BL版権物の二次創作ブログです。現在『メイド*はじめました』で活動中です。
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2007/11/24 (Sat)
周平の抱擁から解放されると、裕太は砂場に作った自分の作品を指差し、キラキラと目を輝かせて周平を見上げた。
「本当だ、上手に出来たな、裕太。すごい、すごい」
裕太の期待に満ちた眼差しに対して、周平はそう言って見せた。
だが、正直なところ、それはただの砂山で、一体何がどうすごいのか、周平にはまったく分らなかった。
「にーたも、する? ゆーたと、おやま、つくる?」
周平に褒められた嬉しさに頬を高潮させた裕太が、周平の指を握って砂遊びに誘った。
しかし周平はベンチに座ったまま、首を横に振った。
「兄ちゃんはいいよ。裕太は他のお友達と遊んできな」
周平は裕太をくるりと回転させると、こちらを興味深そうに伺っている数人の幼児に向かって手を振って見せた。
するとそれに答えるように、真っ赤なジャンパースカートを着た女の子が一人、立ち上がって裕太に手招きした。
「ほら、一緒に遊ぼうって、裕太を呼んでるよ」
周平は裕太を促すように、ぽんと軽く背中を押した。
裕太はその勢いで数歩進んでから、おもむろに立ち止まると、ちらりと周平を振り返った。
周平がにっこりと頷いて見せると、裕太もこっくりと頷き返し、後はそのまま砂場へ駆けていった。
「本当だ、上手に出来たな、裕太。すごい、すごい」
裕太の期待に満ちた眼差しに対して、周平はそう言って見せた。
だが、正直なところ、それはただの砂山で、一体何がどうすごいのか、周平にはまったく分らなかった。
「にーたも、する? ゆーたと、おやま、つくる?」
周平に褒められた嬉しさに頬を高潮させた裕太が、周平の指を握って砂遊びに誘った。
しかし周平はベンチに座ったまま、首を横に振った。
「兄ちゃんはいいよ。裕太は他のお友達と遊んできな」
周平は裕太をくるりと回転させると、こちらを興味深そうに伺っている数人の幼児に向かって手を振って見せた。
するとそれに答えるように、真っ赤なジャンパースカートを着た女の子が一人、立ち上がって裕太に手招きした。
「ほら、一緒に遊ぼうって、裕太を呼んでるよ」
周平は裕太を促すように、ぽんと軽く背中を押した。
裕太はその勢いで数歩進んでから、おもむろに立ち止まると、ちらりと周平を振り返った。
周平がにっこりと頷いて見せると、裕太もこっくりと頷き返し、後はそのまま砂場へ駆けていった。
裕太は同年代の子供たちに比べて体も小さいし、甘えん坊で気が弱くて、自分の考えをはっきり口に出来ない性格だから、普通こういう場所ではいじめられるか、仲間はずれにされそうなタイプだ。
だが実際には、裕太は友達作りの名人だった。
現に今日この場で初めて会ったはずの子供たちとすっかり打ち解けて、もう裕太は歓声を上げて遊んでいる。
(あの笑顔を向けられれば、誰だって裕太を好きになるさ)
周平は子供達とじゃれあって楽しそうに笑う裕太に、胸のもやもやが再び戻ってくるのを感じた。
*
素直で、かわいらしい裕太は誰からも好かれた。
その鈴を転がすような笑い声を聞けば、周囲の全てが幸せになった。
誰もが裕太を愛し、そして裕太もまた、皆を愛した。
しかし、周平だけはそうではなかった。
裕太がこうして、誰からも愛され、かわいがられているのを見るたびに、心が揺れ、周平の内側に溜まった澱が巻き上げられるのだった。
*
(裕太を腕に抱いているときには、こんな感情、忘れていられたのに)
周平は再び自分の胸に灯った暗い炎を抑えるように、そっと心臓に手をあてた。
裕太はもう、周平の存在などすっかり忘れた顔で、遊びに熱中している。
周平は、無性にそんな裕太を、こちらに振り向かせたくなった。
(ゆうた)
周平はベンチから立ち上がると、唇を閉じたまま、心の中でその名を呼んだ。
しかし、シャベルを手に、砂山にトンネルを空けようと、夢中で穴を掘っている裕太は、周平を振り返らなかった。
