BL版権物の二次創作ブログです。現在『メイド*はじめました』で活動中です。
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名前:うさこ
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好き:甘々、主人公総受け
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2007/11/06 (Tue)
「ふぇー、じゃあこの部屋兄ちゃんが借りたんだ?」
俺は2LDKだというマンションの、まだ真新しいキッチンカウンターに座って兄ちゃんの話を聞きいていた。
「さあ、できたぞ」と俺の目の前に焼きあがったばかりの、兄ちゃん特製甘い甘いシナモントーストが出される。
俺はそれを一口かじって「うーん、おいしい!」と、おもわず感動の声をもらした。
兄ちゃんは料理の手を休めることなく、そんな俺の様子を嬉しそうに見てる。
「そうだよ。だから言ったろう、裕太を養ってやるぐらいの力はあるって」
兄ちゃんはそう言うと、くるりと器用にフライパンをひっくり返し、ふわふわに焼きあがったチーズ入りオムレツを皿に移した。
「まだ熱いから気を付けて」なんて兄ちゃんの注意は耳に入らず、俺は大急ぎでそれをフォークですくうと、ぱくりと口に入れた。
この卵の甘さとモツァレアチーズのこくが合わさって……いや、やっぱりどんな能書きより「おいしい!」の一言しかない。
「なんか、兄ちゃんの作ったご飯、久しぶりに食べたような気がする。変だよね、兄ちゃんがこっちに帰ってきてからは毎日食べてたはずなのに」
俺は兄ちゃんのご飯がおいしくって嬉しいって気持ちでそういったのに、兄ちゃんはそれを聞くと、困ったような怒ったような、なんだか変な顔をした。
俺は2LDKだというマンションの、まだ真新しいキッチンカウンターに座って兄ちゃんの話を聞きいていた。
「さあ、できたぞ」と俺の目の前に焼きあがったばかりの、兄ちゃん特製甘い甘いシナモントーストが出される。
俺はそれを一口かじって「うーん、おいしい!」と、おもわず感動の声をもらした。
兄ちゃんは料理の手を休めることなく、そんな俺の様子を嬉しそうに見てる。
「そうだよ。だから言ったろう、裕太を養ってやるぐらいの力はあるって」
兄ちゃんはそう言うと、くるりと器用にフライパンをひっくり返し、ふわふわに焼きあがったチーズ入りオムレツを皿に移した。
「まだ熱いから気を付けて」なんて兄ちゃんの注意は耳に入らず、俺は大急ぎでそれをフォークですくうと、ぱくりと口に入れた。
この卵の甘さとモツァレアチーズのこくが合わさって……いや、やっぱりどんな能書きより「おいしい!」の一言しかない。
「なんか、兄ちゃんの作ったご飯、久しぶりに食べたような気がする。変だよね、兄ちゃんがこっちに帰ってきてからは毎日食べてたはずなのに」
俺は兄ちゃんのご飯がおいしくって嬉しいって気持ちでそういったのに、兄ちゃんはそれを聞くと、困ったような怒ったような、なんだか変な顔をした。
「?」
なんだろう、と思って兄ちゃんの顔を見返したけど、キュっと蛇口を閉めて顔をあげた兄ちゃんは、もういつもどうりの笑顔だった。
きっと俺の気のせいだな、と思い直しておれはまた明るい声を出した。
「けどさあ、俺全然知らなかったよ、兄ちゃんが会社の近くにこんな部屋借りてるって。いつの間に? なんで俺に内緒にしてたの?」
「別に内緒にしてた訳じゃないさ……ただ……いや、お前の知らない間に色々とあったんだよ。でも心配することじゃない、もう全部終わったから」
兄ちゃんは何か言いかけたけど、途中で止めてそう言い切った。
「そ、そうなの? ふーん、そうなんだ?」
俺は何だか良く分からなかったけど、兄ちゃんがそう言うんだったら、きっとそうなんだろうと、自分を納得させた。
だって、兄ちゃんがこういう言い方をするときは、俺がどんなに食い下がったって、もう絶対に何も教えてくれないんだ。
だけど別に、兄ちゃんは俺を騙してやろうとか、からかってやろうと思ってそうしてるんじゃない。
俺が知ったら悲しむだろうとか、傷つくだろうとか先回りして考えて、予防線を張ってるんだ。
*
お祭りの縁日で取ってきた、あの小さな金魚が死んだ時だってそうだった。
あれは、たしか俺が小学校に上がったばかりの頃。
俺は自分が取ってきたそのオレンジ色の金魚に「ミカン」って名前をつけて、毎日一生懸命世話をしてた。
俺は金魚は錦鯉の赤ちゃんだって信じてたから「ミカンが大きくなったら、お庭の池に放して一緒に遊ぶんだ」って、すごく楽しみにしてた。
だけどある朝俺が起きたら、水槽からミカンはいなくなっていたんだ。
