BL版権物の二次創作ブログです。現在『メイド*はじめました』で活動中です。
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名前:うさこ
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好き:甘々、主人公総受け
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2008/11/24 (Mon)
ショーの終わったフロアは、先ほどの騒がしさとは一転、控えめな音楽の中に談笑の波がさんざめく、大人たちの社交場へと変身していた。
アルコールの香りが漂い始めた会場を、裕太は慎重に見渡した。
シフォンのワンピースに、細いかかとのミュール、「遊びだから」と冗談めかした光貴の、しかし笑ってはいなかった瞳に、半ば脅迫されるように塗られた、リップグロス。
唇を桜色に染め、慣れないヒールで転ばないようヨロヨロと内股になって歩く裕太は、知らないものが見れば、まず間違いなく女だと勘違いしただろう。
膨らみのない胸や、丸みのない手足を見て、年齢のわりには肉付きが薄い、と感じる者もいるかもしれないが、それも昨今痩せすぎが多い女性にはありがちなことだから、まさか男だからとは思うまい。
森の中からこっそりと辺りを窺う小鹿のように、モデル達の隙間から顔をのぞかせながら、裕太は生まれて始めて、自分の体が標準よりも小さめに出来ていることを感謝した。
全員が180cmを超えているモデル達の集団に囲まれてしまえば、特に身を屈めるまでもなく、周囲の視線から姿を隠すことが出来るのだ。
*
「裕太ちゃんってば、さっきから何してるの?」
シャンパングラスを傾けながら、光貴が振り返った。
ぺったりと後ろに張り付くようにして歩いていた裕太は、背中にぶつかりそうになって、慌てて立ち止まる。
「ななな、なんでもないですっ」
「あらそぉ?」
面白そうに見下ろしてくる光貴に、裕太は無言で激しく頷いた。
とにかく放って置いて欲しい、と言う意図をこめたジェスチャーだったが、光貴には通じなかったようだ。
うふふ、と意味深な笑みを浮かべると、裕太の耳元に唇を寄せる。
「ひょっとして、裕太ちゃん、気がついた?」
「え、な、なにがですか」
「う~ん、もう、とぼけちゃってぇ~。アレよ、アレ」
じれったそうに体を揺すりながら、光貴はフロアの奥を指差した。
「あのヒトよぉ~。さっきから、じ~っと裕太ちゃんを見てるの」
「えぇっ!?」
裕太は、ぎょっとして目を凝らした。
そこには、こちらを見詰めて佇む、一人の男のシルエット。
誰か知り合いにでも見つかったのかと、ドキドキしながら様子を探るが、控えめな照明に沈んで、顔はよく見えない。
三つボタンのダークスーツに、シルバーグレーのネクタイを締めた略礼装の男。
その足元に視線を落として、裕太は、ほっと力を抜いた。
ワックスで丁寧に磨き上げられ、エナメルのように黒光りするストレートチップ。
何の飾りもないシンプルなそれは、一見、サラリーマンが好んで履く、平凡なビジネスシューズと変らない。
しかし裕太は、それがイギリスの工房で、いっそく一足、顧客の足型に合わせて手縫される、職人技の詰まった一品だと知っていた。
――見る人が見れば分かる。
裕太の兄……周平は、そういう「遊び」が好きなのだ。
アルコールの香りが漂い始めた会場を、裕太は慎重に見渡した。
シフォンのワンピースに、細いかかとのミュール、「遊びだから」と冗談めかした光貴の、しかし笑ってはいなかった瞳に、半ば脅迫されるように塗られた、リップグロス。
唇を桜色に染め、慣れないヒールで転ばないようヨロヨロと内股になって歩く裕太は、知らないものが見れば、まず間違いなく女だと勘違いしただろう。
膨らみのない胸や、丸みのない手足を見て、年齢のわりには肉付きが薄い、と感じる者もいるかもしれないが、それも昨今痩せすぎが多い女性にはありがちなことだから、まさか男だからとは思うまい。
森の中からこっそりと辺りを窺う小鹿のように、モデル達の隙間から顔をのぞかせながら、裕太は生まれて始めて、自分の体が標準よりも小さめに出来ていることを感謝した。
全員が180cmを超えているモデル達の集団に囲まれてしまえば、特に身を屈めるまでもなく、周囲の視線から姿を隠すことが出来るのだ。
*
「裕太ちゃんってば、さっきから何してるの?」
シャンパングラスを傾けながら、光貴が振り返った。
ぺったりと後ろに張り付くようにして歩いていた裕太は、背中にぶつかりそうになって、慌てて立ち止まる。
「ななな、なんでもないですっ」
「あらそぉ?」
面白そうに見下ろしてくる光貴に、裕太は無言で激しく頷いた。
