忍者ブログ
BL版権物の二次創作ブログです。現在『メイド*はじめました』で活動中です。
10≪ 2024.11|123456789101112131415161718192021222324252627282930 ≫12
自己紹介

  名前:うさこ
  萌属性:血縁、年の差、アホ子受、ワンコ攻
  好き:甘々、主人公総受け
  嫌い:イタい子
  イチオシ:安元洋貴ボイズ

  サイトバナー:リンクフリーです
↓ご自由にお使いください


↑姉妹サイトです(全年齢)

  メールフォーム
リンク

VividColor +メイド*はじめました+


PIL/SLASH +コイビト遊戯+


Spray ピヨたん


Wing Search
最新コメント
[04/05 khh]
[11/08 スガイ]
[02/05 晶 旭]
[01/02 佐倉。]
[12/28 これから買います]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「――で、でも…………」
裕太は、それでもなお俺に抵抗しようと必死で言葉を探していた。
(諒のやつ、また裕太に余計な知恵を付けやがって)
俺は内心で舌打ちした。
あの楽天的な裕太が、俺が会社から帰ったことにも気が付かないほど、深く考え込んでいたから、これは何かあったんだろうとは思ったが、まさかまた諒に余計なことを吹き込まれてきたとは。
俺は子供の頃から何かといっては裕太に付きまとうあの目障りな顔を、苦々しく思い浮かべた。
(本当にアイツは蛇のような餓鬼だ。エデンの園で苦しみを知らずに生きていた無垢な人間に向かって、林檎を食べろとそそのかした蛇そのものだ)
唾を吐きたくなるほどの不快感が心の中を渦巻いていたが、そんな悪感情を裕太には悟られないよう、俺は細心の注意を払って優しい声を作った。
「裕太、兄ちゃんの言うことが信じられないのか?」
いつもだったら俺がここまで言えば、裕太はすぐに降参しているはずだが、今日はどうやら様子が違う。
かわいそうに、諒に言われたことがよほどこたえたのだろう。裕太は俺と目が合わないよう視線をさまよわせながらも、小さな声で反論した。
「あ……でも……兄ちゃんは、ときどき嘘……付く、から……」
おそらく、ありったけの勇気を振り絞ったであろう、裕太のその一言は、一瞬で俺を凍りつかせた。
PR
リビングのソファで膝を抱えて考え込んでいた俺は「ただいま」と言った兄ちゃんの声で、ようやく点けっ放しにしていたテレビが、いつのまにか消されていることに気が付いた。
「……あ、兄ちゃん……お帰りなさい……」
会社から帰ったばかりなのだろう、スーツ姿のまま俺の前に屈み込んでいた兄ちゃんは、そんな心ここにあらずといった具合の俺の返事を聞くと、手にしていたリモコンをテーブルの上に戻して、俺の隣に腰掛けた。
「どうした、裕太? 元気がないな」
ネクタイを緩めながら、まるで駄々をこねてる子供をあやすみたいな口調でそう言って、兄ちゃんは俺の頭をくしゃくしゃと撫でた。
俺はそんな兄ちゃんに反発したくて、わざとぞんざいな口調を作ると「なんでもない」と、ぷいと横を向いて見せた。
だって、俺が考え込んでいたのは、まさにこういう兄ちゃんの態度についてだったんだから。
終業のベルが鳴り、塾や部活にとみな忙しそうに教室を出て行く中、どこかぼんやりと所在なさげに椅子に座ったままでいる裕太に、俺は声をかけた。
「どうした裕太、久しぶりの登校で疲れたか?」
裕太は突然声をかけられて、まるでいま夢から覚めたような顔で、数度目をしばたたかせると、顔を覗き込んだ俺に向かって、恥ずかしそうに笑って見せた。
「――あ、諒。ううん……授業がさっぱりわかんなくてさ、ボーっとしてた」
裕太は頭をポリポリとかきながら、えへへと笑っているけど、その笑顔には力がない。
「裕太……しょうがないよ、長い間休んでたんだから。俺たちまだ一年なんだから、時間はたっぷりある、ゆっくり取り戻せばいいさ。俺も教えてやるから、一緒に勉強しよう」
裕太を力付けたくてそう励ました俺を、裕太は少し目を細めて見上げてきた。
「うん、ありがとう。諒」
こくんとうなずいた裕太の素直な仕草に勇気を得て、俺は一つ提案してみることにした。
「――あ、そうだ。裕太、今日これから俺ん家よってかない? 一緒に課題片付けちゃおうよ……それで、母さんたちにもお前の元気な顔、見せてやって欲しいな」
「裕太!」
三ヶ月ぶりに教室に現れた裕太を見て、俺は鞄を放り投げてその側へ駆け寄った。
「諒、おはよう」
そんな俺を見てにっこりと笑う裕太の、以前と変わらない無邪気な様子に、俺は胸にこみ上げるものを抑えきれず、無言でその体に手を伸ばした。
俺はここが教室のど真ん中であることも忘れて、裕太を思い切り抱きしめようとしたのだ。
だけど、そんな俺の衝動は裕太の後ろから伸ばされた、乱暴な腕の一払いによって阻止された。
「諒。弟に気安く触るんじゃない」
裕太の頭越しに俺をものすごい目で睨んでくるそれが誰かなんて、今更確認する必要もない。
どうせ裕太のあの超過保護な兄貴のことだ、弟の失踪以来始めての登校が心配で一緒にくっついてきたんだろう。
裕太にまた苦手なものが一つ増えた。
それに気が付いたのは、新居で必要なものを買い揃えるため、裕太を連れて池袋の天国屋本店に行ったときのこと。
六階のインテリアフロアで、部屋に合わせるカーテンを「この色は、素材は」と熱心に選んでいた裕太が、突然俺のジャケットの袖を掴んで怯えたようにこういった。
「犬だ」
見ると、会計をしているご婦人の足元にチワワが一匹、セーターを着せられてその小さな体をピルピルと震えさせていた。
「どうした、あんな小さな犬が恐いのか?」
俺はそのひょろりと背の高いご婦人と、どこか宇宙人じみたチワワの組み合わせがユーモラスに思えて、笑いをかみ殺しながら隣の裕太を見下ろした。
すると、からかい半分のつもりでそういった俺を、裕太は意外なほど真剣な顔で見返してきた。
おそらく無意識にだろうが、俺の腕を掴んだ裕太の指に、ギュッと力が込められる。
「別に、恐いって訳じゃないけど……」
俺から視線を外し、考え込むように床に目を落とすと、裕太は左手で自分の唇を触りだした。
これは不安になったとき見せる、裕太の昔からの癖だ。
ブログ内検索
注意事項
必ず最初にお読みください
  成人を対象とした作品の二次創作物を含みます。
  作中登場する組織名、人物名等は創作であり、実在のものとはいっさい関係ありません。
  オンラインのみで活動中です。オフラインで活動する予定はありません。
商品紹介

