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BL版権物の二次創作ブログです。現在『メイド*はじめました』で活動中です。
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自己紹介

  名前:うさこ
  萌属性:血縁、年の差、アホ子受、ワンコ攻
  好き:甘々、主人公総受け
  嫌い:イタい子
  イチオシ:安元洋貴ボイズ

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「裕太!」
オレが教室に入ると、待ちかねたように諒が早足で近付いてきた。
「おはよー、諒」
鞄を下ろしながら、いつも通りの調子で、オレがのんびり朝の挨拶をすると、諒は脱力したように、はぁっと大きくため息をついた。
「その様子じゃ、結局、何でもなかったみたいだな……ホントに、人騒がせも程ほどにしてくれよ」
「へ? オレまた諒に迷惑かけた?」
えーっと、なんだっけ、と首を傾げたオレに、諒は怒ったような、呆れたような、複雑な顔で首を振った。
「もういいよ。昨日急に早退したから、心配してただけ」
「早退……って、あぁっ、あーっ! そう言えば、そうだったー!」
オレはようやく昨日の状況を思い出して、さあっと頭から血の気が引いた。
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「おはよっ、櫻井」
校門の前で見慣れた背中を見つけて、オレは後ろから声をかけた。
「ああ、藍川……おはよう」
櫻井は駆け足で追いついたオレを見ると、ほんの少し、目の奥をチラリと微笑ませた。
「……今日はまた、ずいぶん、元気がいいんだな」
「うん! だって何かすごい天気いいし、気持ちいいだろ」
オレは大きく頷くと、両手を広げて深呼吸した。
朝のまだひんやりと冷たい空気が、水晶の欠片みたいにキラキラと体中に染み渡った。
「櫻井もやってみる? すーっはーって、元気出るよ?」
調子に乗って誘うと、櫻井は何とも言えない、不思議な目でオレを見下ろした。
櫻井は普段から無表情で、余計なおしゃべりはしないし、冗談も言わないし、声を出して笑ってるところなんか一度も見たことがない、達観した仙人みたいな、変わった高校生なんだけど、時々こういう目でオレを見る。
それは別に不快な視線ではないんだけど……オレはなんだか、観察されてるみたいな気分になって、ちょっとムズムズしてしまう。
兄ちゃんの手が、初めてオレの体に触ったとき――それはオレが覚えている限りでと言う意味だけど――本当は少しだけ怖かった。
してって、ねだったのはオレだったけど、実際のところ今から何が始まるのかなんて、良く分っていなかった。
だってオレはそのとき、キスも、セックスも……それどころか女の子と手を繋いで歩いたこともないぐらい、本当になんにも知らない子供だったんだから。
人間がどうやって繋がるのかなんて、ましてや、男と男がどうやって繋がるのかなんて、知ってるはずがなかった。
*
兄ちゃんに、唇を開いてといわれて、初めてキスがマンガみたいに口を重ねるだけの行為じゃないんだって知った。
寄せては返す波のように、強弱を付けてオレを嵐の海に引き出した兄ちゃんは、もうすっかり覚悟を決めてしまったらしい、強い目をしていた。
未知の、そして禁断の領域に踏み込もうとしているのだという不安に、オレが思わず声を上げると、兄ちゃんは何もかも分っているという顔で、全部任せれば良いと、頷いた。
syuuhei_and_yuuta_09.gif自宅にて
裕太9才 周平20才
――熱を出す。
それが、赤ん坊の頃から変わらない、裕太の最大の必殺技だ。
肉体的疲労が溜まったとき、精神的苦痛に追い詰められたとき、裕太は言葉でSOSを発する代わりに、熱を出す。
そうして、外部に自身の危機を伝える。
*
裕太はもともと口が上手くない。
警戒心が無くて、疑うことを知らない人懐っこい性格だから、友達作りは天才的に上手いが、その一方で、他人の心の機微に疎く、自分の気持ちを言葉にして伝えるのが苦手だから、周囲に振り回されて、ヘトヘトになってしまうことも度々だ。
*
だから、そんなとき、裕太は言葉で「いやだ」「つらい」と言うかわりに、熱を出す。
熱を出して、自身を強制的にその苛酷な環境から隔離する。
そして時には、その記憶ですら消し去ってしまう。
*
裕太が発する、そんな特別な声に気が付いてやれるのは、この世で俺だけだ。
母も、父も気が付かない、ましてや同じ教室で幾らかの時間を過ごすだけの「赤の他人」連中に分るはずもない、そんな裕太の言葉を、この世でただ、俺だけが知っている。
裕太の声が聞けるのは、この世でただ、俺だけなのだ。
sakurai_02.gif教室にて
櫻井はちょっと変わってる。
変わってるって言っても、滝沢みたいに派手で目立つから周囲から浮いてるとか、そういうんじゃない。
むしろ櫻井は、そういう滝沢みたいな存在とは間逆にいる人間だと思う。
*
櫻井はいつも一人だし、誰ともしゃべらないし、休み時間になっても席に座ったまま、黙って本を読んでる。
それも凄く難しい本。
辞書みたいに分厚くて、細かい字がびっしり詰まってて、もちろん挿絵なんかなくて、ついでに時々日本語じゃなかったりするから……俺にはもう全然意味が分らない。
*
興味本位に、どうしていつも一人なのなんて、聞いたことがあるけど、櫻井は小さく笑っただけで、何も答えなかった。
それはとても空疎な微笑みで、俺はどきりとした。
失うことを知っている目だった。
*
多分、櫻井にはわかっていたのだと思う。
俺には理解できないということが。
どんなに説明しても、百万の言葉を費やしても、俺には決して理解できないのだということが。
だから櫻井は何も語らず、あんなに寂しく笑ったのだと思う。
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