BL版権物の二次創作ブログです。現在『メイド*はじめました』で活動中です。
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2007/11/08 (Thu)
裕太にまた苦手なものが一つ増えた。
それに気が付いたのは、新居で必要なものを買い揃えるため、裕太を連れて池袋の天国屋本店に行ったときのこと。
六階のインテリアフロアで、部屋に合わせるカーテンを「この色は、素材は」と熱心に選んでいた裕太が、突然俺のジャケットの袖を掴んで怯えたようにこういった。
「犬だ」
見ると、会計をしているご婦人の足元にチワワが一匹、セーターを着せられてその小さな体をピルピルと震えさせていた。
「どうした、あんな小さな犬が恐いのか?」
俺はそのひょろりと背の高いご婦人と、どこか宇宙人じみたチワワの組み合わせがユーモラスに思えて、笑いをかみ殺しながら隣の裕太を見下ろした。
すると、からかい半分のつもりでそういった俺を、裕太は意外なほど真剣な顔で見返してきた。
おそらく無意識にだろうが、俺の腕を掴んだ裕太の指に、ギュッと力が込められる。
「別に、恐いって訳じゃないけど……」
俺から視線を外し、考え込むように床に目を落とすと、裕太は左手で自分の唇を触りだした。
これは不安になったとき見せる、裕太の昔からの癖だ。
それに気が付いたのは、新居で必要なものを買い揃えるため、裕太を連れて池袋の天国屋本店に行ったときのこと。
六階のインテリアフロアで、部屋に合わせるカーテンを「この色は、素材は」と熱心に選んでいた裕太が、突然俺のジャケットの袖を掴んで怯えたようにこういった。
「犬だ」
見ると、会計をしているご婦人の足元にチワワが一匹、セーターを着せられてその小さな体をピルピルと震えさせていた。
「どうした、あんな小さな犬が恐いのか?」
俺はそのひょろりと背の高いご婦人と、どこか宇宙人じみたチワワの組み合わせがユーモラスに思えて、笑いをかみ殺しながら隣の裕太を見下ろした。
すると、からかい半分のつもりでそういった俺を、裕太は意外なほど真剣な顔で見返してきた。
おそらく無意識にだろうが、俺の腕を掴んだ裕太の指に、ギュッと力が込められる。
「別に、恐いって訳じゃないけど……」
俺から視線を外し、考え込むように床に目を落とすと、裕太は左手で自分の唇を触りだした。
これは不安になったとき見せる、裕太の昔からの癖だ。
普段からおっとりしていて、自分が危険な状態にあるときですら、そうと気が付かないほど鈍感な裕太が、これほど不安がるのは珍しい。
俺は驚いて、裕太の背をさすった。
「裕太、大丈夫だ。ほら、もうあっちに行くから。大丈夫、恐くないぞ」
俺の言葉に安心したのか、裕太は視線を上げてご夫人が去っていくのを確認すると、ほっと息を吐いて俺の袖から手を離した。
「だから、恐いんじゃないってば……ただ……」
もごもごと言い訳を始めた裕太を、自分の子供じみた態度が気恥ずかしくなったのだろう、と思ったがどうやらそんな様子ではない。
裕太自身が自分の思わぬ感情に戸惑っているようだった。
「……なんだろ、何ていうか……嫌な感じっていうか……」
自分の内面を探るように慎重に言葉を選んでいる。
「胸が……締め付けられるっていうか……暗い所に閉じ込められたみたいな……」
そこまで聞いて、俺はハッと気が付いた。
「暗闇」「密室」
それは裕太が封印した過去の扉を示す重要な鍵だ。
「わ、分かった、裕太。もういい」
俺は慌てて裕太の考えを中断させた。
これ以上深く考え込んで、裕太が自分の記憶の扉に手を掛けたら困る。
「それより、裕太ほら、これはどうだ?」
俺は咄嗟に近くにあったそれらしい品を引っ張り出して、裕太の気を逸らした。
「え?」
急に現実に引き戻されて、きょとんとした顔をしている裕太を更にたたみかける。
「オレンジ色でちゃんと遮光素材だぞ」
