BL版権物の二次創作ブログです。現在『メイド*はじめました』で活動中です。
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名前:うさこ
萌属性:血縁、年の差、アホ子受、ワンコ攻
好き:甘々、主人公総受け
嫌い:イタい子
イチオシ:安元洋貴ボイズ
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2008/02/26 (Tue)
――周平19歳の夏。
そのとき裕太は8歳、小学3年生だった。
*
両親は二人の息子が夏季休暇に入ったのと同時に、二週間の長期バカンスへ出かけた。
北欧の夏を楽しんでくると、青年のように歯を見せて笑った父親と、新婚みたいねと、小娘のようにはしゃぐ母親とを、成田で見送ったのは三日前のこと。
子供を……特にまだ幼く、体の弱い裕太を置いて、長い旅行に行くことを母親は心配したが、「俺に任せておけば大丈夫」と周平が説得した。
強い意志を込めた目と、自信に溢れる笑顔で肯けば、「たしかにそうだろう」と、周囲が納得せざるを得ないほどの、信頼と実績が周平にはあった。
長い年月をかけて、こつこつと積み上げてきたそれが、周平の最大の武器だった。
そのとき裕太は8歳、小学3年生だった。
*
両親は二人の息子が夏季休暇に入ったのと同時に、二週間の長期バカンスへ出かけた。
北欧の夏を楽しんでくると、青年のように歯を見せて笑った父親と、新婚みたいねと、小娘のようにはしゃぐ母親とを、成田で見送ったのは三日前のこと。
子供を……特にまだ幼く、体の弱い裕太を置いて、長い旅行に行くことを母親は心配したが、「俺に任せておけば大丈夫」と周平が説得した。
強い意志を込めた目と、自信に溢れる笑顔で肯けば、「たしかにそうだろう」と、周囲が納得せざるを得ないほどの、信頼と実績が周平にはあった。
長い年月をかけて、こつこつと積み上げてきたそれが、周平の最大の武器だった。
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2008/02/23 (Sat)
「どうだろうな、それは」
心配を杞憂だと笑った裕太に対して、しかし周平の声は深く、確信に満ちていた。
「少なくとも、俺たちの隣に住んでたころはそうじゃなかったけどな」
裕太が言わんとするようなことは、当然周平も十分良く分かっていた。
昔からこまっしゃくれて、かわいげのない子供だった諒が、今も小ざかしく、裕太にあれこれと口出ししているだろうことは、容易に想像がついた。
そして、そのさかしらな苦言こそが、諒を警戒する理由そのものなのだと、周平は裕太にやさしく理解させる必要があった。
「隣にって……それ、俺が小学生の頃だよ、そんな昔に何かあったっけ?」
何も分らないと小首をかしげた裕太の頬を、周平の手がやんわりと包んだ。
「アレはな、俺の目を盗んで、お前を外に連れ出す常習犯だったんだよ」
心配を杞憂だと笑った裕太に対して、しかし周平の声は深く、確信に満ちていた。
「少なくとも、俺たちの隣に住んでたころはそうじゃなかったけどな」
裕太が言わんとするようなことは、当然周平も十分良く分かっていた。
昔からこまっしゃくれて、かわいげのない子供だった諒が、今も小ざかしく、裕太にあれこれと口出ししているだろうことは、容易に想像がついた。
そして、そのさかしらな苦言こそが、諒を警戒する理由そのものなのだと、周平は裕太にやさしく理解させる必要があった。
「隣にって……それ、俺が小学生の頃だよ、そんな昔に何かあったっけ?」
何も分らないと小首をかしげた裕太の頬を、周平の手がやんわりと包んだ。
「アレはな、俺の目を盗んで、お前を外に連れ出す常習犯だったんだよ」
2008/02/21 (Thu)
「それで、裕太は俺に何が聞きたいんだ?」
足の間に座らせた裕太を、周平は背後から覗き込んだ。
この姿勢は裕太がほんの子供だった頃から、話を聞いて欲しいとき、絵本を読んで欲しいとき、あるいは単に甘えたい気持ちになったとき、「お膝に座らせて」と言って、自ら周平にねだった体勢だったが、しかし、本人だけはすっかりそのことを忘れていた。
「あのさあ……兄ちゃんって、諒を怖がらせるようなこと、何かしたことある……?」
背中に感じる温もりをくすぐったく思いながら、裕太はおもむろにそう切り出した。
周平の前で「諒」の名前を出すのは、ずいぶんと勇気が言ったが、こうして背中を預けていれば、顔を見なくて済むぶん、いくらか気持ちが楽になるような気がした。
「諒を怖がらせる? なんだそれは」
案の定、「諒」の名前が出た瞬間、周平の顔から、すっと微笑みが消えた。
しかし裕太にわかったのは、耳元で響く声が、ほんの少し低くなったことだけだったから、それにひるむことはなかった。
「うーんと……じゃあ、怒らせるようなことでも良いんだけど……」
裕太は少し考えてから、そう言い直した。