空っぽになった水槽を前に、俺はショックで泣きそうだった。
兄ちゃんはそんな俺を抱き上げて庭に出ると、半べそをかいている俺の背中を優しく撫でてこう言ったんだ。
「裕太。ほら、お池の中を見てごらん」
兄ちゃんの指差すほうを見ると、オレンジ色をした大きな錦鯉が一匹、そこを悠々と泳いでいた。
*
そういえば、諒にこの話しをして「金魚は錦鯉にならない」と教えられるまで、俺はずいぶんと長い間、池にいる錦鯉を「ミカン」だと信じていたっけ。
まったく、本当に兄ちゃんは過保護なんだから。
俺はちょっとだけ、そんな思い出に浸っていたけど、すぐに頭を切り替えた。
「じゃあさあ、今日から俺もここに住んでいいの?」
俺はワクワクしながら、10畳ほどのリビングダイニングをきょろきょろ見渡した。
後ろを振り返るとバルコニーの向こう側に、朝の光に照らされた街が遠くまで良く見えてる。
ここ何階ぐらいなんだろうか。
「もちろんだよ。お前の部屋もちゃんと用意してあるぞ」
「えっホントに? やったー!」
椅子から飛び上がって喜んだ俺を、兄ちゃんは慌てて制した。
「あ、こらこら裕太、だめだろ。ちゃんと座って最後まで食べなさい」
俺はぺろっと舌を出すと「はあい」と返事をして丸いカウンターチェアに座りなおした。
「兄ちゃん、ミルクティーもう一杯欲しい」
「いいよ、何杯でも」
兄ちゃんはケトルに水を入れて、コンロに乗せると「裕太は変わらないな」と、あの遠い日を思い出させるような優しい目で言った。
なんだろう、と思って兄ちゃんの顔を見返したけど、キュっと蛇口を閉めて顔をあげた兄ちゃんは、もういつもどうりの笑顔だった。
きっと俺の気のせいだな、と思い直しておれはまた明るい声を出した。
「けどさあ、俺全然知らなかったよ、兄ちゃんが会社の近くにこんな部屋借りてるって。いつの間に? なんで俺に内緒にしてたの?」
「別に内緒にしてた訳じゃないさ……ただ……いや、お前の知らない間に色々とあったんだよ。でも心配することじゃない、もう全部終わったから」
兄ちゃんは何か言いかけたけど、途中で止めてそう言い切った。
「そ、そうなの? ふーん、そうなんだ?」
俺は何だか良く分からなかったけど、兄ちゃんがそう言うんだったら、きっとそうなんだろうと、自分を納得させた。
だって、兄ちゃんがこういう言い方をするときは、俺がどんなに食い下がったって、もう絶対に何も教えてくれないんだ。
だけど別に、兄ちゃんは俺を騙してやろうとか、からかってやろうと思ってそうしてるんじゃない。
俺が知ったら悲しむだろうとか、傷つくだろうとか先回りして考えて、予防線を張ってるんだ。
*
お祭りの縁日で取ってきた、あの小さな金魚が死んだ時だってそうだった。
あれは、たしか俺が小学校に上がったばかりの頃。
俺は自分が取ってきたそのオレンジ色の金魚に「ミカン」って名前をつけて、毎日一生懸命世話をしてた。
俺は金魚は錦鯉の赤ちゃんだって信じてたから「ミカンが大きくなったら、お庭の池に放して一緒に遊ぶんだ」って、すごく楽しみにしてた。
だけどある朝俺が起きたら、水槽からミカンはいなくなっていたんだ。
空っぽになった水槽を前に、俺はショックで泣きそうだった。
兄ちゃんはそんな俺を抱き上げて庭に出ると、半べそをかいている俺の背中を優しく撫でてこう言ったんだ。
「裕太。ほら、お池の中を見てごらん」
兄ちゃんの指差すほうを見ると、オレンジ色をした大きな錦鯉が一匹、そこを悠々と泳いでいた。
*
そういえば、諒にこの話しをして「金魚は錦鯉にならない」と教えられるまで、俺はずいぶんと長い間、池にいる錦鯉を「ミカン」だと信じていたっけ。
まったく、本当に兄ちゃんは過保護なんだから。
俺はちょっとだけ、そんな思い出に浸っていたけど、すぐに頭を切り替えた。
「じゃあさあ、今日から俺もここに住んでいいの?」
俺はワクワクしながら、10畳ほどのリビングダイニングをきょろきょろ見渡した。
後ろを振り返るとバルコニーの向こう側に、朝の光に照らされた街が遠くまで良く見えてる。
ここ何階ぐらいなんだろうか。
「もちろんだよ。お前の部屋もちゃんと用意してあるぞ」
「えっホントに? やったー!」
椅子から飛び上がって喜んだ俺を、兄ちゃんは慌てて制した。
「あ、こらこら裕太、だめだろ。ちゃんと座って最後まで食べなさい」
俺はぺろっと舌を出すと「はあい」と返事をして丸いカウンターチェアに座りなおした。
「兄ちゃん、ミルクティーもう一杯欲しい」
「いいよ、何杯でも」
兄ちゃんはケトルに水を入れて、コンロに乗せると「裕太は変わらないな」と、あの遠い日を思い出させるような優しい目で言った。
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