデルとしての滝沢は、どこか別の存在であるように感じていた。
しかし、その別々だったはずのものが、突然こうして結びついてしまったのだ。
それはまるで、滝沢が自分のプライベートな空間に予告無く踏み込んできたような、あるいは、自分が滝沢の普段は見せない秘密の顔を覗き見てしまったような、そんな居心地の悪さで、裕太を酷く戸惑わせた。
「裕太は馬鹿なんかじゃないよ、普通の高校生なんてそんなもんだよ。企業だとか、株だとか、そういうものに詳しいほうが変なんだよ」
むうっと黙り込んでしまった裕太を、諒が慰めた。
「ほら、滝沢はかなり「特殊」な家庭環境みたいだからさ、そういう下世話なことに詳しいのさ」
言いながら、諒はちらりと、滝沢にあてこするような視線を送った。
「でも、でも……諒だって知ってるんだろ……?」
裕太は、心細いような気持ちで諒を見上げた。
「それは……ほら、俺の家もかなり「特殊」だからさ。お弟子さん達は、名家の子女が多いしね、自然とそういう話になるんだ……だから耳学問だよ、聞きかじり」
「でも……」
一生懸命フォローしてくれようという諒の気持ちは嬉しかった。
しかし、それでも裕太の心は晴れなかった。
日ごろから、自分があまり頭のいいほうではないということは良く分かっていたが、それでもこんな風に目の前に突きつけられると、さすがに悲しかった。
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