BL版権物の二次創作ブログです。現在『メイド*はじめました』で活動中です。
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2008/08/22 (Fri)
お盆休み直前の品川駅は、人の波でごったがえしていた。
パンパンに膨らんだスポーツバッグを肩にかけ時刻表を見上げる大学生、両手に荷物と子供を抱えて出発前からクタクタな様子の母親、みどりの窓口は指定席を求める人たちの長い列でどこもいっぱいだ。
帰るべき田舎を持たない裕太は、新幹線改札前の柱に背中を預けて、そんな帰省ラッシュをどこか不思議そうな面持ちで眺めている。
――ひかり 360 10:04 東京
パッと切り替わった電子掲示板を見上げて、諒が裕太の肩を叩いた。
「裕太、着いたみたいだぞ」
「えっ! どこ、どこ、兄ちゃん、どこ?!」
裕太は群衆の中に周平の姿を探そうと、ぴょんぴょんと飛び上がった。
「ちょっと裕太、落ち着けよ。まだだよ、今ホームに新幹線が着いたってこと」
「な、なんだ、そっか」
えへへ、と照れくさそうに笑った裕太を、諒は複雑な面持ちで見下ろした。
「…………裕太さ、本当にアイツ、好きなの?」
「アイツ? 兄ちゃんのこと? うん、好きだよ、大好き!」
裕太は何の迷いもなく頷いた。
「あたりまえじゃん、だって、オレの兄ちゃんなんだから。好きに決まってるよ」
「決まって、るんだ……」
「うん、決まってる」
「そ……っか……」
裕太の邪気のない言葉は、諒の胸に刺さった。
裕太に対しては優しい顔しか見せない周平の正体が、実はモンスターなのだと……ただ諒だけが、その事実を知っていた。
諒は心臓の痛みをこらえて、強くこぶしを握った。
「じゃあ……俺、これで帰るから……」
「え? 兄ちゃん、もうすぐ来るよ?」
「うん、だから俺は……もういいだろ」
諒は困惑する裕太の視線を避けるように、下を向いて言った。
そのまま改札口から離れ、ぽつぽつと数歩進んでから、思い出したように振り返る。
「諒……?」
「裕太、絶対そこから動くなよ」
「え?」
「アイツ探して、歩き回ったりするなってこと。そこに立ってれば、あっちが勝手にお前見つけるから」
それだけ言うと、諒はじゃあなと最後に一度だけ手を振って、人ごみの中に姿を消した。
「あ、諒――――」
一人残された裕太はしばらく雑踏の中に諒の背中を探していたが、やがて諦めて、ひんやりと冷たい石の柱に、もう一度背中を押し当てた。
伝え忘れた「ありがとう」の言葉は、口の中だけで小さく言った。
パンパンに膨らんだスポーツバッグを肩にかけ時刻表を見上げる大学生、両手に荷物と子供を抱えて出発前からクタクタな様子の母親、みどりの窓口は指定席を求める人たちの長い列でどこもいっぱいだ。
帰るべき田舎を持たない裕太は、新幹線改札前の柱に背中を預けて、そんな帰省ラッシュをどこか不思議そうな面持ちで眺めている。
――ひかり 360 10:04 東京
パッと切り替わった電子掲示板を見上げて、諒が裕太の肩を叩いた。
「裕太、着いたみたいだぞ」
「えっ! どこ、どこ、兄ちゃん、どこ?!」
裕太は群衆の中に周平の姿を探そうと、ぴょんぴょんと飛び上がった。
「ちょっと裕太、落ち着けよ。まだだよ、今ホームに新幹線が着いたってこと」
「な、なんだ、そっか」
えへへ、と照れくさそうに笑った裕太を、諒は複雑な面持ちで見下ろした。
「…………裕太さ、本当にアイツ、好きなの?」
「アイツ? 兄ちゃんのこと? うん、好きだよ、大好き!」
裕太は何の迷いもなく頷いた。
「あたりまえじゃん、だって、オレの兄ちゃんなんだから。好きに決まってるよ」
「決まって、るんだ……」
「うん、決まってる」
「そ……っか……」
裕太の邪気のない言葉は、諒の胸に刺さった。
裕太に対しては優しい顔しか見せない周平の正体が、実はモンスターなのだと……ただ諒だけが、その事実を知っていた。
諒は心臓の痛みをこらえて、強くこぶしを握った。
「じゃあ……俺、これで帰るから……」
「え? 兄ちゃん、もうすぐ来るよ?」
「うん、だから俺は……もういいだろ」
