BL版権物の二次創作ブログです。現在『メイド*はじめました』で活動中です。
自己紹介
名前:うさこ
萌属性:血縁、年の差、アホ子受、ワンコ攻
好き:甘々、主人公総受け
嫌い:イタい子
イチオシ:安元洋貴ボイズ
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2008/08/07 (Thu)
「裕太、どうしたんだよ、今日は算数やるって約束だっただろ?」
ノートも鉛筆も持たず、手ぶらで部屋に入ってきた裕太を見ると、諒は不審げに眉を寄せた。
午前中は宿題を、遊びは午後から……それが諒と裕太が約束した夏休みの日課だったからだ。
「うん……」
裕太は諒の問いかけにあいまいに頷くと、そのまま入り口の扉に背を預けて、モジモジと足先で床に絵をかいている。
裕太との付き合いが長い諒は、その拗ねた子供のような態度に、ピンと思い当たるものがあった。
「何隠してるんだよ、裕太」
「べ、べ、別にっ、隠してないよっ! 全然! なんにも!」
容赦なく切り込んできた諒に、裕太は目を白黒させた。
「嘘付け。じゃあ何なんだよ、その態度」
「だ、だ、だって、だって諒……絶対怒るんだもん」
「怒る? 何が? 言わなきゃわかんないだろ、言ってみろよ」
「…………えーっと、じゃあさぁー、あのさぁー……」
機嫌を伺うように、チラリと上目使いの視線を送ってきた裕太に、諒は無言のまま続きを促した。
「今日さぁー…………勉強、休んでもいい?」
「…………」
「あっ! ほら、ほらっ、やっぱり怒った!」
「まだ何にも言ってないだろ」
諒は突きつけられた人差し指から視線をそらして、ぷいと横を向いた。
「なんで? 理由は?」
「あのね、今日、兄ちゃん帰ってくるんだ、名古屋から」
「帰って来る……? アイツが……?」
「うん、夏休みなんだって。だからオレ駅まで迎えに行かなきゃいけないんだ」
ホントに勉強をサボりたい訳じゃないんだよ、と裕太は手のひらをパタパタさせながら力説した。
はたから見れば単なる言い訳だが、あまり口のうまくない裕太にとっては、それでも精一杯の口頭弁論なのだ。
そして、諒が顔を白くして黙り込んでしまった理由も、裕太にとっては知りようもないことだった。
「……諒やっぱり、怒った?」
裕太は諒の表情を見ようと、扉から離れて隣にぺたりと膝をついた。
座った拍子に偶然肘が触れ合うと、諒の体がビクリと跳ねた。
「ねえ、諒……怒った?」
「…………怒ってないよ」
「ホント?」
「嘘付いてどうなるんだよ。……何時に行くんだ? 駅って新幹線だろ?」
諒に質問されて、裕太の顔がほっと安心したようにほころんだ。
ノートも鉛筆も持たず、手ぶらで部屋に入ってきた裕太を見ると、諒は不審げに眉を寄せた。
午前中は宿題を、遊びは午後から……それが諒と裕太が約束した夏休みの日課だったからだ。
「うん……」
裕太は諒の問いかけにあいまいに頷くと、そのまま入り口の扉に背を預けて、モジモジと足先で床に絵をかいている。
裕太との付き合いが長い諒は、その拗ねた子供のような態度に、ピンと思い当たるものがあった。
「何隠してるんだよ、裕太」
「べ、べ、別にっ、隠してないよっ! 全然! なんにも!」
容赦なく切り込んできた諒に、裕太は目を白黒させた。
「嘘付け。じゃあ何なんだよ、その態度」
「だ、だ、だって、だって諒……絶対怒るんだもん」
「怒る? 何が? 言わなきゃわかんないだろ、言ってみろよ」
「…………えーっと、じゃあさぁー、あのさぁー……」
機嫌を伺うように、チラリと上目使いの視線を送ってきた裕太に、諒は無言のまま続きを促した。
「今日さぁー…………勉強、休んでもいい?」
「…………」
「あっ! ほら、ほらっ、やっぱり怒った!」
「まだ何にも言ってないだろ」
諒は突きつけられた人差し指から視線をそらして、ぷいと横を向いた。
「なんで? 理由は?」
「あのね、今日、兄ちゃん帰ってくるんだ、名古屋から」
「帰って来る……? アイツが……?」
「うん、夏休みなんだって。だからオレ駅まで迎えに行かなきゃいけないんだ」