オレンジは裕太が始めて飼ったペットの金魚の色で、今でも裕太が一番好きな色だ。
「あ――? ああ、うん……そうか無地か。無地もいいね。俺も高校生だし、これぐらい落ち着いた感じのほうが……」
また熱心に品定めを始めた裕太に、俺は胸をなでおろす。
――本当にお前は単純で助かるよ。
俺の内心の囁きなど聞こえるはずもない裕太は、もうすっかり元の顔だ。
*
裕太がなぜ犬に怯えたのか、俺には心当たりがあった。
裕太失踪の手がかりを掴むきっかけとなった、あのビデオ。
カメラの向こう側で泣いていた裕太の顔が脳裏に甦る。
黒光りする筋肉質の獣にのしかかられて怯えきっていた裕太。
最後には狂ったように笑い出した裕太の瞳を濡らしていたあの涙。
思い出すたびに心が張り裂けそうになる。
かわいそうな裕太、俺が目を離したばっかりに、またつらい思いをさせてしまった。
でも大丈夫、お前は全部忘れていいんだ。
お前を悲しませる過去なんて消してしまえばいい。
お前を苦しめる記憶は全部封印してしまおう。
俺が――そうしてやる。
*
裕太にまた苦手なものが一つ増えた。
暗闇、密室、そして犬。
これで裕太を怯えさせるものは三つ目だ。
封印された裕太の扉。
秘密の鍵は全て、俺が握っている。
俺は驚いて、裕太の背をさすった。
「裕太、大丈夫だ。ほら、もうあっちに行くから。大丈夫、恐くないぞ」
俺の言葉に安心したのか、裕太は視線を上げてご夫人が去っていくのを確認すると、ほっと息を吐いて俺の袖から手を離した。
「だから、恐いんじゃないってば……ただ……」
もごもごと言い訳を始めた裕太を、自分の子供じみた態度が気恥ずかしくなったのだろう、と思ったがどうやらそんな様子ではない。
裕太自身が自分の思わぬ感情に戸惑っているようだった。
「……なんだろ、何ていうか……嫌な感じっていうか……」
自分の内面を探るように慎重に言葉を選んでいる。
「胸が……締め付けられるっていうか……暗い所に閉じ込められたみたいな……」
そこまで聞いて、俺はハッと気が付いた。
「暗闇」「密室」
それは裕太が封印した過去の扉を示す重要な鍵だ。
「わ、分かった、裕太。もういい」
俺は慌てて裕太の考えを中断させた。
これ以上深く考え込んで、裕太が自分の記憶の扉に手を掛けたら困る。
「それより、裕太ほら、これはどうだ?」
俺は咄嗟に近くにあったそれらしい品を引っ張り出して、裕太の気を逸らした。
「え?」
急に現実に引き戻されて、きょとんとした顔をしている裕太を更にたたみかける。
「オレンジ色でちゃんと遮光素材だぞ」
オレンジは裕太が始めて飼ったペットの金魚の色で、今でも裕太が一番好きな色だ。
「あ――? ああ、うん……そうか無地か。無地もいいね。俺も高校生だし、これぐらい落ち着いた感じのほうが……」
また熱心に品定めを始めた裕太に、俺は胸をなでおろす。
――本当にお前は単純で助かるよ。
俺の内心の囁きなど聞こえるはずもない裕太は、もうすっかり元の顔だ。
*
裕太がなぜ犬に怯えたのか、俺には心当たりがあった。
裕太失踪の手がかりを掴むきっかけとなった、あのビデオ。
カメラの向こう側で泣いていた裕太の顔が脳裏に甦る。
黒光りする筋肉質の獣にのしかかられて怯えきっていた裕太。
最後には狂ったように笑い出した裕太の瞳を濡らしていたあの涙。
思い出すたびに心が張り裂けそうになる。
かわいそうな裕太、俺が目を離したばっかりに、またつらい思いをさせてしまった。
でも大丈夫、お前は全部忘れていいんだ。
お前を悲しませる過去なんて消してしまえばいい。
お前を苦しめる記憶は全部封印してしまおう。
俺が――そうしてやる。
*
裕太にまた苦手なものが一つ増えた。
暗闇、密室、そして犬。
これで裕太を怯えさせるものは三つ目だ。
封印された裕太の扉。
秘密の鍵は全て、俺が握っている。
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