BL版権物の二次創作ブログです。現在『メイド*はじめました』で活動中です。
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2007/12/27 (Thu)
「諒のバカー! 滝沢のバカー!」
裕太はバルコニーの手すりをぎゅっと握ると、昼間、諒や滝沢へ反論できなかった言葉の代わりに、夜景の中でもひときわ高く輝くサンシャインビルへ向かって、罵声を浴びせた。
「イーだ! アッカンベーだ! 違うもん! 嘘つき! それから、えーっと……えーっと……」
裕太の乏しい語彙は、心の鬱憤を晴らす前に、たやすく尽きてしまった。
「うう……とにかく……バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカーーーー!」
裕太は息が上がるまで声を張り上げた。
紺色の空を黒く切り取っている平べったいのっぽビルは、泰然として小揺るぎもしなかった。
裕太は、はーっと息をつくと、脱力して手すりにもたれかかった。
裕太はバルコニーの手すりをぎゅっと握ると、昼間、諒や滝沢へ反論できなかった言葉の代わりに、夜景の中でもひときわ高く輝くサンシャインビルへ向かって、罵声を浴びせた。
「イーだ! アッカンベーだ! 違うもん! 嘘つき! それから、えーっと……えーっと……」
裕太の乏しい語彙は、心の鬱憤を晴らす前に、たやすく尽きてしまった。
「うう……とにかく……バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカーーーー!」
裕太は息が上がるまで声を張り上げた。
紺色の空を黒く切り取っている平べったいのっぽビルは、泰然として小揺るぎもしなかった。
裕太は、はーっと息をつくと、脱力して手すりにもたれかかった。
ほんの少し前まで、裕太にとって社会や人生と言うのは、至極単純明快なものだった。
家族がいて、友人がいて、嬉しいことや、楽しいことがあって、そして時には、悲しみや、苦しみがあったりもする、そんなごく普通の日常が、裕太の知っている世界の全てだった。
流れる水が清らかであることも、頬を撫でる風が温かいことも、裕太にとっては疑うべくもない真実だった。
しかし、いまの裕太は、もうそれを信じることが出来ない。
「近親相姦」という重い鎖が、裕太の心を縛っていた。
悩みを打ち明ける相手がいないというのが、こんなにも苦しいものだとは、裕太は今まで知らなかった。
親にも、友人にも、他の誰にも言えない、絶対に知られてはならない秘密を抱えていることが、裕太を孤独にしていた。
*
「あ……兄ちゃん帰ってきたかな……」
バルコニーの手すりにもたれて、ぼんやりと下を眺めていた裕太の目に、地下の駐車場へ滑り込んでゆくダークブルーの車体が映った。
地平線の向こうに太陽が沈んでからもう二時間ほどたつが、それでも車の一台いちだいが見分けられるほど、街は明るかった。
裕太はそんな地上の星たちを見下ろしながら、周平が東京に帰ってくる以前の、アルバイト漬けだった日々を思い出していた。
クタクタになるまで働いて、ただ眠るためだけに一人暮らしのアパートへ戻る夜。
重い足を引きずりながらも、あの眩く輝く光一つひとつに人間がいて、みんな自分と同じように、辛かったり、苦しかったりしているんだろうと思うと、不思議と励まされるような気がした。
だから裕太は、夜でも暮れないこの街が好きだった。
ただ、地上十四階建てのマンションから見下ろす光は、築三十年の木造アパートから見上げた光より、ずいぶんと遠いように感じて、裕太は少し寂しくなった。
「兄ちゃん……」
裕太は捨てられた子供のような声で、小さく周平を呼んだ。
冷たい夜の風が、体を叩いて行った。
裕太はバルコニーの手すりに肘を預けて、自分の肩を抱いた。
交差した腕の中に顔を埋めると、街の喧騒も、吹きつける風も、何も感じなくなった。
家族がいて、友人がいて、嬉しいことや、楽しいことがあって、そして時には、悲しみや、苦しみがあったりもする、そんなごく普通の日常が、裕太の知っている世界の全てだった。
流れる水が清らかであることも、頬を撫でる風が温かいことも、裕太にとっては疑うべくもない真実だった。
しかし、いまの裕太は、もうそれを信じることが出来ない。
「近親相姦」という重い鎖が、裕太の心を縛っていた。
悩みを打ち明ける相手がいないというのが、こんなにも苦しいものだとは、裕太は今まで知らなかった。
親にも、友人にも、他の誰にも言えない、絶対に知られてはならない秘密を抱えていることが、裕太を孤独にしていた。
*
「あ……兄ちゃん帰ってきたかな……」
バルコニーの手すりにもたれて、ぼんやりと下を眺めていた裕太の目に、地下の駐車場へ滑り込んでゆくダークブルーの車体が映った。
地平線の向こうに太陽が沈んでからもう二時間ほどたつが、それでも車の一台いちだいが見分けられるほど、街は明るかった。
裕太はそんな地上の星たちを見下ろしながら、周平が東京に帰ってくる以前の、アルバイト漬けだった日々を思い出していた。
クタクタになるまで働いて、ただ眠るためだけに一人暮らしのアパートへ戻る夜。
重い足を引きずりながらも、あの眩く輝く光一つひとつに人間がいて、みんな自分と同じように、辛かったり、苦しかったりしているんだろうと思うと、不思議と励まされるような気がした。
だから裕太は、夜でも暮れないこの街が好きだった。
ただ、地上十四階建てのマンションから見下ろす光は、築三十年の木造アパートから見上げた光より、ずいぶんと遠いように感じて、裕太は少し寂しくなった。
「兄ちゃん……」
裕太は捨てられた子供のような声で、小さく周平を呼んだ。
冷たい夜の風が、体を叩いて行った。
裕太はバルコニーの手すりに肘を預けて、自分の肩を抱いた。
交差した腕の中に顔を埋めると、街の喧騒も、吹きつける風も、何も感じなくなった。
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