BL版権物の二次創作ブログです。現在『メイド*はじめました』で活動中です。
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名前:うさこ
萌属性:血縁、年の差、アホ子受、ワンコ攻
好き:甘々、主人公総受け
嫌い:イタい子
イチオシ:安元洋貴ボイズ
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2008/02/09 (Sat)
「あ、なんか、この曲好きかも」
店内に流れてきた音楽に、裕太はふと視線を上げた。
それは電子的な――しかしどこか霞がかかったような、ぼんやりとした柔らかさを持つ、不思議なメロディーだった。
裕太は、ティーカップから立ち上る暖かな湯気の揺らめきを見つめながら、数瞬その歌に耳を澄ませた。
「買っていこうか?」
テーブルの向こう側で、そんな裕太の様子を見ていた周平が、さらりと言った。
「え?」
「好きなんだろう? だったら、いま店の人に曲名を聞いて、後で買って帰ろう」
そう言うが早いか、周平はさっと手を上げて、店員を呼んだ。
「すみません、いまかかっている曲、名前分りますか?」
「あ、はい。細井聡司のツナグミライですね」
群青色のギャルソンエプロンを付けたウェイトレスは、にっこりと、迷うことなく答えた。
周平は、ありがとう、と店員に軽い会釈を返すと、くるりと裕太に向き直った。
「――だ、そうだ、裕太」
裕太は周平の相変わらずの行動力にあっけにとられて、一連の動きを、ただぽかんと口を空けて見ているしかできなかった。
「直ぐに答えたところを見ると、人気がある歌なのかもしれないな」
周平はそう言いながら、ジャケットの内側へ手を入れた。
聞いた内容をさっそく確認しようと、携帯を探っているのだ。
「ちょ、ちょっとまってよ、兄ちゃん! 好きって、そういう意味じゃないよ――」
裕太は慌てて、周平の手を押さえた。
「えーっと、なんか、今この瞬間が気持ち良かったって言うか……この場所の雰囲気にあってるって言うか……なんか、そういう感じで……だから別に、欲しいとか、手に入れたいとか、そういう意味じゃないんだよ」
自分の気持ちを何とか説明しようと、必死で言葉を探す裕太に、周平は呆れたような、諦めたような、微妙な表情でため息を付いた。
「……普通の高校生なら、服とか、音楽とか、ゲームとか、そういうものに、夢中になって、あれこれ欲しがるものだろうに……どうしてお前は何も欲しがらないんだ」
「だって俺、そういうの興味ないんだもん、しょうがないじゃんか」
周平の言葉に、裕太はぷーっと頬を膨らませた。
実際、今日着ている服も、靴も、全て周平が見立てたものだったが、ファッションに全くこだわりのない裕太は、それで十分満足だった。
「あー、わかったよ、裕太。そんな顔するな」
周平はテーブルから身を乗り出して、すねてしまった裕太の頭をぐりぐりと撫でた。
「別に責めてる訳じゃない……ただ、お前は、本当に昔と変わらないなって、そう思っただけだよ」
そう言って周平は、懐かしい思い出に浸るように、目を細めて笑った。
「ほら、スコーン、兄ちゃんの分も、食べて良いから」
つっと差し出された、たっぷりのジャムとクロテッドクリームが乗った焼きたてのスコーンに、裕太の機嫌はたちまち直った。
店内に流れてきた音楽に、裕太はふと視線を上げた。
それは電子的な――しかしどこか霞がかかったような、ぼんやりとした柔らかさを持つ、不思議なメロディーだった。
裕太は、ティーカップから立ち上る暖かな湯気の揺らめきを見つめながら、数瞬その歌に耳を澄ませた。
「買っていこうか?」
テーブルの向こう側で、そんな裕太の様子を見ていた周平が、さらりと言った。
「え?」
「好きなんだろう? だったら、いま店の人に曲名を聞いて、後で買って帰ろう」
そう言うが早いか、周平はさっと手を上げて、店員を呼んだ。
「すみません、いまかかっている曲、名前分りますか?」
「あ、はい。細井聡司のツナグミライですね」
群青色のギャルソンエプロンを付けたウェイトレスは、にっこりと、迷うことなく答えた。
周平は、ありがとう、と店員に軽い会釈を返すと、くるりと裕太に向き直った。
「――だ、そうだ、裕太」
裕太は周平の相変わらずの行動力にあっけにとられて、一連の動きを、ただぽかんと口を空けて見ているしかできなかった。
「直ぐに答えたところを見ると、人気がある歌なのかもしれないな」
周平はそう言いながら、ジャケットの内側へ手を入れた。
聞いた内容をさっそく確認しようと、携帯を探っているのだ。
「ちょ、ちょっとまってよ、兄ちゃん! 好きって、そういう意味じゃないよ――」
裕太は慌てて、周平の手を押さえた。
「えーっと、なんか、今この瞬間が気持ち良かったって言うか……この場所の雰囲気にあってるって言うか……なんか、そういう感じで……だから別に、欲しいとか、手に入れたいとか、そういう意味じゃないんだよ」
自分の気持ちを何とか説明しようと、必死で言葉を探す裕太に、周平は呆れたような、諦めたような、微妙な表情でため息を付いた。
「……普通の高校生なら、服とか、音楽とか、ゲームとか、そういうものに、夢中になって、あれこれ欲しがるものだろうに……どうしてお前は何も欲しがらないんだ」
「だって俺、そういうの興味ないんだもん、しょうがないじゃんか」
周平の言葉に、裕太はぷーっと頬を膨らませた。
実際、今日着ている服も、靴も、全て周平が見立てたものだったが、ファッションに全くこだわりのない裕太は、それで十分満足だった。
