BL版権物の二次創作ブログです。現在『メイド*はじめました』で活動中です。
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名前:うさこ
萌属性:血縁、年の差、アホ子受、ワンコ攻
好き:甘々、主人公総受け
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2008/05/28 (Wed)
「裕太、おいで」
車から降りると、周平は指を曲げて裕太を呼んだ。
トコトコと近付いてきた裕太の顎に手を添えて上向かせる。
「タイは?」
シャツの襟を上げながら周平が聞いた。
「ん、ポケット」
周平の長い指が、制服の胸ポケットに丸めて押し込まれていた濃紺の塊りを摘みげる。
しゅるりと首の後ろに回された、ネクタイの結び方を、裕太はもうすっかり忘れているだろう。
目を閉じて、されるがまま身を任せている。
襟を戻し、シャツのボタンをはめ、大きな手がするすると流れるような動きで、ウィンザー・ノットの正三角形の結び目を作り上げて行く。
「さあ、いいぞ」
「うん」
周平の言葉を合図に、裕太は目を開けた。
視線を合わせてにっこりと微笑みあった兄弟を、車の屋根に肘をついた京屋が、面白そうに眺めていた。
車から降りると、周平は指を曲げて裕太を呼んだ。
トコトコと近付いてきた裕太の顎に手を添えて上向かせる。
「タイは?」
シャツの襟を上げながら周平が聞いた。
「ん、ポケット」
周平の長い指が、制服の胸ポケットに丸めて押し込まれていた濃紺の塊りを摘みげる。
しゅるりと首の後ろに回された、ネクタイの結び方を、裕太はもうすっかり忘れているだろう。
目を閉じて、されるがまま身を任せている。
襟を戻し、シャツのボタンをはめ、大きな手がするすると流れるような動きで、ウィンザー・ノットの正三角形の結び目を作り上げて行く。
「さあ、いいぞ」
「うん」
周平の言葉を合図に、裕太は目を開けた。
視線を合わせてにっこりと微笑みあった兄弟を、車の屋根に肘をついた京屋が、面白そうに眺めていた。
「お待ちしておりました」
直前の電話で飛び込んできた三人を、マネージャーが愛想よく迎えてくれたのは、周平とオーナーの孫であるということよりも、むしろ、レストランの常連であることの方が、理由として大きかったのかもしれない。
しかし、無理を言って申し訳ない、と謝った周平を、本日は個室に空きが御座います、と最奥のプライベートルームに案内したのは、確かに「顧客に対する心遣い」の域を超えていた。
わざわざ断る理由も無いから、周平は、ただ「ありがとう」とだけ言って、その好意を受けたが、呆れたと言わんばかりに、両手を広げて天を仰いだ京屋のオーバーアクションを見ると、肩をすくめて苦笑した。
*
「あ、オレはいいです」
すっと目の前に差し出されたメニューを、裕太は小さく手を振って断った。
皮のメニューブックとにらめっこしていた京屋は、うーんと眉間にしわを寄せた表情のまま顔を上げた。
「どうしたの、裕太くん、メニュー見ないの?」
「うん、オレのは兄ちゃんが決めてくれるから、いいんだ」
「え、そんなの有りー?」
「有りだよ、だってオレ見たってわかんないもん」
あっけらかんと裕太は言った。
開き直っているのではなく、単純にそう信じ込んでいる顔だった。
「惣ちゃんも面倒ならそうしたら」
裕太は無邪気に進めた。
京屋は、うへっとカエルが潰れたような声を出すと、ブルブルと身震いした。
「冗談、周平に決められるなんて。俺は、失敗してもいいから自分で決めるよ」
「ふーん? そう?」
無理しなくてもいいのに、とまるで哀れむような視線を向けられて、京屋は笑った。
「変かな?」
「え?!」
「自分のことを自分で決めたいと思うのは、変?」
「別に、変じゃないけど……」
「裕太君は、そうしたいと思わないの?」
「オレ?」
裕太は驚いて目をパチクリさせた。
「なんで? 兄ちゃんが選んでくれるの、いつも美味しいよ?」
「裕太、いいよ、好きにさせれば」
周平が二人の会話を中断させた。
チラリと目線を送ってウエーターを呼ぶと、あちらを頼む、と京屋の方へ手のひらを向けた。
「分からなければ、相談して決めれば良い。彼は専門家だ」
「それはどーも」
京屋は芝居がかった態度で周平に礼を言った。
