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BL版権物の二次創作ブログです。現在『メイド*はじめました』で活動中です。
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自己紹介

  名前:うさこ
  萌属性:血縁、年の差、アホ子受、ワンコ攻
  好き:甘々、主人公総受け
  嫌い:イタい子
  イチオシ:安元洋貴ボイズ

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午後五時を過ぎて、天国屋本社ビルは、急に人の出入りが激しくなった。
ロビーで立ち話する周平に、外回りから戻った営業と、定時に上がるOLとが、交互に声をかけて行く。
頷いたり、片手を上げたりと、愛想よく返事を返す周平に、京屋がそっと顔を近づけた。
「その外面に、男も女も騙される」
「――――用が無いなら、さっさと帰れ」
周平は笑顔のまま、口を開けずに言った。
「用? あるよー」
京屋はおもむろにジャケットの内側を探ると、名刺入れを取り出した。
黒皮に青海波の小紋が型押しされた、少し変わったデザインだった。
「去年オヤジ死んでさぁー、俺、一応社長って事になったんで、よろしく」
「お前が社長? それは大変だな――――会社が」
皮肉を言った周平に、京屋はへっと鼻で笑った。
「ご心配なく、実権はオフクロが握ってるよ。俺は名ばかり社長で、実質は使いっぱしりの営業」
突然頭上で始まった名刺交換に、裕太はあんぐりと口を開けた。
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――人間の体って、何から出来てるか知ってる?
まだ小学校に上がったばかりの裕太に向かって、真顔でそんなことを聞くような……今から十年も前の京屋惣太郎は、そういう、少し変わったところのある男だった。
*
夏休みの藍川邸は例のごとく、長期旅行に出かけた両親は不在で、残された子供達の、周平はいたって上機嫌。六つになったばかりの裕太も、最初は母親を恋しがってぐずぐずしていたが、三日目にはもうすっかり落ち着いて、普段通りの生活を取り戻していた。
*
親の留守中、家が子供の溜まり場になるのは、どこにでも良くある話だろう。
しかし、「溜まり場」といっても、そこは周平自ら「付き合うに相応しい」と判断した友人の、さらに自宅にまで上げるような、特別な者達のことだから、敷屋を、深夜0時の渋谷センター街と混同するような、頭の悪い人間は一人も居なかった。
「類は友を――」の格言通り、三々五々、思い思いの手土産を持って、祐天寺の屋敷に集まってくる友人達はみな、周平と良く似た……多少エリート意識が鼻につかないでもない……個性と、年に似合わぬ風格の持ち主ばかりだった。
「こんにちは」
裕太がぺこっと頭を下げると、すっかり顔なじみになった壮年の警備員は目元をほころばせて、官帽のつばに手をあてた。
自動の回転扉から、裕太の背中にくっ付くようにして天国屋本社ビルに入ってきた男は、それに気が付くと「どうもー、お世話様でーす」と、調子のいい声を張り上げた。
「……知り合いですか? あの警備員さん」
「いや、知らない」
「え…………」
あっけに取られた裕太の頭を、男がくしゃっと撫でた。
「しかし、ホントにいいコだな裕太くんは。ちゃんと自分から挨拶できるなんて、周平の教育の賜物か?」
「ちょ、ちょっと…………あの、オレ高校生なんですけど」
裕太が迷惑そうな顔で身をよじっても、男は全く悪びれなかった。
「うん、だね。それが?」
「だ、だから、挨拶ぐらい…………」
「出来て当たり前って? それが、そうでもないんだよなー。特に、最近の若いのはね、困ったもんだよ」
「最近の……若いの…………?」
「兄ちゃんが、いいって言ったら、オレ行くから――――ちょっとだけ、待ってください!」
本気で周平に連絡しようと携帯を開いた裕太の手を、男が押さえた。
「おぉっと、それだけは勘弁してよ、裕太君」
「え、なんで……あの、大丈夫です。兄ちゃん仕事中でも、オレからの着信は絶対取るから、すぐに……」
「いや、いや、いや、いや――だから、それがまずいんだって。あいつ、裕太君の事になると、ホント、頭おかしいから。こんなことバレたら、何されるかわからない」
降参するように軽く両手を広げた男を、裕太は驚いて見上げた。
「え? 兄ちゃん、知ってるんですか」
「そりゃー知ってるさ、同級生なんだから…………って、裕太くん。ひょっとして、まだ、俺が誰か分かってないの?」
じっと顔を覗きこまれた裕太は、子犬のような上目使いで、こくんと頷いた。
「えぇ!! ひっどいなー、それ! 裕太君って、意外と薄情なんだ。あんなに可愛がってあげた、おニイさんを忘れちゃうなんて、あぁ、もうがっかりだなぁ!」
大げさな仕草で額に手をあてた男に、裕太はびくっと肩を縮こませた。
「ご、ご、ごめんなさい……」
「なーんて――――――、うっそ」
「え……」
「カワイイ裕太君に忘れられてて、寂しかったから、ちょっとからかっただけ」
ぽかんと口をあけた裕太に、男はふざけた調子で方目をつぶった。
「ネェネェ、君、ちょっと」
池袋の駅前で、そんな風に声をかけてくる男が、どんな種類の人間か――そんなことぐらい、いくら世間知らずの裕太でも、さすがに知っている。
キャッチなのか、宗教なのか、セールスなのか……、そこまではわからないが、少なくとも、足を止めて話を聞くべき手合いでないことは間違いない。
裕太は、男の顔が視界に入らない程度にうつむくと、わずかに足を速めた。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
無視して通り過ぎようとした裕太に、男は慌てて追いすがった。
「君、裕太君だろ? 天国屋の次男坊の、藍川裕太君だよね?」
「え……」
「やっぱり、裕太くんだ」
名前を呼ばれて、思わず立ち止まった裕太に、浅黒い肌の男が、人工的なほど白い歯を見せて笑った。
短く刈り揃えられた髪と、ブルーグレーのサマースーツが、焼けた肌に良く似合う、サッカー選手のような男だった。
「いやー、大きくなったね、見違えたよ」
ぽんと嬉しそうに肩を叩いたその男を、やはり裕太は知らなかった。
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