ぞっと凍りつくような目を向ける周平に対して、諒はいつも、怒りに燃えた憎悪の視線で睨み返す。
そして、そんな二人の間に挟まれた裕太は、竜虎の争いに巻き込まれた、場違いなウサギのように、仲裁することもできず、すくんで固まっているしか出来ないのだ。
足の間に座らせた裕太を、周平は背後から覗き込んだ。
この姿勢は裕太がほんの子供だった頃から、話を聞いて欲しいとき、絵本を読んで欲しいとき、あるいは単に甘えたい気持ちになったとき、「お膝に座らせて」と言って、自ら周平にねだった体勢だったが、しかし、本人だけはすっかりそのことを忘れていた。
「あのさあ……兄ちゃんって、諒を怖がらせるようなこと、何かしたことある……?」
背中に感じる温もりをくすぐったく思いながら、裕太はおもむろにそう切り出した。
周平の前で「諒」の名前を出すのは、ずいぶんと勇気が言ったが、こうして背中を預けていれば、顔を見なくて済むぶん、いくらか気持ちが楽になるような気がした。
「諒を怖がらせる? なんだそれは」
案の定、「諒」の名前が出た瞬間、周平の顔から、すっと微笑みが消えた。
しかし裕太にわかったのは、耳元で響く声が、ほんの少し低くなったことだけだったから、それにひるむことはなかった。
「うーんと……じゃあ、怒らせるようなことでも良いんだけど……」
裕太は少し考えてから、そう言い直した。
ぞっと凍りつくような目を向ける周平に対して、諒はいつも、怒りに燃えた憎悪の視線で睨み返す。
そして、そんな二人の間に挟まれた裕太は、竜虎の争いに巻き込まれた、場違いなウサギのように、仲裁することもできず、すくんで固まっているしか出来ないのだ。
2008/02/20 (Wed)
裕太と周平は兄弟だ。
ただ、兄弟といっても年が11も離れているから、本人達の感覚からすると、それはむしろ「親子」といったほうが近いかもしれない。
実際、周平は自分の事を「裕太の保護者」と言ってはばからないし、裕太にしても周平のそういった発言を何の疑問もなく、自然に受け入れていた。
*
そういう関係の二人だから、当然ながら「兄弟喧嘩」というものをしたことがない。
裕太が物心付く頃には、周平はもうすっかり大人だったから、「どっちがおもちゃを使うか」だとか「おやつの大きさが違う」だとか「いたずらしたのは誰か」だとか、そういった普通の兄弟が良くやるような日常的ないざこざは、一つも経験したことがない。
それどころか、むしろ周平なら、裕太がおもちゃが欲しいと泣けば、進んで買い与えただろうし、おやつが小さいと不満を言えば、自分の物を食べさせただろうし、いたずらを発見したなら、一緒に謝ってやるからと優しく諭しただろう。
だから、例え周平と裕太の間に何か問題が起こったしても、それは決して「喧嘩」にはならない。
せいぜい、周平の過干渉に裕太がむくれるとか、裕太のワガママを周平が叱るとか、そういった結果にしかならない。
そんな場合だって、裕太がむくれれば、周平はそのご機嫌が直るまで、いつまでも付き合ったし、叱ると言ったって裕太にはどこまでも甘い周平のすることだから、最大限で「部屋に行って反省しなさい」だとか、「今日は外出は禁止」だとかその程度のことで、大きな声で怒鳴り付けたり、ましてや手を上げたりなどという事があるはずもなかった。
*
生まれたときからずっと、裕太にとって周平とはそういう存在だった。
裕太には、周平が頭を撫でる優しい手を思い出すことは出来ても、力ずくで何かを強要したり、自分を手酷く扱うさまなど、想像することもできなかった。
あの小さなアパートで、周平の夜の秘密を知ったときでさえ、裕太は覆いかぶさってくるその大きな体を怖いとは思わなかった。
思いもよらない状況に混乱はしたが、触れる手や唇の温もりを、なんだか懐かしいような、ひどく安心するような、心地よいものに感じていた。
そしてそれが、こうして二人が深く繋がった今もずっと変わらない、周平に対する裕太の認識だった。
ただ、兄弟といっても年が11も離れているから、本人達の感覚からすると、それはむしろ「親子」といったほうが近いかもしれない。
実際、周平は自分の事を「裕太の保護者」と言ってはばからないし、裕太にしても周平のそういった発言を何の疑問もなく、自然に受け入れていた。
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そういう関係の二人だから、当然ながら「兄弟喧嘩」というものをしたことがない。
裕太が物心付く頃には、周平はもうすっかり大人だったから、「どっちがおもちゃを使うか」だとか「おやつの大きさが違う」だとか「いたずらしたのは誰か」だとか、そういった普通の兄弟が良くやるような日常的ないざこざは、一つも経験したことがない。
それどころか、むしろ周平なら、裕太がおもちゃが欲しいと泣けば、進んで買い与えただろうし、おやつが小さいと不満を言えば、自分の物を食べさせただろうし、いたずらを発見したなら、一緒に謝ってやるからと優しく諭しただろう。