「次は、俺の行きつけの料亭に招待するよ」
「次? そんなものあるか」
「あ、そ、お前が嫌だって言うなら、別に裕太君だけ招待してもいいんだけど」
「させるわけないだろ」
食前酒の無い裕太は、水の入ったグラスを傾けながら、二人のやり取りを聞いたた。
「さぁて、ね、裕太くん、今度はさ、神楽坂の料亭に連れてってあげる」
「料亭……?」
「そ、行ったことある?」
裕太はぷるぷると首を振った。
「俺のホームだから、安心して全部任せればいいよ。なんなら、綺麗どころ呼んであげ――」
「京屋」
周平の目がギラリと光った。
「なーんていうのは、冗談としても……さ、とりあえず、今日の挽回させて」
「挽回?」
「そ、今日の俺って、あんまかっこよくないだろ? だからさ、今度はかっこつけさせてよ」
「ふーん?」
そんなこと言うぐらいなら、変な意地張らないで、素直に兄ちゃんに頼ればいいのに、と裕太は京屋の理解できないこだわりに内心首をかしげた。
直前の電話で飛び込んできた三人を、マネージャーが愛想よく迎えてくれたのは、周平とオーナーの孫であるということよりも、むしろ、レストランの常連であることの方が、理由として大きかったのかもしれない。
しかし、無理を言って申し訳ない、と謝った周平を、本日は個室に空きが御座います、と最奥のプライベートルームに案内したのは、確かに「顧客に対する心遣い」の域を超えていた。
わざわざ断る理由も無いから、周平は、ただ「ありがとう」とだけ言って、その好意を受けたが、呆れたと言わんばかりに、両手を広げて天を仰いだ京屋のオーバーアクションを見ると、肩をすくめて苦笑した。
*
「あ、オレはいいです」
すっと目の前に差し出されたメニューを、裕太は小さく手を振って断った。
皮のメニューブックとにらめっこしていた京屋は、うーんと眉間にしわを寄せた表情のまま顔を上げた。
「どうしたの、裕太くん、メニュー見ないの?」
「うん、オレのは兄ちゃんが決めてくれるから、いいんだ」
「え、そんなの有りー?」
「有りだよ、だってオレ見たってわかんないもん」
あっけらかんと裕太は言った。
開き直っているのではなく、単純にそう信じ込んでいる顔だった。
「惣ちゃんも面倒ならそうしたら」
裕太は無邪気に進めた。
京屋は、うへっとカエルが潰れたような声を出すと、ブルブルと身震いした。
「冗談、周平に決められるなんて。俺は、失敗してもいいから自分で決めるよ」
「ふーん? そう?」
無理しなくてもいいのに、とまるで哀れむような視線を向けられて、京屋は笑った。
「変かな?」
「え?!」
「自分のことを自分で決めたいと思うのは、変?」
「別に、変じゃないけど……」
「裕太君は、そうしたいと思わないの?」
「オレ?」
裕太は驚いて目をパチクリさせた。
「なんで? 兄ちゃんが選んでくれるの、いつも美味しいよ?」
「裕太、いいよ、好きにさせれば」
周平が二人の会話を中断させた。
チラリと目線を送ってウエーターを呼ぶと、あちらを頼む、と京屋の方へ手のひらを向けた。
「分からなければ、相談して決めれば良い。彼は専門家だ」
「それはどーも」
京屋は芝居がかった態度で周平に礼を言った。
「次は、俺の行きつけの料亭に招待するよ」
「次? そんなものあるか」
「あ、そ、お前が嫌だって言うなら、別に裕太君だけ招待してもいいんだけど」
「させるわけないだろ」
食前酒の無い裕太は、水の入ったグラスを傾けながら、二人のやり取りを聞いたた。
「さぁて、ね、裕太くん、今度はさ、神楽坂の料亭に連れてってあげる」
「料亭……?」
「そ、行ったことある?」
裕太はぷるぷると首を振った。
「俺のホームだから、安心して全部任せればいいよ。なんなら、綺麗どころ呼んであげ――」
「京屋」
周平の目がギラリと光った。
「なーんていうのは、冗談としても……さ、とりあえず、今日の挽回させて」
「挽回?」
「そ、今日の俺って、あんまかっこよくないだろ? だからさ、今度はかっこつけさせてよ」
「ふーん?」
そんなこと言うぐらいなら、変な意地張らないで、素直に兄ちゃんに頼ればいいのに、と裕太は京屋の理解できないこだわりに内心首をかしげた。
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