BL版権物の二次創作ブログです。現在『メイド*はじめました』で活動中です。
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2008/05/04 (Sun)
女が多すぎるから――と、推薦が決まっていた条南を蹴って入った楽才学園で、俺は面白い観察対象を発見した。
それは、名を藍川裕太という、人間の、男だったが、どうやら癖らしい上目使いと、いつでも軽く開いている物欲しげな唇は、俺の、あの遠い昔に失ってしまった、懐かしい「友達」を思い出させた。
それは、名を藍川裕太という、人間の、男だったが、どうやら癖らしい上目使いと、いつでも軽く開いている物欲しげな唇は、俺の、あの遠い昔に失ってしまった、懐かしい「友達」を思い出させた。
藍川は、実に興味深い存在だった。
まず第一点において、彼は嘘をつかない。
いや、正確には、つけない。
それほど知能が高くないのだろう、人を欺くために必要な、周到さや綿密さが、決定的に不足しているのだ。
それから第二点目において、人を疑わない。
彼は――自身がそうであるように――、他人もまた善良であることを信じて、まったく疑っていない。
誰も自分を傷つけたりはしないと、取り巻く世界の優しさを、盲目的に信じ込んでいて、その心を他者に向かって開け放つことに、全く躊躇が無いのだ。
*
はたで見ている俺の方が、時にぎくりとするほど無防備に全身を預ける様は、この手のひらに、あの日奪い去られた小さな鼓動を甦らせた。
人を調査し、分析し、分類するのは、俺の生活環境を快適に保つために必要な、もはや習慣と言っていい「作業」だったが、いつ頃だっただろうか、自分の、藍川を観察する視線が、単なる「作業」を超えてしまっていることに、気が付いたのは。
*
見栄も無い、媚も無い。
まるで、あの愛おしい生き物達のように、いつも自然体で、ありのままを生きている…………。
そんな彼の存在は、男の虚栄や、女の虚飾といった、誤魔化しばかりの日常に倦んだ俺の目には、とりわけ純粋で、清らかに映った。
*
それ故に、珍しく自慢げに「兄ちゃんはオレと違ってかっこいいよ」と、藍川が胸を張ったとき、俺はおやと顔を上げた。
「ふーん」と気のない返事をしながら表情を観察すれば、その言葉通り、「兄」に対する尊敬と親しみに、少しの嘘も無いことは、たやすく察せられた。
「藍川はブラコンなんだな」
からかいのつもりではなく、思わず漏れたその一言に、彼は敏感に反応した。
「そんなことない」と、うろたえながら否定したその頬は、薄桃色に染まっていた。
*
彼にこんな顔をさせる「兄」とは、一体どんな人物なのか。
是非一度会ってみたい……いや、会う必要があると、俺は胸中密かにその名を刻んだが、思いもよらず早々に、その機会は巡ってきた。
それも、向こうから飛び込んでくるという、予想外の形によって。
*
一目でオーダー品と分る、仕立ての良いスーツ。
靴はスクエアトゥのウイングチップで、腕時計は今どき珍しい手巻きのクロノグラフ。
服飾品に対する知識が乏しい俺には、銘柄までは分らないが、どれもおそらく海外ブランドの物だろう。
自分の身を飾ることに金も手間も惜しまないと、公言しながら歩いているようなその人物は、自信とプライドの表れに他ならない余裕のある態度で、自ら、藍川裕太の兄であると、俺に名乗った。
*
まるで所有権を主張するように――いや、おそらく主張そのものだったのだろう――、「弟をよろしく」と、クラスの一人ひとりに挨拶して回る背中を観察しながら、俺は「なるほど」と膝を打つ思いだった。
藍川の持つ性質から鑑みて、強力な保護の元で育成されたに違いないと、予測は付けていたが、その根本原因を、俺はついにこの「兄」に見い出したのだ。
*
「管理」と「支配」。
それこそが、この謎の生き物、「藍川裕太」の秘密を紐解くキーワードだ。
俺はようやく、得心した。
まず第一点において、彼は嘘をつかない。
いや、正確には、つけない。
それほど知能が高くないのだろう、人を欺くために必要な、周到さや綿密さが、決定的に不足しているのだ。
それから第二点目において、人を疑わない。
彼は――自身がそうであるように――、他人もまた善良であることを信じて、まったく疑っていない。
誰も自分を傷つけたりはしないと、取り巻く世界の優しさを、盲目的に信じ込んでいて、その心を他者に向かって開け放つことに、全く躊躇が無いのだ。
*
はたで見ている俺の方が、時にぎくりとするほど無防備に全身を預ける様は、この手のひらに、あの日奪い去られた小さな鼓動を甦らせた。
人を調査し、分析し、分類するのは、俺の生活環境を快適に保つために必要な、もはや習慣と言っていい「作業」だったが、いつ頃だっただろうか、自分の、藍川を観察する視線が、単なる「作業」を超えてしまっていることに、気が付いたのは。
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見栄も無い、媚も無い。
まるで、あの愛おしい生き物達のように、いつも自然体で、ありのままを生きている…………。
そんな彼の存在は、男の虚栄や、女の虚飾といった、誤魔化しばかりの日常に倦んだ俺の目には、とりわけ純粋で、清らかに映った。
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それ故に、珍しく自慢げに「兄ちゃんはオレと違ってかっこいいよ」と、藍川が胸を張ったとき、俺はおやと顔を上げた。
「ふーん」と気のない返事をしながら表情を観察すれば、その言葉通り、「兄」に対する尊敬と親しみに、少しの嘘も無いことは、たやすく察せられた。
「藍川はブラコンなんだな」
からかいのつもりではなく、思わず漏れたその一言に、彼は敏感に反応した。
「そんなことない」と、うろたえながら否定したその頬は、薄桃色に染まっていた。
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彼にこんな顔をさせる「兄」とは、一体どんな人物なのか。
是非一度会ってみたい……いや、会う必要があると、俺は胸中密かにその名を刻んだが、思いもよらず早々に、その機会は巡ってきた。
それも、向こうから飛び込んでくるという、予想外の形によって。
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一目でオーダー品と分る、仕立ての良いスーツ。
靴はスクエアトゥのウイングチップで、腕時計は今どき珍しい手巻きのクロノグラフ。
服飾品に対する知識が乏しい俺には、銘柄までは分らないが、どれもおそらく海外ブランドの物だろう。
自分の身を飾ることに金も手間も惜しまないと、公言しながら歩いているようなその人物は、自信とプライドの表れに他ならない余裕のある態度で、自ら、藍川裕太の兄であると、俺に名乗った。
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まるで所有権を主張するように――いや、おそらく主張そのものだったのだろう――、「弟をよろしく」と、クラスの一人ひとりに挨拶して回る背中を観察しながら、俺は「なるほど」と膝を打つ思いだった。
藍川の持つ性質から鑑みて、強力な保護の元で育成されたに違いないと、予測は付けていたが、その根本原因を、俺はついにこの「兄」に見い出したのだ。
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「管理」と「支配」。
それこそが、この謎の生き物、「藍川裕太」の秘密を紐解くキーワードだ。
俺はようやく、得心した。
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