BL版権物の二次創作ブログです。現在『メイド*はじめました』で活動中です。
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名前:うさこ
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好き:甘々、主人公総受け
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2008/02/23 (Sat)
「どうだろうな、それは」
心配を杞憂だと笑った裕太に対して、しかし周平の声は深く、確信に満ちていた。
「少なくとも、俺たちの隣に住んでたころはそうじゃなかったけどな」
裕太が言わんとするようなことは、当然周平も十分良く分かっていた。
昔からこまっしゃくれて、かわいげのない子供だった諒が、今も小ざかしく、裕太にあれこれと口出ししているだろうことは、容易に想像がついた。
そして、そのさかしらな苦言こそが、諒を警戒する理由そのものなのだと、周平は裕太にやさしく理解させる必要があった。
「隣にって……それ、俺が小学生の頃だよ、そんな昔に何かあったっけ?」
何も分らないと小首をかしげた裕太の頬を、周平の手がやんわりと包んだ。
「アレはな、俺の目を盗んで、お前を外に連れ出す常習犯だったんだよ」
心配を杞憂だと笑った裕太に対して、しかし周平の声は深く、確信に満ちていた。
「少なくとも、俺たちの隣に住んでたころはそうじゃなかったけどな」
裕太が言わんとするようなことは、当然周平も十分良く分かっていた。
昔からこまっしゃくれて、かわいげのない子供だった諒が、今も小ざかしく、裕太にあれこれと口出ししているだろうことは、容易に想像がついた。
そして、そのさかしらな苦言こそが、諒を警戒する理由そのものなのだと、周平は裕太にやさしく理解させる必要があった。
「隣にって……それ、俺が小学生の頃だよ、そんな昔に何かあったっけ?」
何も分らないと小首をかしげた裕太の頬を、周平の手がやんわりと包んだ。
「アレはな、俺の目を盗んで、お前を外に連れ出す常習犯だったんだよ」
お前は覚えていないだろうけど、と前置きして周平は続けた。
「熱があるから寝てなきゃいけないって言うのに、アレが誘いに来るとお前は外に行きたいって駄々こねるんだ。ダメだって言ってもちょっと目を離すと、ベッドから抜け出して、勝手に外に出たりしてな、本当に大変だったんだぞ……そうそう、一度なんか、外出した先で勝手にお前を連れて行ったこともあった……まったく、あの時は、誘拐されたのかと思って、寿命が縮んだよ」
言いながら周平は、そのときのことを思い出して、ぶるりと背を震わせた。
思えばあれが、裕太を失う恐怖と諒の存在とが、周平の中で等号で結びついた瞬間だったのかもしれない。
「一度きつく注意したんだけど、それでも直らなくて……ったく、その度に俺がどれだけ探し回ったか」
周平は裕太の薄い体を抱く腕に、ギュッと力を込めた。
そうして閉じ込めておかなければ、裕太はどこか遠くへ連れ去られてしまうのだと、固く信じているようだった。
*
「諒を、注意した……そんなことあったんだ」
裕太は、背後からきつく抱きしめてくる周平の腕にそっと手を重ねた。
昔話を持ち出されると、裕太は弱かった。
裕太にとっては思い出の遥か向こう側にあるような出来事も、11も年が上の周平は、まるで昨日のことのように鮮明に記憶しているのだ。
そういう、自分が忘れてしまったような些細な過去でも、周平の中では、二人で過ごした確かな時間として、確実に積み重ねられているのだと思うと、裕太は少し胸の詰まるような思いがした。
「ああ、ちょうど夏休みで、俺はお前と二人で買い物に出たんだけど、そのスーパーからアレが黙ってお前を連れ去ったんだよ……本当に、あの時の事を思い出すと、今でもぞっとするよ」
まったく覚えのない話だったが、周平が言うのなら事実に違いないと、裕太はすぐに信じた。
「それで、兄ちゃんが諒を怒ったの?」