「あー、わかったよ、裕太。そんな顔するな」
周平はテーブルから身を乗り出して、すねてしまった裕太の頭をぐりぐりと撫でた。
「別に責めてる訳じゃない……ただ、お前は、本当に昔と変わらないなって、そう思っただけだよ」
そう言って周平は、懐かしい思い出に浸るように、目を細めて笑った。
「ほら、スコーン、兄ちゃんの分も、食べて良いから」
つっと差し出された、たっぷりのジャムとクロテッドクリームが乗った焼きたてのスコーンに、裕太の機嫌はたちまち直った。
裕太は、その食い意地に反比例するように、物欲は薄い。
街を歩けば、目に入ったものを「ああ良いな」「面白いな」と感じるぐらいの感性はあるが、でもそれが、「欲しい」「手に入れたい」という欲求には、なぜか結びつかない。
自ら求める隙間もないほど、周囲から与えられ続けていたために、何かを欲するという感覚が麻痺しているのかもしれない。
しかし、兄の周平が多少呆れ気味に、「子供の頃からそうだった」というぐらいなのだから、元来そういう性質なのかもしれない。
なにしろ裕太は、周平には中学入学から大学卒業まで、小遣い代わりに好きに使えばいいと与えられていた家族カードが、自分には渡されてれていないことにも、疑問を感じていないぐらいなのだ。
だから原因が何にしろ、とにかく裕太がそういう性格の持ち主であることは間違いない。
*
その一方で兄の周平は、気に入ったものは必ず手に入れて、大切に保管しておきたくなるという、弟とは180度違った性質の持ち主だから、「あれが欲しい」「これが欲しい」と滅多に口にしない裕太が、なんとも可愛らしく見えて仕方がない。
周平から見ると、そういう裕太の性格は、奥手で、受身で、引っ込み思案で……まるで手を差し伸べられるのをじっと待っているような、そんな甘え性の発露であるように思えるのだ。
それだから周平は、「俺が面倒を見てやらなくては」と、必要以上に先回りをして、裕太にあれこれ口出し手出ししてしまうのだろう。
裕太に「兄ちゃんは過保護すぎる」と苦笑されても、それは周平にとって、もはや賞賛の意味しか持たなかった。
*
本当のところ、両親は小遣い代わりの家族カードを、裕太にも周平と同じように与えようとしたのだ。
しかし、周平がそれを止めさせた。
――いまの時代は誘惑が多い。
――裕太はぼんやりしてるところがあるから心配だ。
――俺がちゃんと見て、必要なものがあれば買い与えるようにするから。
周平はそう言って両親を説得し、裕太に自由に金を使わせないようにした。
といってもそれは、「自分の知らない場所では使わせない」という意味で、裕太が欲しいと言ったもので、周平が買い与えないものはなかった。
むしろ周平は、裕太が欲しがらないものでも、進んであれこれ買い与え、自分好みのもので弟を飾り付けることに、喜びを見い出しているようなところがあった。
*
――かわいい、かわいい、かわいい、裕太。
――お前は、俺が作った。
そういう自負が、裕太に対する揺るがぬ自信となって、周平の強気を作り上げていた。
街を歩けば、目に入ったものを「ああ良いな」「面白いな」と感じるぐらいの感性はあるが、でもそれが、「欲しい」「手に入れたい」という欲求には、なぜか結びつかない。
自ら求める隙間もないほど、周囲から与えられ続けていたために、何かを欲するという感覚が麻痺しているのかもしれない。
しかし、兄の周平が多少呆れ気味に、「子供の頃からそうだった」というぐらいなのだから、元来そういう性質なのかもしれない。
なにしろ裕太は、周平には中学入学から大学卒業まで、小遣い代わりに好きに使えばいいと与えられていた家族カードが、自分には渡されてれていないことにも、疑問を感じていないぐらいなのだ。
だから原因が何にしろ、とにかく裕太がそういう性格の持ち主であることは間違いない。
*
その一方で兄の周平は、気に入ったものは必ず手に入れて、大切に保管しておきたくなるという、弟とは180度違った性質の持ち主だから、「あれが欲しい」「これが欲しい」と滅多に口にしない裕太が、なんとも可愛らしく見えて仕方がない。
周平から見ると、そういう裕太の性格は、奥手で、受身で、引っ込み思案で……まるで手を差し伸べられるのをじっと待っているような、そんな甘え性の発露であるように思えるのだ。
それだから周平は、「俺が面倒を見てやらなくては」と、必要以上に先回りをして、裕太にあれこれ口出し手出ししてしまうのだろう。
裕太に「兄ちゃんは過保護すぎる」と苦笑されても、それは周平にとって、もはや賞賛の意味しか持たなかった。
*
本当のところ、両親は小遣い代わりの家族カードを、裕太にも周平と同じように与えようとしたのだ。
しかし、周平がそれを止めさせた。
――いまの時代は誘惑が多い。
――裕太はぼんやりしてるところがあるから心配だ。
――俺がちゃんと見て、必要なものがあれば買い与えるようにするから。
周平はそう言って両親を説得し、裕太に自由に金を使わせないようにした。
といってもそれは、「自分の知らない場所では使わせない」という意味で、裕太が欲しいと言ったもので、周平が買い与えないものはなかった。
むしろ周平は、裕太が欲しがらないものでも、進んであれこれ買い与え、自分好みのもので弟を飾り付けることに、喜びを見い出しているようなところがあった。
*
――かわいい、かわいい、かわいい、裕太。
――お前は、俺が作った。
そういう自負が、裕太に対する揺るがぬ自信となって、周平の強気を作り上げていた。
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