BL版権物の二次創作ブログです。現在『メイド*はじめました』で活動中です。
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名前:うさこ
萌属性:血縁、年の差、アホ子受、ワンコ攻
好き:甘々、主人公総受け
嫌い:イタい子
イチオシ:安元洋貴ボイズ
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2007/11/16 (Fri)
「裕太……あれは嘘じゃないだろう?」
苦笑を含んでそう言った兄ちゃんの声が、いつものような穏やかな調子に戻っているのが分かった。
「そうだろう、裕太? あれは、嘘なんかじゃなかったはずだ」
もう一度そう俺に問いかけた声は、甘いといっても良いような囁きだった。
俺の肩を掴んでいた手の力が緩んだと思うと、兄ちゃんは俺の頭を優しく撫でた。
その温もりは、俺にもう一度あの遠い日を思い出させた。
苦笑を含んでそう言った兄ちゃんの声が、いつものような穏やかな調子に戻っているのが分かった。
「そうだろう、裕太? あれは、嘘なんかじゃなかったはずだ」
もう一度そう俺に問いかけた声は、甘いといっても良いような囁きだった。
俺の肩を掴んでいた手の力が緩んだと思うと、兄ちゃんは俺の頭を優しく撫でた。
その温もりは、俺にもう一度あの遠い日を思い出させた。
「兄ちゃん、兄ちゃん。あのね、諒がね、諒が……」
俺は兄ちゃんが大学から帰ってくるやいなや、その足に飛びついた。
「おっと……どうした、裕太」
兄ちゃんは玄関を開けた途端に飛びついてきた俺に少し驚いたようだったけど、いつものように俺を抱き上げると、なだめるようにポンポンと軽く背中を叩いた。
俺はもうそのとき十歳になってたけど、体が弱いせいで同級生たちと比べて、背も小さくて、体重も軽いままだっだから、兄ちゃんはよくそうして俺を抱き上げた。
俺も母さんに抱っこされるのは恥ずかしくなってたけど、兄ちゃんに抱っこされるのは不思議と抵抗がなくて、いつもそうやって兄ちゃんに甘えてた。
「あのね、あのね、諒がね、池にいるのはミカンじゃないって言うんだよ」
「へえ、諒が……どうして、ミカンじゃないって?」
兄ちゃんは俺を抱いたままリビングのソファに腰掛けると、俺にそう問いかけた。
「だって、ミカンは金魚でしょ? でも池にいるのは鯉だから、ミカンじゃないって。金魚は鯉の赤ちゃんじゃないんだって……ホントなの?」
俺は多分このとき兄ちゃんが、諒の言ったことは嘘で、庭の鯉はミカンだといってくれれば、喜んでそれを信じたと思う。
でも兄ちゃんはそうしなかった。
「本当だよ、裕太。あれはミカンじゃない。死んでしまったミカンの代わりに、俺が買ってきた錦鯉だ」
あまりにさらりとそう言われたので、俺は驚くよりむしろ呆れて、ぽかんと兄ちゃんを見返した。
「な、なんで……?」
兄ちゃんは自分の肩に置かれている俺の手を取って、包み込むようにして握った。
「あのときお前は小さすぎて、あの金魚……ミカンが死んだってことを理解するのは、まだ難しかったんだよ」
「兄ちゃん、嘘付いた……の?」
おかしなことだけど、このときの俺にとって、池の鯉がミカンじゃないってことよりも、兄ちゃんが俺に嘘を付いてたってことのほうが重要だった。
「嘘じゃないよ、裕太」
兄ちゃんは俺から目を離さず、ゆっくりと首を横に振った。
「嘘じゃないから、こうしてお前が理解できるようになったら、ちゃんと話をしているだろう」
兄ちゃんはすごく真剣な目をして、俺に語りかけていた。
「兄ちゃんはお前に嘘なんか付かない。お前が十分に大きくなるまで待っていたから、本当のことを言うのに時間がかかっただけだよ。裕太、兄ちゃんの言っていること、分かるよな?」
俺は兄ちゃんの射るような眼差しに押されて、コクンと頷いた。
本当は良く分からなかったけど、とにかく兄ちゃんが俺に嘘を付いたんじゃないって言うんだからそれでよかった。
「よし、いい子だ」
兄ちゃんは満足そうに笑うと、俺の頭を胸元に引き寄せ、ギュッと抱きしめた。
俺は兄ちゃんが大学から帰ってくるやいなや、その足に飛びついた。
「おっと……どうした、裕太」
兄ちゃんは玄関を開けた途端に飛びついてきた俺に少し驚いたようだったけど、いつものように俺を抱き上げると、なだめるようにポンポンと軽く背中を叩いた。
俺はもうそのとき十歳になってたけど、体が弱いせいで同級生たちと比べて、背も小さくて、体重も軽いままだっだから、兄ちゃんはよくそうして俺を抱き上げた。
俺も母さんに抱っこされるのは恥ずかしくなってたけど、兄ちゃんに抱っこされるのは不思議と抵抗がなくて、いつもそうやって兄ちゃんに甘えてた。
「あのね、あのね、諒がね、池にいるのはミカンじゃないって言うんだよ」
「へえ、諒が……どうして、ミカンじゃないって?」
兄ちゃんは俺を抱いたままリビングのソファに腰掛けると、俺にそう問いかけた。
「だって、ミカンは金魚でしょ? でも池にいるのは鯉だから、ミカンじゃないって。金魚は鯉の赤ちゃんじゃないんだって……ホントなの?」
俺は多分このとき兄ちゃんが、諒の言ったことは嘘で、庭の鯉はミカンだといってくれれば、喜んでそれを信じたと思う。
でも兄ちゃんはそうしなかった。
「本当だよ、裕太。あれはミカンじゃない。死んでしまったミカンの代わりに、俺が買ってきた錦鯉だ」
あまりにさらりとそう言われたので、俺は驚くよりむしろ呆れて、ぽかんと兄ちゃんを見返した。
「な、なんで……?」
兄ちゃんは自分の肩に置かれている俺の手を取って、包み込むようにして握った。
「あのときお前は小さすぎて、あの金魚……ミカンが死んだってことを理解するのは、まだ難しかったんだよ」
「兄ちゃん、嘘付いた……の?」
おかしなことだけど、このときの俺にとって、池の鯉がミカンじゃないってことよりも、兄ちゃんが俺に嘘を付いてたってことのほうが重要だった。
「嘘じゃないよ、裕太」
兄ちゃんは俺から目を離さず、ゆっくりと首を横に振った。
「嘘じゃないから、こうしてお前が理解できるようになったら、ちゃんと話をしているだろう」
兄ちゃんはすごく真剣な目をして、俺に語りかけていた。
「兄ちゃんはお前に嘘なんか付かない。お前が十分に大きくなるまで待っていたから、本当のことを言うのに時間がかかっただけだよ。裕太、兄ちゃんの言っていること、分かるよな?」
俺は兄ちゃんの射るような眼差しに押されて、コクンと頷いた。
本当は良く分からなかったけど、とにかく兄ちゃんが俺に嘘を付いたんじゃないって言うんだからそれでよかった。
「よし、いい子だ」
兄ちゃんは満足そうに笑うと、俺の頭を胸元に引き寄せ、ギュッと抱きしめた。
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