ピーピング・トム（2）-周平×裕太＋諒-

「兄ちゃん……」
朝の支度を始めようとベッドの上にそっと身を起こした周平の気配に気が付いて、裕太はうっすらと目をあけた。
薄目を開けて見た周平の広い背中は、朝の柔らかな光を受けて、筋肉の陰影を美しく浮かび上がらせていた。
「なんだ……裕太、起きてたのか」
周平は背後からかかった声に、意外そうに振り返った。
「うん……俺、お風呂入りたい……」
中に出されたものや、体に飛び散った快感の名残は、終わった後に周平が丁寧に始末してくれていたが、学校へ行く前に一度、体を洗っておきたかった。

「……体は大丈夫か？　辛くないか？」
裕太のお願いに返事をしないまま、周平は隣で横になっている裕太の体を確かめるように、太ももから胸へと向かって、ゆっくりとシーツの上を撫で上げた。
周平は、二人の関係が深くなってからどれだけ時間がたっても、体を繋げた後には必ずそう聞いてきた。
裕太は、熱を受け入れることに痛みも恐怖も感じなくなった今でも、そうやって気遣ってくれる周平の優しさが嬉しくて、その腕に甘えかかった。
「うん、平気……けど、汗かいたままだから、ちょっと気持ち悪い」
なんだか、皮膚の上にもう一枚何かが被さっているような、もどかしい不快感に、裕太は眉をハの字にして、周平に訴えた。
「……わかったよ」
裕太の上目使いのおねだりに、周平は負けたよ、とでもいうように小さくため息をついた。
「ありがと、兄ちゃん」
裕太はにっこりと笑って、横抱きに抱き上げようとする周平の首に、自然な所作で手を回した。
こんな風に、まるで赤ん坊かお姫様のように扱われることに、裕太はもうすっかり慣れてしまっていた。
「裕太は、いつまでたっても、甘えん坊だな」
周平はそんな態度に嬉しそうに目を細めると、裕太の髪に鼻を埋めて名残惜しげに、その香りをかいだ。
裕太も大人しくされるがままになって、コトリと周平の肩に頭を預けた。
朝影に背を向けて、二人はしばらくの間、じっとそうして互いの存在を感じあっていた。