諒は困惑する裕太の視線を避けるように、下を向いて言った。
そのまま改札口から離れ、ぽつぽつと数歩進んでから、思い出したように振り返る。
「諒……?」
「裕太、絶対そこから動くなよ」
「え?」
「アイツ探して、歩き回ったりするなってこと。そこに立ってれば、あっちが勝手にお前見つけるから」
それだけ言うと、諒はじゃあなと最後に一度だけ手を振って、人ごみの中に姿を消した。
「あ、諒――――」
一人残された裕太はしばらく雑踏の中に諒の背中を探していたが、やがて諦めて、ひんやりと冷たい石の柱に、もう一度背中を押し当てた。
伝え忘れた「ありがとう」の言葉は、口の中だけで小さく言った。
「兄ちゃん、兄ちゃん、兄ちゃん……」
まるで、何かのまじないのように、ぶつぶつと繰り返しながら、改札から溢れてくる人波に、裕太は周平の姿を探した。
どんな場所にいても、頭半分は飛びぬける長身の周平だから、見つけ出すのはごく簡単な事のように思えた。
一方、まだ小学生で、中でも小さい部類に入れられてしまうだろう裕太は、こんなひしめき合いの中では、押しつぶされて自分の意志で動くこともままならなくなってしまう。
裕太は諒の忠告に従って柱の前から動かず、視線だけを懸命に動かした。
自動改札の向こう側に、どこか見覚えあるようなスーツの紺地がチラリと見える。
あ、と思わず裕太は声を上げた。
周平が二ヶ月の新人研修期間を終え名古屋に転勤になる朝、着ていたスーツがちょうどあんな紺色だった。
行かないでと駄々をこね、しがみ付いたウール地の柔らかな感触が、裕太の頬に甦る。
間違いない。
裕太は確信した。
追いかけなくてはと慌てて一歩踏み出した瞬間、ふいに大きな壁が裕太の視界を遮った。
「ちょ、ちょっと……どいて……」
脇をすり抜け、駆け出そうとする裕太の手首を、それの二周りは大きいだろう分厚い手のひらがぐっと掴んだ。
「な、に……」
「裕太」
「え……」
「どこ行くんだ、裕太。兄ちゃんを迎えに来てくれたんじゃないのか?」
「…………」
「ただいま、裕太」
「あ……」
「裕太? おかえりなさいは?」
「あの…………」
「なんだ、三ヶ月ぶりだけど、裕太はちっとも変わってないんだな」
おかえりも言えずに固まってしまった裕太を見下ろして、周平は笑った。
羽織ったサマージャケットの、明るいサックスカラーをそのまま映したような、爽快な微笑だった。
まるで、何かのまじないのように、ぶつぶつと繰り返しながら、改札から溢れてくる人波に、裕太は周平の姿を探した。
どんな場所にいても、頭半分は飛びぬける長身の周平だから、見つけ出すのはごく簡単な事のように思えた。
一方、まだ小学生で、中でも小さい部類に入れられてしまうだろう裕太は、こんなひしめき合いの中では、押しつぶされて自分の意志で動くこともままならなくなってしまう。
裕太は諒の忠告に従って柱の前から動かず、視線だけを懸命に動かした。
自動改札の向こう側に、どこか見覚えあるようなスーツの紺地がチラリと見える。
あ、と思わず裕太は声を上げた。
周平が二ヶ月の新人研修期間を終え名古屋に転勤になる朝、着ていたスーツがちょうどあんな紺色だった。
行かないでと駄々をこね、しがみ付いたウール地の柔らかな感触が、裕太の頬に甦る。
間違いない。
裕太は確信した。
追いかけなくてはと慌てて一歩踏み出した瞬間、ふいに大きな壁が裕太の視界を遮った。
「ちょ、ちょっと……どいて……」
脇をすり抜け、駆け出そうとする裕太の手首を、それの二周りは大きいだろう分厚い手のひらがぐっと掴んだ。
「な、に……」
「裕太」
「え……」
「どこ行くんだ、裕太。兄ちゃんを迎えに来てくれたんじゃないのか?」
「…………」
「ただいま、裕太」
「あ……」
「裕太? おかえりなさいは?」
「あの…………」
「なんだ、三ヶ月ぶりだけど、裕太はちっとも変わってないんだな」
おかえりも言えずに固まってしまった裕太を見下ろして、周平は笑った。
羽織ったサマージャケットの、明るいサックスカラーをそのまま映したような、爽快な微笑だった。
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