とにかく放って置いて欲しい、と言う意図をこめたジェスチャーだったが、光貴には通じなかったようだ。
うふふ、と意味深な笑みを浮かべると、裕太の耳元に唇を寄せる。
「ひょっとして、裕太ちゃん、気がついた?」
「え、な、なにがですか」
「う~ん、もう、とぼけちゃってぇ~。アレよ、アレ」
じれったそうに体を揺すりながら、光貴はフロアの奥を指差した。
「あのヒトよぉ~。さっきから、じ~っと裕太ちゃんを見てるの」
「えぇっ!?」
裕太は、ぎょっとして目を凝らした。
そこには、こちらを見詰めて佇む、一人の男のシルエット。
誰か知り合いにでも見つかったのかと、ドキドキしながら様子を探るが、控えめな照明に沈んで、顔はよく見えない。
三つボタンのダークスーツに、シルバーグレーのネクタイを締めた略礼装の男。
その足元に視線を落として、裕太は、ほっと力を抜いた。
ワックスで丁寧に磨き上げられ、エナメルのように黒光りするストレートチップ。
何の飾りもないシンプルなそれは、一見、サラリーマンが好んで履く、平凡なビジネスシューズと変らない。
しかし裕太は、それがイギリスの工房で、いっそく一足、顧客の足型に合わせて手縫される、職人技の詰まった一品だと知っていた。
――見る人が見れば分かる。
裕太の兄……周平は、そういう「遊び」が好きなのだ。
「あのヒト、裕太ちゃんに、気があるのよぉ~」
光貴が奇妙な猫なで声で言った。
「デートに誘う気かもよぉ~」
どうするの、どうするの、と耳元で囃し立てられ、裕太はぷっと吹き出した。
二人の関係を、光貴は知らないのだ。
裕太は少し考える表情で、思わせぶりに頷く。
「そうですね、オレ付いて行って見ようかな」
「あら、裕太ちゃんってば、ホンキ?」
意外そうに目をむいた光貴に、裕太は耐え切れずに肩を震わせた。
「だってKOKIさん、あの人は……」
オレの兄ちゃんだから、と裕太がタネ明かしをしようとしたとき、男が動いた。
黒の革靴が静かに持ち上がり、滑るような動きで大きく前に踏み出す。
真っ直ぐに背筋の伸びた、姿勢の良い歩き方は、遠くからでも見間違いようがない。
周平のものだ。
思わず嬉しくなって駆け寄ろうとした裕太だったが、一歩進んだところで、その足が止まった。
ゆっくりと、大股で近付いて来る周平の顔には、少しの笑みもなかった。
*
「あら、スゴクいいオトコじゃなぁ~い」
光貴が嬉しそうに声を弾ませた。
裕太は答えることも出来ず、ただ固まっている。
何気ない足取りで近付きながら、周平はすれ違うボーイのトレイから、一脚のカクテルグラスを取り上げた。
これ見よがしにひとくち口に含む。
周平は完全な無表情だったが、裕太の今の状態を、冗談が行き過ぎただけ、と笑って許してやるつもりがないことは明らかだった。
周平が一歩進むごとに、裕太の背筋が震えた。
ワンピースの裾を握り込んだ指先は、力が入りすぎて色がなくなっている。
――怖い。
真正面で立ち止まった周平を見上げ、裕太はそう感じていた。
光貴が奇妙な猫なで声で言った。
「デートに誘う気かもよぉ~」
どうするの、どうするの、と耳元で囃し立てられ、裕太はぷっと吹き出した。
二人の関係を、光貴は知らないのだ。
裕太は少し考える表情で、思わせぶりに頷く。
「そうですね、オレ付いて行って見ようかな」
「あら、裕太ちゃんってば、ホンキ?」
意外そうに目をむいた光貴に、裕太は耐え切れずに肩を震わせた。
「だってKOKIさん、あの人は……」
オレの兄ちゃんだから、と裕太がタネ明かしをしようとしたとき、男が動いた。
黒の革靴が静かに持ち上がり、滑るような動きで大きく前に踏み出す。
真っ直ぐに背筋の伸びた、姿勢の良い歩き方は、遠くからでも見間違いようがない。
周平のものだ。
思わず嬉しくなって駆け寄ろうとした裕太だったが、一歩進んだところで、その足が止まった。
ゆっくりと、大股で近付いて来る周平の顔には、少しの笑みもなかった。
*
「あら、スゴクいいオトコじゃなぁ~い」
光貴が嬉しそうに声を弾ませた。
裕太は答えることも出来ず、ただ固まっている。
何気ない足取りで近付きながら、周平はすれ違うボーイのトレイから、一脚のカクテルグラスを取り上げた。
これ見よがしにひとくち口に含む。
周平は完全な無表情だったが、裕太の今の状態を、冗談が行き過ぎただけ、と笑って許してやるつもりがないことは明らかだった。
周平が一歩進むごとに、裕太の背筋が震えた。
ワンピースの裾を握り込んだ指先は、力が入りすぎて色がなくなっている。
――怖い。
真正面で立ち止まった周平を見上げ、裕太はそう感じていた。
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