言いながら裕太は、怒った周平と言うものを精一杯想像してみようとした。
思い付いたのは、周平のお見合いを邪魔してアパートに連れて帰った自分を見た、あのじっと底冷えのするような暗い瞳だった。
周平があんな目で裕太を見たのは、後にも先にも、あのとき一度きりだった。
*
「ああ、当然だろう、きつく叱ったよ。だけどお前は、状況が良くわかってなかったんだろうな、諒を注意してる俺を、不思議そうな顔して見てたから」
どうせ何も覚えてないだろうと、周平が酷く優しい口調で言った。
「うん……覚えてない」
その裕太の返事に、周平は何故か満足そうに微笑んだ。
「裕太はそれでいいんだよ…………だけど、そういうお前を、言葉巧みに唆すようなやつだから、俺は諒が嫌いなんだ」
頬を撫でる周平の大きな手のひらに頭を預けたまま、裕太は目を閉じて記憶の底を探った。
しかし、その網にかかるものは何一つなかった。
「ひょっとしたら、アレは俺が注意したことを、いまだに執念深く根に持ってるのかもな」
周平が導き出して見せたその結論は、裕太にはいかにもありえることのように思えた。
頭のいい諒のことだ、裕太がすっかり忘れているような些細な出来事も、しっかり記憶していて不思議はない。
なにしろ、それで周平と諒が対立している理由が、一つに繋がるのだ。
「そっか、そうだね」
裕太は周平の言葉にすっかり納得した。
「熱があるから寝てなきゃいけないって言うのに、アレが誘いに来るとお前は外に行きたいって駄々こねるんだ。ダメだって言ってもちょっと目を離すと、ベッドから抜け出して、勝手に外に出たりしてな、本当に大変だったんだぞ……そうそう、一度なんか、外出した先で勝手にお前を連れて行ったこともあった……まったく、あの時は、誘拐されたのかと思って、寿命が縮んだよ」
言いながら周平は、そのときのことを思い出して、ぶるりと背を震わせた。
思えばあれが、裕太を失う恐怖と諒の存在とが、周平の中で等号で結びついた瞬間だったのかもしれない。
「一度きつく注意したんだけど、それでも直らなくて……ったく、その度に俺がどれだけ探し回ったか」
周平は裕太の薄い体を抱く腕に、ギュッと力を込めた。
そうして閉じ込めておかなければ、裕太はどこか遠くへ連れ去られてしまうのだと、固く信じているようだった。
*
「諒を、注意した……そんなことあったんだ」
裕太は、背後からきつく抱きしめてくる周平の腕にそっと手を重ねた。
昔話を持ち出されると、裕太は弱かった。
裕太にとっては思い出の遥か向こう側にあるような出来事も、11も年が上の周平は、まるで昨日のことのように鮮明に記憶しているのだ。
そういう、自分が忘れてしまったような些細な過去でも、周平の中では、二人で過ごした確かな時間として、確実に積み重ねられているのだと思うと、裕太は少し胸の詰まるような思いがした。
「ああ、ちょうど夏休みで、俺はお前と二人で買い物に出たんだけど、そのスーパーからアレが黙ってお前を連れ去ったんだよ……本当に、あの時の事を思い出すと、今でもぞっとするよ」
まったく覚えのない話だったが、周平が言うのなら事実に違いないと、裕太はすぐに信じた。
「それで、兄ちゃんが諒を怒ったの?」
言いながら裕太は、怒った周平と言うものを精一杯想像してみようとした。
思い付いたのは、周平のお見合いを邪魔してアパートに連れて帰った自分を見た、あのじっと底冷えのするような暗い瞳だった。
周平があんな目で裕太を見たのは、後にも先にも、あのとき一度きりだった。
*
「ああ、当然だろう、きつく叱ったよ。だけどお前は、状況が良くわかってなかったんだろうな、諒を注意してる俺を、不思議そうな顔して見てたから」
どうせ何も覚えてないだろうと、周平が酷く優しい口調で言った。
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「そっか、そうだね」
裕太は周平の言葉にすっかり納得した。
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