BL版権物の二次創作ブログです。現在『メイド*はじめました』で活動中です。
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名前:うさこ
萌属性:血縁、年の差、アホ子受、ワンコ攻
好き:甘々、主人公総受け
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2007/11/23 (Fri)
「八月も終わりだっていうのに、何でこんなに暑いんだ」
藍川周平は、羽織っていたパーカーを脱ぐと、心に溜まった鬱憤を吐き出すように、ベンチの脇へと放り投げた。
周平は高校受験を控た中学最後の夏休みを、ほぼ毎日の塾通いで終わらせようとしていた。
だが、そのことを周平が不満に感じていた訳ではない。
むしろ彼の中には、大学までのエスカレーターに乗らず、より高いレベルを求めて外部受験をする自分は、お仕着せの階段に乗ったまま漫然と過ごす連中よりも、ずっと「特別」なのだ、という優越意識があった。
だから母親が「せっかく小学校受験したんだから、わざわざそんな苦労しなくたっていいのに」と、不満顔をしても取り合わなかったし、父親が「好きにさせればいい」と周平の行動を遠回しに肯定したときには、やったと声を上げて喜んだ。
だから、周平が不満なのはそんなことではないのだ。
周平が不満なのは、そんなことではなく、目の前の砂場で夢中になって遊んでいる、この小さな弟のことだった。
(今日は友達と遊ぶ約束だったのに、なんで裕太の世話なんか……)
藍川周平は、羽織っていたパーカーを脱ぐと、心に溜まった鬱憤を吐き出すように、ベンチの脇へと放り投げた。
周平は高校受験を控た中学最後の夏休みを、ほぼ毎日の塾通いで終わらせようとしていた。
だが、そのことを周平が不満に感じていた訳ではない。
むしろ彼の中には、大学までのエスカレーターに乗らず、より高いレベルを求めて外部受験をする自分は、お仕着せの階段に乗ったまま漫然と過ごす連中よりも、ずっと「特別」なのだ、という優越意識があった。
だから母親が「せっかく小学校受験したんだから、わざわざそんな苦労しなくたっていいのに」と、不満顔をしても取り合わなかったし、父親が「好きにさせればいい」と周平の行動を遠回しに肯定したときには、やったと声を上げて喜んだ。
だから、周平が不満なのはそんなことではないのだ。
周平が不満なのは、そんなことではなく、目の前の砂場で夢中になって遊んでいる、この小さな弟のことだった。
(今日は友達と遊ぶ約束だったのに、なんで裕太の世話なんか……)
平日を塾の夏期講習で費やしている周平にとって、今日は貴重な休日だった。
スケジュールが合わない学校の友人たちととは、こういう休日にしか遊ぶことが出来ないのだ。
しかし、そんな友人たちとの約束は、今朝方、母に掛かって来た一本の電話で駄目になった。
なんでも学生時代の友人が急死したとかで、母が家を空けざるをえなくなったのだ。
周平に裕太を預けて家を出るときの、母の心配そうな顔を思い出す。
周平は不安げな母親に「大丈夫だよ、裕太は俺に任せて」と笑って見せたが、実際は心にそんな余裕があるわけもなく、腹の中には不満が充満していた。
*
十一歳も年が離れて生まれた弟、裕太のことを周平は表面上はかわいがって見せてはいたが、内心では苦々しく思っていた。
というのも、裕太が生まれるまでは両親はもちろん、祖父母も「初孫は目に入れても痛くない」と、飴を舐めるようにして周平を可愛っていたのに、裕太が生まれてからは一転して、その関心が裕太へと移ってしまったのだ。
だからといって、そこで引っ繰り返って「ヤダヤダ僕も構って」などと泣き喚くほど、周平は愚かな子供ではなかった。
既に周平は、自分の周囲を分析し、大人達に「裕太のいいお兄ちゃん」を演じて見せるぐらいの判断力を身に付けていた。
しかし、そうした演技で周平の胸に生まれた鬱屈が消えるわけもなく、むしろ表面上「いいお兄ちゃんを」演じて見せなくてはいけないからこそ、言葉に出来ない思いがどろどろと重く、周平の胸中を渦巻いていた。
*
(ここで裕太を置いていったらどうなるんだろう……)
その時、ふとそんな考えが、周平の頭の中に浮かんだ。
裕太は、先ほどから何が面白いのか、砂を集めては崩し、集めては崩しという作業を熱心に続けている。
砂場から少し離れたベンチで、ただぼんやりと、そんな弟の様子を眺めていた周平には、その考えが酷く面白いことのように思た。
周平が暗い思い付きに目を光らせた瞬間、まるで計ったようなタイミングで裕太が周平を振り返った。
「にーた、おやま、できたー、みて、ゆーた、おやま、つくったの、みて」
ようやく自分で納得できるものが出来上がったのだろう、裕太が満面の笑顔で周平を呼んだ。
(俺が呼びかけに答えないかも、なんて夢にも思わないんだろうな)
周平は自分に向けられた裕太の無邪気な笑顔から、思わず目を背けた。
弟にこういう信頼しきった瞳で見つめられるたび、周平はなんだか、ざわざわと落ち着かない気分になった。
*
大人の目を盗んで周平が裕太に意地悪をしたことなど、もはや数え切れない。
大好きなおもちゃを取り上げて泣かせたり、ちょっと乱暴に抱き上げて驚かせたり、聞こえた呼びかけをわざと無視して不安がらせたり……。
だが、どんな事をしても、裕太は決して周平を憎まなかった。
憎むどころか、いつでもこうして、疑いのない真っ直ぐな瞳で周平を見つめてきた。