ホントに勉強をサボりたい訳じゃないんだよ、と裕太は手のひらをパタパタさせながら力説した。
はたから見れば単なる言い訳だが、あまり口のうまくない裕太にとっては、それでも精一杯の口頭弁論なのだ。
そして、諒が顔を白くして黙り込んでしまった理由も、裕太にとっては知りようもないことだった。
「……諒やっぱり、怒った?」
裕太は諒の表情を見ようと、扉から離れて隣にぺたりと膝をついた。
座った拍子に偶然肘が触れ合うと、諒の体がビクリと跳ねた。
「ねえ、諒……怒った?」
「…………怒ってないよ」
「ホント?」
「嘘付いてどうなるんだよ。……何時に行くんだ? 駅って新幹線だろ?」
諒に質問されて、裕太の顔がほっと安心したようにほころんだ。
「うん! あのね、ひかりだって。10時……えーっと、何分だったか……とにかく、品川駅!」
「ひかりで、品川駅で、時間分からない?」
「わかんなくないよ、10時……ぐらい」
「ぐらいって……まあいいや、おばさんと一緒に行くんだろ?」
「…………」
「裕太?」
「……お母さんには、秘密」
「はぁ? なんで?」
「なんでも、秘密」
「意味わかんないよ、裕太」
「わかんなくていいから、秘密なの」
急にかたくなになってしまった裕太の態度に、諒は今度は何だと眉をひそめた。
裕太は人のいうことに反論したり、反発したりすることの少ない、素直で単純な性格だったが、時々こうして妙に頑固になることがある。
それも、あまり言葉で気持ちを伝えることが上手くない、不器用な所がある裕太だったから、こうなってしまうと、周囲の人間がその理由を聞き出して理解するのも、理解して説得するのも、なかなかに大変な作業なのだ。
口で圧倒的に勝る諒なら、理詰めで押して降参させてしまうことも出来ただろうが……しかし、それは裕太の気持ちを殺してしまうのと同じことだった。
諒は、まったくしょうがないな、と子供らしからぬ分別くさい顔で頷いた。
「わかったよ、秘密なんだ」
「うん、秘密」
「で? どうするの、すぐ行くの?」
「うん、すぐいく。10時――何分だったか……の、ひかりだって」
「時間、ホントに忘れたのか? いい加減だな……行き方は、分かってる?」
「うん、たぶん」
「たぶんって……あのさ裕太、さっきから不安になるようなことばっかり言うなよ」
「だって……えーっと、山手線?」
だよね、と同意を求めるように、裕太は諒の顔を仰ぎ見た。
茶道をはじめ、華道、書道と掛け持ちで習い事をして、一人で外出することに慣れている諒と違って、平凡な小学生でしかない裕太の日常生活は、ほぼ学区内で完結していた。
遠出は車で大人と一緒にが原則だったし、諒と遊びに行くといっても、祐天寺から中目黒にまで出てしまえば、それで大抵のことは片が付いたから、裕太にとって山手線の内側は、ほとんど未知の領域なのだ。
「山手線はあってるけど、そこまではどうやっていくつもり?」
「うーんと、とりあえず目黒駅まで歩いて――」
「歩いて?! 行けるわけないだろ!」
突然大声を上げた諒に、裕太は身を仰け反らせた。
「うぇ? で、でも、そんな遠くないし、10分か20分ぐらいだと……」
「10分も20分も、こんな暑い中、裕太が歩けるはずないだろ! 迷子になって、熱射病で倒れるのがオチだよ!」
諒はイライラしたように叫ぶと、ノートの端をちぎって簡単な路線図をかいた。
「いいか、まず東横線に乗って、それから恵比寿で山手線に乗り換えるんだよ」
言いながら、几帳面な文字で駅名を書き加えてゆく。
「えー、けど乗り換えめんどくさいし……」
「ばかっ! 歩くほうがずっとめんどくさいだろ!」
一喝されて、裕太はうーっとふてくされた。
不満そうに唇を尖らせ、机に肘を付いた裕太の態度に、諒は痛みをこらえるように額を抑えた。
裕太の向こう見ずな無鉄砲さ、無知ゆえの怖いもの知らずに、過去に何度も振り回されてきた経験のある諒は、こういう場面ではとりわけ神経質にならざるをえなかった。
「あー、もう、わかったよ裕太」
諒は思い切ったように言った。