だから、例え周平と裕太の間に何か問題が起こったしても、それは決して「喧嘩」にはならない。
せいぜい、周平の過干渉に裕太がむくれるとか、裕太のワガママを周平が叱るとか、そういった結果にしかならない。
そんな場合だって、裕太がむくれれば、周平はそのご機嫌が直るまで、いつまでも付き合ったし、叱ると言ったって裕太にはどこまでも甘い周平のすることだから、最大限で「部屋に行って反省しなさい」だとか、「今日は外出は禁止」だとかその程度のことで、大きな声で怒鳴り付けたり、ましてや手を上げたりなどという事があるはずもなかった。
*
生まれたときからずっと、裕太にとって周平とはそういう存在だった。
裕太には、周平が頭を撫でる優しい手を思い出すことは出来ても、力ずくで何かを強要したり、自分を手酷く扱うさまなど、想像することもできなかった。
あの小さなアパートで、周平の夜の秘密を知ったときでさえ、裕太は覆いかぶさってくるその大きな体を怖いとは思わなかった。
思いもよらない状況に混乱はしたが、触れる手や唇の温もりを、なんだか懐かしいような、ひどく安心するような、心地よいものに感じていた。
そしてそれが、こうして二人が深く繋がった今もずっと変わらない、周平に対する裕太の認識だった。
2008/02/18 (Mon)
「あ~あ~あ~あ~、お前ら何やってんだよ」
その一瞬の、息の詰まるような静寂を、無遠慮に打ち破ったのは、二人のクラスメイトである芳賀伊吹だった。
あまり空気が読めない体質の芳賀は、諒の尋常でない様子にもまったく気が付かないようで、むしろその口調には、バカをやらかした同級生を面白がるような、おどけた響きがあった。
「藍川ならともかく、廣瀬まで、こんなことやるなんてな」
あはははと、二人の失敗を豪快に笑い飛ばした芳賀に引きずられるように、凍り付いていた教室の雰囲気が和んだ。
「だよなあ、驚いたぜったく、じゃれあいは小学生までにしとけっての」
「おーい、藍川、あんまし、廣瀬に迷惑かけるなよなー」
「廣瀬君って陸上部でしょ、部室で着替えて来なさいよ、先生には言っといてあげるから」
どっと沸きあがった二人を囃し立てる声に、裕太は暗い穴から助け出されたように、ほっと安堵の息を付いた。
「ご、ごめん、みんな驚かせて」
照れ隠しに頭をかきながら、えへへと愛想よく笑って見せた裕太に対して、ようやく我に返った諒は、顔面蒼白で、その体は小刻みに痙攣していた。
「りょう、諒、大丈夫だよ、諒」
裕太は、ハッハッと浅い呼吸を繰り返す諒の耳元で、そっと囁くと、爪が手のひらに食い込むほど強く握り込まれたこぶしを引いて、教室を出た。
「違う、俺は、こんな――違う、アイツとは違うんだ、違う…………」
ほとんど聞き取れないほど低い声でぶつぶつと呟やく諒は、裕太の目には、酷く何かを怖がっているように見えた。
その一瞬の、息の詰まるような静寂を、無遠慮に打ち破ったのは、二人のクラスメイトである芳賀伊吹だった。
あまり空気が読めない体質の芳賀は、諒の尋常でない様子にもまったく気が付かないようで、むしろその口調には、バカをやらかした同級生を面白がるような、おどけた響きがあった。
「藍川ならともかく、廣瀬まで、こんなことやるなんてな」
あはははと、二人の失敗を豪快に笑い飛ばした芳賀に引きずられるように、凍り付いていた教室の雰囲気が和んだ。
「だよなあ、驚いたぜったく、じゃれあいは小学生までにしとけっての」
「おーい、藍川、あんまし、廣瀬に迷惑かけるなよなー」
「廣瀬君って陸上部でしょ、部室で着替えて来なさいよ、先生には言っといてあげるから」
どっと沸きあがった二人を囃し立てる声に、裕太は暗い穴から助け出されたように、ほっと安堵の息を付いた。
「ご、ごめん、みんな驚かせて」
照れ隠しに頭をかきながら、えへへと愛想よく笑って見せた裕太に対して、ようやく我に返った諒は、顔面蒼白で、その体は小刻みに痙攣していた。
「りょう、諒、大丈夫だよ、諒」
裕太は、ハッハッと浅い呼吸を繰り返す諒の耳元で、そっと囁くと、爪が手のひらに食い込むほど強く握り込まれたこぶしを引いて、教室を出た。
「違う、俺は、こんな――違う、アイツとは違うんだ、違う…………」
ほとんど聞き取れないほど低い声でぶつぶつと呟やく諒は、裕太の目には、酷く何かを怖がっているように見えた。
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作中登場する組織名、人物名等は創作であり、実在のものとはいっさい関係ありません。
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商品紹介
コイビト遊戯・しおり-短編・他-
コイビト遊戯・しおり-長編-
長編
一人墜落[大貴×裕太]0/1/2/3/4/5/6/7/8/9/10(完)
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依存症[周平×裕太]0/1/2/3/4/5/6/7/8/9/10(完)