そうして周平の後を付いて回っては、全身で兄に対する愛情と信頼を語って見せるのだった。
*
「にーた、どうしたの? おつむ、いたいですか?」
ベンチに座ったまま、いつまでも動こうとしない周平を心配して、裕太が駆け寄ってきた。
周平の顔を見上げた裕太の瞳には、周平に対する純粋な思いやりが溢れていて、呼びかけを無視したことへの不満や怒りなど微塵も含まれていなかった。
「おねつ、はかりましょうか?」
裕太は周平の膝に片手を付いて、俯いたまま顔を上げない兄の額に手を当てようと一生懸命背伸びをした。
弟にこういう態度を取られるたびに、周平の胸には何ともいえない感情が湧き上ってくる。
渦巻く闇を溶かして、心の奥から湧き上がってくるその感情に、周平はまだ名前を付けられずにいたけれども、その瞬間はいつも、目の前の小さな体を抱きしめたくなった。
「裕太」
周平は囁くようにその名前を呼ぶと、衝動に突き動かされるまま、弟の体を地面からすくい上げた。
兄の突然の行動に裕太は少し驚いたが、大人しくされるがままになった。
裕太はこうして周平に抱きしめられるのが好きだった。
こうして兄の胸に顔を埋めてその匂いをかぐと、いつも、とても安心できるのだった。
「裕太は兄ちゃんが好きか?」
周平は無抵抗でじっと抱かれている裕太の頭へ直接響かせるように、そう問いかけた。
息を吸うと汗と裕太の体臭が混じった、甘酸っぱい香りが鼻腔に広がった。
「だあーいすき」
髪にかかる周平の吐息がくすぐったくて、くすくす笑いながら裕太はそう答えた。
裕太の躊躇いのない返事を聞くと、周平はその頼りない体をいっそう強く抱きしめた。
スケジュールが合わない学校の友人たちととは、こういう休日にしか遊ぶことが出来ないのだ。
しかし、そんな友人たちとの約束は、今朝方、母に掛かって来た一本の電話で駄目になった。
なんでも学生時代の友人が急死したとかで、母が家を空けざるをえなくなったのだ。
周平に裕太を預けて家を出るときの、母の心配そうな顔を思い出す。
周平は不安げな母親に「大丈夫だよ、裕太は俺に任せて」と笑って見せたが、実際は心にそんな余裕があるわけもなく、腹の中には不満が充満していた。
*
十一歳も年が離れて生まれた弟、裕太のことを周平は表面上はかわいがって見せてはいたが、内心では苦々しく思っていた。
というのも、裕太が生まれるまでは両親はもちろん、祖父母も「初孫は目に入れても痛くない」と、飴を舐めるようにして周平を可愛っていたのに、裕太が生まれてからは一転して、その関心が裕太へと移ってしまったのだ。
だからといって、そこで引っ繰り返って「ヤダヤダ僕も構って」などと泣き喚くほど、周平は愚かな子供ではなかった。
既に周平は、自分の周囲を分析し、大人達に「裕太のいいお兄ちゃん」を演じて見せるぐらいの判断力を身に付けていた。
しかし、そうした演技で周平の胸に生まれた鬱屈が消えるわけもなく、むしろ表面上「いいお兄ちゃんを」演じて見せなくてはいけないからこそ、言葉に出来ない思いがどろどろと重く、周平の胸中を渦巻いていた。
*
(ここで裕太を置いていったらどうなるんだろう……)
その時、ふとそんな考えが、周平の頭の中に浮かんだ。
裕太は、先ほどから何が面白いのか、砂を集めては崩し、集めては崩しという作業を熱心に続けている。
砂場から少し離れたベンチで、ただぼんやりと、そんな弟の様子を眺めていた周平には、その考えが酷く面白いことのように思た。
周平が暗い思い付きに目を光らせた瞬間、まるで計ったようなタイミングで裕太が周平を振り返った。
「にーた、おやま、できたー、みて、ゆーた、おやま、つくったの、みて」
ようやく自分で納得できるものが出来上がったのだろう、裕太が満面の笑顔で周平を呼んだ。
(俺が呼びかけに答えないかも、なんて夢にも思わないんだろうな)
周平は自分に向けられた裕太の無邪気な笑顔から、思わず目を背けた。
弟にこういう信頼しきった瞳で見つめられるたび、周平はなんだか、ざわざわと落ち着かない気分になった。
*
大人の目を盗んで周平が裕太に意地悪をしたことなど、もはや数え切れない。
大好きなおもちゃを取り上げて泣かせたり、ちょっと乱暴に抱き上げて驚かせたり、聞こえた呼びかけをわざと無視して不安がらせたり……。
だが、どんな事をしても、裕太は決して周平を憎まなかった。
憎むどころか、いつでもこうして、疑いのない真っ直ぐな瞳で周平を見つめてきた。
そうして周平の後を付いて回っては、全身で兄に対する愛情と信頼を語って見せるのだった。
*
「にーた、どうしたの? おつむ、いたいですか?」
ベンチに座ったまま、いつまでも動こうとしない周平を心配して、裕太が駆け寄ってきた。
周平の顔を見上げた裕太の瞳には、周平に対する純粋な思いやりが溢れていて、呼びかけを無視したことへの不満や怒りなど微塵も含まれていなかった。
「おねつ、はかりましょうか?」
裕太は周平の膝に片手を付いて、俯いたまま顔を上げない兄の額に手を当てようと一生懸命背伸びをした。
弟にこういう態度を取られるたびに、周平の胸には何ともいえない感情が湧き上ってくる。
渦巻く闇を溶かして、心の奥から湧き上がってくるその感情に、周平はまだ名前を付けられずにいたけれども、その瞬間はいつも、目の前の小さな体を抱きしめたくなった。
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