突然すっくと立ち上がると、ぽかんと見上げる裕太に向かって少し怒ったような強い視線を向けた。
「俺が一緒に行くよ、それなら乗り換え、めんどくさくないだろ」
ほら、と手を差し出した諒に、裕太はぱぁっと顔を輝かせた。
「うん! ありがとう、諒!」
ぎゅっと裕太に指先を握られて、諒はほんの少しだけ頬を赤くして俯いた。
「ひかりで、品川駅で、時間分からない?」
「わかんなくないよ、10時……ぐらい」
「ぐらいって……まあいいや、おばさんと一緒に行くんだろ?」
「…………」
「裕太?」
「……お母さんには、秘密」
「はぁ? なんで?」
「なんでも、秘密」
「意味わかんないよ、裕太」
「わかんなくていいから、秘密なの」
急にかたくなになってしまった裕太の態度に、諒は今度は何だと眉をひそめた。
裕太は人のいうことに反論したり、反発したりすることの少ない、素直で単純な性格だったが、時々こうして妙に頑固になることがある。
それも、あまり言葉で気持ちを伝えることが上手くない、不器用な所がある裕太だったから、こうなってしまうと、周囲の人間がその理由を聞き出して理解するのも、理解して説得するのも、なかなかに大変な作業なのだ。
口で圧倒的に勝る諒なら、理詰めで押して降参させてしまうことも出来ただろうが……しかし、それは裕太の気持ちを殺してしまうのと同じことだった。
諒は、まったくしょうがないな、と子供らしからぬ分別くさい顔で頷いた。
「わかったよ、秘密なんだ」
「うん、秘密」
「で? どうするの、すぐ行くの?」
「うん、すぐいく。10時――何分だったか……の、ひかりだって」
「時間、ホントに忘れたのか? いい加減だな……行き方は、分かってる?」
「うん、たぶん」
「たぶんって……あのさ裕太、さっきから不安になるようなことばっかり言うなよ」
「だって……えーっと、山手線?」
だよね、と同意を求めるように、裕太は諒の顔を仰ぎ見た。
茶道をはじめ、華道、書道と掛け持ちで習い事をして、一人で外出することに慣れている諒と違って、平凡な小学生でしかない裕太の日常生活は、ほぼ学区内で完結していた。
遠出は車で大人と一緒にが原則だったし、諒と遊びに行くといっても、祐天寺から中目黒にまで出てしまえば、それで大抵のことは片が付いたから、裕太にとって山手線の内側は、ほとんど未知の領域なのだ。
「山手線はあってるけど、そこまではどうやっていくつもり?」
「うーんと、とりあえず目黒駅まで歩いて――」
「歩いて?! 行けるわけないだろ!」
突然大声を上げた諒に、裕太は身を仰け反らせた。
「うぇ? で、でも、そんな遠くないし、10分か20分ぐらいだと……」
「10分も20分も、こんな暑い中、裕太が歩けるはずないだろ! 迷子になって、熱射病で倒れるのがオチだよ!」
諒はイライラしたように叫ぶと、ノートの端をちぎって簡単な路線図をかいた。
「いいか、まず東横線に乗って、それから恵比寿で山手線に乗り換えるんだよ」
言いながら、几帳面な文字で駅名を書き加えてゆく。
「えー、けど乗り換えめんどくさいし……」
「ばかっ! 歩くほうがずっとめんどくさいだろ!」
一喝されて、裕太はうーっとふてくされた。
不満そうに唇を尖らせ、机に肘を付いた裕太の態度に、諒は痛みをこらえるように額を抑えた。
裕太の向こう見ずな無鉄砲さ、無知ゆえの怖いもの知らずに、過去に何度も振り回されてきた経験のある諒は、こういう場面ではとりわけ神経質にならざるをえなかった。
「あー、もう、わかったよ裕太」
諒は思い切ったように言った。
突然すっくと立ち上がると、ぽかんと見上げる裕太に向かって少し怒ったような強い視線を向けた。
「俺が一緒に行くよ、それなら乗り換え、めんどくさくないだろ」
ほら、と手を差し出した諒に、裕太はぱぁっと顔を輝かせた。
「うん! ありがとう、諒!」
ぎゅっと裕太に指先を握られて、諒はほんの少しだけ頬を赤くして俯いた。
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