メイド*はじめました・しおり
  約束の場所[翡翠×琥珀]1/2/3/4/5/6/7/8/
コイビト遊戯・しおり-短編・他-
  感想
  キャラクター考察1/2/3/4(了)
  短編
  心のアルバム[オムニバス]0/1/2/3/4/5/6/7/8/9
  [周平×裕太]1/2/3/4/5/6/
  [諒×裕太]1/
  [大貴×裕太]1/2/
コイビト遊戯・しおり-長編-
  長編
  一人墜落[大貴×裕太]0/1/2/3/4/5/6/7/8/9/10(完)
  蛇の林檎[周平×裕太]0/1/2/3/4/5/6/7/8/9/10(完)
  クリスマスの箱舟[周平×裕太]0/1/2/3/4/5/6/7/8/9/10(完)
  深呼吸[周平×裕太]0/1/2/3/4/5/6/7/8/9/10(完)
  ピーピング・トム[周平×裕太+諒]0/1/2/3/4/5/6/7/8/9/10(完)
  日々是好日[周平×裕太]0/1/2/3/4/5/6/7/8/9/10(完)
  災いの黒幕[周平×裕太]0/1/2/3/4/5/6/7/8/9/10(完)
  ワガママ[周平×裕太]0/1/2/3/4/5/6/7/8/9/10(完)
  プロメテウスの[周平×裕太]0/1/2/3/4/5/6/7/8/9/10(完)
  携帯と夏休み[周平×裕太]0/1/2/3/4/5/6/7/8/9/10(完)
  依存症[周平×裕太]0/1/2/3/4/5/6/7/8/9/10(完)
PCゲーム・しおり
  「マギア・ミスティカ」プレイ感想1/2/3/4/5/6
  「Daylight」プレイ感想1/2/3/4
  「クレプシドラ」プレイ感想1/2/3/
バーコード
Copyright © BL二次創作ブログ -ののの- (18歳未満閲覧禁止)。。All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog / Template by Ninja☆BT
忍者ブログ [PR]