(あたりまえだ、超能力者じゃないんだから)
周平はやはり無言のまま首を振って、自分の不可解な態度を笑い飛ばそうとした。
しかし、それは成功しなかった。
理性では制御できない深い部分から、どうしようもなく湧き出してくる感情があった。
(俺は友達との約束を断ったのに、裕太のために断ったのに)
だから当然裕太も、自分に奉仕すべきなのだ。
そんな理不尽な感情が周平の頭を痺れさせた。
(ゆうた)
周平はもう一度、息を吐かずに、口の中だけでその名を呼んだ。
しかし、裕太は掘った穴の両脇から手を入れて、トンネルの深さを確認するのに夢中で、周平を振り返りはしなかった。
周平は自分の中のイライラが、次第に高まっていくのを感じていた。
(母さんも、父さんも、みんな裕太にあげたのに)
だから当然裕太も、自分にお返しをすべきなのだ。
そんな理不尽な要求が周平の胸を焦がした。
「ゆうた」
周平は最後に、僅かに舌を動かして、その名前を囁いた。
しかし、裕太は完成したトンネルを覗き込もうと、膝を付いて身を屈めたところで、周平を振り返りはしなかった。
周平はもう裕太を呼ばなかった。
そのままゆっくりと踵を返すと、パーカーをベンチに脱ぎ捨てたまま、公園を後にした。
周平の背中が潅木の向こう側に消えたときも、子供たちの甲高い笑い声が公園中に響いていた。
だが実際には、裕太は友達作りの名人だった。
現に今日この場で初めて会ったはずの子供たちとすっかり打ち解けて、もう裕太は歓声を上げて遊んでいる。
(あの笑顔を向けられれば、誰だって裕太を好きになるさ)
周平は子供達とじゃれあって楽しそうに笑う裕太に、胸のもやもやが再び戻ってくるのを感じた。
*
素直で、かわいらしい裕太は誰からも好かれた。
その鈴を転がすような笑い声を聞けば、周囲の全てが幸せになった。
誰もが裕太を愛し、そして裕太もまた、皆を愛した。
しかし、周平だけはそうではなかった。
裕太がこうして、誰からも愛され、かわいがられているのを見るたびに、心が揺れ、周平の内側に溜まった澱が巻き上げられるのだった。
*
(裕太を腕に抱いているときには、こんな感情、忘れていられたのに)
周平は再び自分の胸に灯った暗い炎を抑えるように、そっと心臓に手をあてた。
裕太はもう、周平の存在などすっかり忘れた顔で、遊びに熱中している。
周平は、無性にそんな裕太を、こちらに振り向かせたくなった。
(ゆうた)
周平はベンチから立ち上がると、唇を閉じたまま、心の中でその名を呼んだ。
しかし、シャベルを手に、砂山にトンネルを空けようと、夢中で穴を掘っている裕太は、周平を振り返らなかった。
(あたりまえだ、超能力者じゃないんだから)
周平はやはり無言のまま首を振って、自分の不可解な態度を笑い飛ばそうとした。
しかし、それは成功しなかった。
理性では制御できない深い部分から、どうしようもなく湧き出してくる感情があった。
(俺は友達との約束を断ったのに、裕太のために断ったのに)
だから当然裕太も、自分に奉仕すべきなのだ。
そんな理不尽な感情が周平の頭を痺れさせた。
(ゆうた)
周平はもう一度、息を吐かずに、口の中だけでその名を呼んだ。
しかし、裕太は掘った穴の両脇から手を入れて、トンネルの深さを確認するのに夢中で、周平を振り返りはしなかった。
周平は自分の中のイライラが、次第に高まっていくのを感じていた。
(母さんも、父さんも、みんな裕太にあげたのに)
だから当然裕太も、自分にお返しをすべきなのだ。
そんな理不尽な要求が周平の胸を焦がした。
「ゆうた」
周平は最後に、僅かに舌を動かして、その名前を囁いた。
しかし、裕太は完成したトンネルを覗き込もうと、膝を付いて身を屈めたところで、周平を振り返りはしなかった。
周平はもう裕太を呼ばなかった。
そのままゆっくりと踵を返すと、パーカーをベンチに脱ぎ捨てたまま、公園を後にした。
周平の背中が潅木の向こう側に消えたときも、子供たちの甲高い笑い声が公園中に響いていた。
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